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短編小説

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#創作大賞2022

うしなう 1

うしなう 1

 ほんとうのお父さんにあいたい? 夕食を食べている最中にママがわたしの顔を見つめながらとうとつに訊いてきた。わたしは鶏の照り焼きでママは魚のフライだ。なぜかいつも食べるものが違う。
 正直、でた。またかその話。とおもいつつ、口を開くかわりに首を横にふった。
 別にあいたくないよ。そんな感じで。ほんとうにあいたくなどはないのだ。今さらだし、わたしはもうハタチ。どうでもいいといえばどうでもいいのだ。け

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気のせい

 なんとなくだけどいつもと違う雰囲気だったから話しかけるのをやめていた。けれどわたしから話しかけないと絶対に口を開かないとわかっていたから、どう最近はいそがしいのというありきたりなことをありきたりなふうをよそおって訊ねた。
「──あ、うん──、」
 それだけいうとまた閉口し顔をテレビに向ける。テレビはなにかお笑い番組でもやっているのか大袈裟すぎる大笑いがいたく耳に入ってくる。こっちは笑えない状況だ

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