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短編小説

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2021年11月の記事一覧

気のせい

 なんとなくだけどいつもと違う雰囲気だったから話しかけるのをやめていた。けれどわたしから話しかけないと絶対に口を開かないとわかっていたから、どう最近はいそがしいのというありきたりなことをありきたりなふうをよそおって訊ねた。
「──あ、うん──、」
 それだけいうとまた閉口し顔をテレビに向ける。テレビはなにかお笑い番組でもやっているのか大袈裟すぎる大笑いがいたく耳に入ってくる。こっちは笑えない状況だ

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本音

本音

 じゃあいおうか? ほんとうに聞きたいの? そんなに聞きたいのならいってあげるよ。どうして彼と別れないかってそれゃあ、セックスがいいに決まってるからじゃん。あなたは彼より全然よくないしイかないしただわたしで遊んでいるだけでそれを勝手に俺が支配したみたいな口ぶりでいってうんそうだねってわたしもそうじゃないけれどそうだよってあなただけだよって優しく女神のような声でいっているけれどいやいや勃ちもしないし

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