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不眠症と快適な睡眠を取る方法

みなさんは最近、しっかり熟睡できていますか?
睡眠は、人が生きていくために欠かせないものの一つです。
今回はそんな睡眠の中でも、現代人の多くが悩まされているという「不眠症」について解説していきます。


不眠症とは?

不眠症というと、まったく眠れない症状というイメージがあるかもしれません。以下のような症状に加えて、日中の活動に支障をきたす状態が3カ月以上続いている病気を不眠症と呼びます。
 
・寝付くまでに時間がかかる
・夜中に何度も目が覚める
・起床時間より早く目が覚める
・眠りが浅くて寝た気がしない

 
また、不眠症が続くと、意欲低下や集中力低下、抑うつ症状、めまいなどさまざまな症状が現れるようになり、生活習慣病、糖尿病、高血圧などのリスクが高まることも分かっています。
 
それぞれの症状について詳しく見ていきましょう。

【不眠症の代表的な4つの症状】

◇入眠障害

なかなか眠りにつけない、寝つくまでに時間がかかる状態のことです。
厳密な定義は寝付くまでに2時間以上となっています。実際には床についてもなかなか眠れず苦痛を感じ、寝付くまでに30分~1時間以上かかってしまうような状態です。
 
入眠障害は、悩みや考え事が絶えない、精神的な問題を抱えているときに起こりやすいといわれています。
多くの場合、一日よく眠れなくて寝不足になれば、次の日はぐっすり眠ってしまうことがほとんどでしょう。
しかし、不眠症を発症していると眠れない日がたびたび訪れ、心身ともに疲弊していきます。
また他タイプの睡眠障害と一緒に発症しやすい症状でもあります。

◇中途覚醒

眠っている最中に何度も目が覚めてしまう、あるいは目覚めた後なかなか寝つけない状態のことをいいます。
夜中に何度も目が覚めてしまうということは、眠りが浅い状態を指します。
そのため、十分な睡眠時間が取れず、寝ても疲れが取れない睡眠になりやすくなるのです。
また、中途覚醒が慢性化してしまうと、体調不良につながっていく可能性も高まります。
 
入眠障害が深刻だと、いわゆる寝酒をする方も少なからずいますが、アルコールが睡眠を浅くさせて中途覚醒を起こしやすくしてしまうこともあります。
中途覚醒は、うつ病や睡眠時無呼吸症候群、脳卒中などが起因しているケースもありますので、症状が長引いているようなら一度検査をしてみることも大切です。

◇早朝覚醒

起きようと思っていた時間より早く目が覚め、そのまま眠れずに活動時間を迎える症状を指します。
 
早朝覚醒しても毎日元気に動き回れるなら問題ありませんが、日中に眠気が強かったり、倦怠感が強かったりと日常生活に支障が出る場合は対処が必要です。
加齢により多くなる症状ではありますが、働く世代や学生などに見られる場合はストレスや疲労などが原因になっている可能性が高いでしょう。
 
また、早朝覚醒はうつ病の典型的な症状の一つでもあります。
睡眠障害とともに、体調不良などを感じた場合は、速やかに医療機関を受診してください。

◇熟眠障害

どれだけ寝ても、目覚めたときに睡眠不足を感じる睡眠障害です。
一時的な睡眠不足ではなく、睡眠不足だと感じる頻度が増え、生活に支障をきたしている状態を熟眠障害と呼びます。
 
熟眠障害には、実際に「睡眠の質が悪いタイプ」と、「睡眠の質は良いのに熟睡できたという満足感が得られないタイプ」があります。
強いストレスによって、睡眠の質が下がるケースが多いですが、睡眠の質に対する強すぎるこだわりが逆に熟眠障害につながるケースもあります。

不眠症の原因

不眠症は、環境や病気、突発的な出来事などさまざまな原因が重なることで起こりやすくなります。
仕事や人間関係で積み重なる強いストレス、夜勤や飲み会、夜更かしなどによる生活リズムの乱れ、引越しや転勤などによる生活環境の変化、体や心の病気などが重なりあって引き起こされるのです。
 
そのため、不眠症を改善させる対処法も一つではありません。
例えば、うつ病などの疾患によって不眠症が発症しているとしたら、専門的な検査や治療が必要です。
睡眠薬を服用すれば治るという単純なものではなく、飲むことでうつ症状を悪化させてしまうこともあります。
安易に市販の睡眠導入剤を飲まず、薬の服用には必ず医師の診察を受けるようにしましょう。

不眠症の患者数

「国民健康・栄養調査(平成29年度)」からも、現代人の多くが睡眠障害を感じていることがよくわかります。

以下のグラフは、1ヶ月を通して「睡眠で休養が十分にとれていない者」を調べた結果です。

厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成29年度)」

約2割の人が、慢性的な睡眠不足や寝ても疲れが取れないと感じているということです。
 
また、以下のグラフは40代男女の睡眠時間の平均を表しています。
これによると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は、男性では48.5%、女性では52.4%となっています。

厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成29年度)」

 同調査では、年齢が高くなるにつれて睡眠薬の処方の割合が増えていることも分かりました。
40代は5%前後、50代は6%前後、60代後半は10%前後の人に睡眠薬が処方されています。
 
また、慢性的な不眠症の場合、うつ病の発症リスクが2倍程度になるというデータもあります。
世界でも「不眠大国」であると知られている日本は、こうしたデータを重く受け止める必要があるのではないでしょうか。

不眠への対処法

症状を改善させるためには、睡眠の質を下げる原因を取り除き、適切な治療を行うことが大事です。
まず行うべきは、生活リズムを整えることです。

◇睡眠時間の長さにこだわらない

適切な睡眠時間は、人によって違います。
一般論や睡眠論に出てくる睡眠時間は、個人の体質や性質に合わせたものではありません。
最も気持ちよく眠れて、起きているときに体調がいい、自分だけのゴールデンタイムを見つけてください。

◇就寝時間・起床時間を一定にする

生活リズムを整えるために最も大切なのが、規則正しく睡眠をとることです。睡眠のタイミングは、就寝よりも起床時間を調整します。
体内時計は、朝日を浴びた時間から約16時間後に睡眠時間をセットします。このリズムを一定に保つことが、質の良い睡眠の第一歩です。

◇太陽の光を浴びる

朝日を浴びると睡眠時間がセットされることは先述しましたが、日中に太陽の光を浴びておくと、眠りを誘う脳内物質「メラトニン」が分泌されやすくなります。
入眠改善も期待できますので、できるだけ日光にあたる生活を心がけましょう。

◇適度な運動

身体がほどよく疲れていると寝つきがよくなったり、深い眠りにつきやすくなったりといいことずくめです。
15分のウォーキングなど軽い運動でいいので、デスクワークなど身体を動かす機会の少ない人は、意識的に運動をする習慣をつけましょう。

◇刺激物を避ける

お酒やたばこをほどほどにすることが大切です。
寝酒は寝つきを良くすることから適量なら良いと誤解されがちですが、実際には睡眠の質を下げ、不眠の重症化やアルコール依存症をもたらしかねない悪習です。寝酒の習慣は絶対にやめましょう。
たばこに含まれるニコチンは、覚醒物質として有名です。
寝る前にたばこを吸ってしまうと眠りが浅くなったり、途中覚醒をさせてしまったりする原因となるでしょう。
摂取するタイミングと量には、十分気を付けてください。

不眠症の治療方法

生活リズムを整えても症状の改善が感じられない場合は、精神科や心療内科などを受診することも改善への一手です。
医師に不眠症と診断された場合は、「薬物治療」や「行動の修正」に取り組んでいきます。

◇薬物治療

症状に合わせ、3週間ほどを限度として睡眠薬が処方されます。
睡眠薬とは、「睡眠補助薬」「睡眠導入剤」などと呼ばれる薬のことです。
副反応が強い場合もあるため、必ず医師の指示に従って服用する必要があります。
また、薬をやめるときも、症状が治まったからと突然やめてはいけません。
やめどきを誤ると、元の状態よりさらに症状が悪化してしまうこともあります。医師の指示を仰ぎましょう。

◇行動の修正

これは生活習慣の改善と同じですが、医師がヒアリングした内容を元に、より改善点を集中的に直していくことができます。
自分では整えきれていなかった生活リズムが見えたり、人に指導されることで取り組む姿勢が変わったりと、自分でも手ごたえを感じられる改善になっていくでしょう。

不眠とうつ病の関係

うつ病と睡眠には深い関係があります。
うつ病予防や初期症状の改善には、必ず「よく寝ること」を指導されますし、うつ症状の代表的な症状の一つが不眠でもあります。
 
うつ病になる前触れとして、「よく眠れない」「寝つきが悪い」「夜中によく目が覚める」といった睡眠障害があることは少なくありません。
ストレス過多や悩み事の連続で不眠状態が続いていると、数ヶ月後には抑うつや集中力の欠如などのうつ症状が出てくる場合があります。
 
うつ病はメンタルを著しくすり減らす「脳の病気」であるため、専門の治療が必要不可欠です。
一定期間不眠症で悩まされていたり、薬による治療でも効果を感じられなかったりしたら、うつ病の可能性も考えましょう。
 
うつ病は早期治療によって治していけます。
しかし、治療開始が遅くなるほど治療にかかる時間はその数倍に増えていきますので、ご自身の未来を守るためにも、疑わしければできるだけ早く医療機関へ足を運んでください。

最後に

「考えごとをしていて熟睡できなかった」という経験は誰にでもあるでしょう。
しかし、毎日のようになかなか寝付けなかったり、しっかり寝たはずなのにいつも疲れが取れていなかったりする場合は、不眠症かもしれません。
 
不眠症はただ眠りの質が悪いというだけでなく、うつ病など別の病気を発症する原因にもなります。
睡眠は万病を予防するために必要不可欠であり、さまざまな病気を改善に向かわせるための重要なファクターです。
 
疲れが取れないと感じる毎日であれば、ただ寝つきが悪いだけ、ただ最近忙しいだけと思わず、「なぜ寝つきが悪いのか」「しっかり眠れていないのではないか」と睡眠にも注意を払ってみましょう。
 
質のよい睡眠はうつ病を予防するだけでなく、快活な毎日と豊かな人生を運んでくれます。
今日も良い眠りが皆さんに訪れますように。


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