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短編小説

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#猛暑

ははがしんだ

ははがしんだ

『美保からさっき唐突に電話があって、それで、……、』
 別れた旦那からの唐突な電話だった。
 わたしはそのとき、JRに乗っていて窓の外の流れる景色をなんとなくぼんやりと眺めていた。 

 スマホがブーブーと震え【もと旦那】と表記された画面をみたとき、いやな予感がした。【もと旦那】からかれこれ電話がきたのが何年か前だったし、いたずらかというくらいメールをしてくる時期もあったりして、しょっぱなから電話

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眠れない夜に

眠れない夜に

 もう何十年も睡眠薬を飲んで眠っている。だからなのか『眠れない夜』ということはないけれど、無理やり眠っている感は半端なくだから人工的な眠りであってほんとうの眠りではないのだということはいったいわたしのほんきの眠りはいつ来るのだろうかとおもうことはもう諦めている。
 だってもともとが不眠症なのだから。
「絶対にさ、」
 直人と一緒に焼き肉を食べているときにそういった眠りの話題になり、いちぼをジュージ

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