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適応障害とうつ病の違い

「人と話している時間が不安で仕方がない」
「毎日気分がすぐれない」
「会社や学校に行けない」

こうした心理状態を自覚すると、まず疑うのが「うつ病」です。
しかし、それが特定の状況下において起こる場合、そのつらさは「適応障害」によるものかもしれません。

適応障害はうつ病の前段階にもなりえますが、うつ病とは異なる病気です。
適応障害では薬物療法を必要としない場合が多いなど、治療法もうつ病とはやや異なります。
心と体をいたわった対処をするためにも、適応障害とうつ病の違いをしっかり理解していきましょう。


■適応障害とは

適応障害とは、特定の状況や出来事に強いストレスを感じ、心身に様々な症状を引き起こす病気です。
例えば、会社で特定の人物と話すことが耐え難いほど苦痛で、言葉を発することにも敏感になり、仕事はできるはずなのにその人の前だと何も考えられなくなってしまうなどがそれに当たります。

その他、精神面では涙もろくなったり、過剰な心配性になったりといった特徴も出やすいでしょう。行動面では、無断欠席や欠勤、無謀な運転や喧嘩、物を壊すなどの衝動性が抑えられなくなる傾向も見られます。

適応障害の主な原因は、「積み重なった強いストレス」です。
大人だけでなく、学生や子どもも発症する可能性があり、ストレス要因は多岐にわたります。
以下のようなものが代表的な原因だと考えられています。

・本人の性格によるストレス

完璧主義、自己表現が苦手、断れない、極端なものの見方、傷つきやすいなど

・学校でのストレス

人間関係、いじめ、勉強嫌い、成績、学校のルール、転校など 、日常生活のストレス、 病気、経済的なこと、失恋、喧嘩、近所トラブル、育児、離婚など

・仕事でのストレス

人間関係、いじめ、パワハラ、セクハラ、仕事でのミス、多忙、仕事量、転勤・異動、昇級・降格、解雇など

ストレスとは曖昧なもので、人によって感じ方が違います。
多くの人にとってつらい出来事であっても、ストレスを感じない人はいます。逆に多くの人が何も感じないようなことに、耐え難いほどのストレスを感じる人もいるでしょう。

適応障害は、ストレスを感じる環境や対象から離れることで改善します。しかし、なかなかそのストレス要因から離れられないと症状が悪化し、うつ病へと進行してしまう可能性もあるのです。
あるデータでは、適応障害発症から5年後には、40%以上の人がうつ病などの重篤な精神疾患を発症しているという報告がされています。

精神的な苦しみは甘えと捉えられがちですが、決してそれほど軽い問題ではありません。
体の不調と同じように、心の不調にも敏感になり、早い段階で対処していきましょう。

■適応障害とうつ病の違い

適応障害とうつ病は、症状がとてもよく似ています。
どちらも強いストレスの継続によって発症し、心が不安定で、普段の自分では考えられないような行動に出てしまうことがあります。

見分けるポイントは、「発症原因」「ストレス要因から離れたときの症状」の2つです。

1.発症原因

適応障害は、強いストレスを感じる特定の状況・出来事がなければ発症しません。一方、うつ病は目に見えてわかる原因がなくても、誰もが突然発症する可能性がある「脳の病気」です。

2.ストレス要因から離れたときの症状

人間関係などストレス要因になっている状況・出来事の前では震えがくるほど強いストレスを感じるものの、そこから離れた場所(趣味に没頭しているときや友人といるときなど)では生き生きとしていられる場合は、適応障害の可能性が高いです。
うつ病はストレス要因から離れたからといって、すぐに気持ちは切り替わりません。
また、うつ病はそもそもストレス発散をする気力もないですが、適応障害ではストレス発散がまったくできないわけではないということも違いだと言えるでしょう。

適応障害とうつ病には違いがあり、それぞれに適した治療があります。
自己判断せず、精神科や心療内科できちんと診断してもらいましょう。

■適応障害の可能性チェック

精神科や心療内科に行くべきか悩んだときは、以下のような症状が自分にないかチェックしてみましょう。

・めまいや立ちくらみ、吐き気を感じることがある
・動悸がして息苦しくなることや胸が苦しいことがある
・肩がこりやすく、頭痛を起こすこともある
・体調を崩しやすく、なかなか治らない
・手足がいつも冷たい
・寝つきが悪く、眠りが浅い
・ぐっすり眠っても疲れがとれない
・何かと疲れやすい
・些細なことにイライラしたり腹が立ったりする

これらの症状がいくつか当てはまり、続いている場合は、適応障害である可能性があります。
適応障害はストレス要因から離れることで改善が望めますが、自分一人では対処が難しい場合がほとんどです。できるだけ早く専門家に相談しましょう。

■まとめ

適応障害もうつ病も、できるだけ早く適切な治療を受けることで改善できる病気です。
しかし、どちらも生真面目で努力家、融通が利かない性格の人が発症する傾向にあります。
自分が今感じている不調が気のせいだと思いこんでしまわないことが、病気を治すために肝心だということをどうか忘れないでください。

適応障害は、子どもから大人まで発症する可能性がある病気です。
ストレスを感じる場面はその人の性格や感じ方によって違いますから、「みんなが大丈夫なのだから、自分(自分の子どもや家族)も大丈夫」とは思わないようにしましょう。

心の不調を感じたら、熱が出たときと同じように決して無理はせず、まずは休むこと。そして、早めに精神科や心療内科に相談し、これからの暮らしを大切にしていきましょう。


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