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HIV真の第一発見者はフランスの女性研究者フランソワーズ・バレー ウィキペディアはスカスカの2008年ノーベル生理学医学賞受賞者 HIV発見者問題㊤

でHIV真の発見者について少し触れましたが、詳細に発見のいきさつを辿ろうと思います。
教科書的には、「アメリカのロバート・ギャロとフランスのリュック・モンタニエがしのぎを削ってほぼ同時に発見した。第一発見者がどちらかは米仏間の政治問題に発展し両首脳の話し合いによって両者同着で決着した」でとどまっていると思います。医学取材をする日本の記者もそれくらいの認識でしょう。実際には、ノーベル賞はモンタニエとバレーのフランス勢にだけ授与され、ギャロには授与されなかったことは意外に知られていません。バレーのウィキペディアのスカスカな情報に現れています。
 

シカゴ・トリビューン紙の特集号がもとになった本書


しかし、装丁がアメコミ風で損をしていると思われる「エイズ疑惑」(ジョン・クルードソン著、1991年紀伊國屋書店)という本を読めば、HIVを発見した瞬間が情景として浮かぶようです。そして、いち早く「エイズの原因ウイルスを発見した」と記者会見したギャロ博士に随分後ろ暗いことが多いこともわかります。この2点について2回に分けて紹介します。
 
当時、エイズを取り巻く環境は次のようでした。
1981年春アメリカの大都市で数名の若い男たちが奇妙な死に方をします。何かが男たちの免疫を破壊したようです。原因は?
エイズは血友病患者にも現れます。血友病に常用する血液凝固因子のフィルターを潜り抜けられるものは?⇒ウイルス
どうやら、日本南西部の漁村で見られるまれな白血病にのみ関連するヒトT細胞白血病(HTLV)に関係しているらしい。しかし、日本でエイズ患者の報告はない。
1980年白血病ウイルスが米国立衛生研究所NIHのギャロ研究室で初めて分離されており、ヒトレトロウイルスの第一人者を自負するギャロがエイズに興味を持ち始めました。フランス・パリのエイズ研究も始まり、パストゥール研究所ウイルス腫瘍学部門の主任モンタニエにも声がかかっていました。
また、もっと底流の大きな流れとして重要なのは、「もはやアメリカの感染症は終わりつつある。予算を大幅に削減しなければならない。研究所もいらない」という1980年代初めの風潮に「感染症の時代を終わらせてはならない」と抵抗し、今や確固たる地位を築いた勢力がいることです。ロバート・F・ケネディ・ジュニア著の「真実のアンソニー・ファウチ」に詳しく書かれています。当ブログでもしつこくお知らせしています。
※レトロウイルス 遺伝暗号がDNAではなくRNAで書かれているウイルス。複製の際には、RNAをコピーしてDNAをつくるために逆転写酵素を利用します。
 
発見の経緯を抜粋します。
<ファッション・デザイナーのブリュジエールは、数カ月もの間、エイズの前駆症状ともいえるリンパ腺の腫れに悩まされていた。…ブリュジエールのリンパ節の一片を…彼(モンタニエ)はリンパ節をほぐし、取り出したT細胞を生かすための培養液が入ったフラスコに入れた。…三日ごとに、モンタニエは細胞培養液を抜き取り、…レトロウイルスが合成するDNAを定量する放射性同位元素の使用に巧みなフランソワーズ・バレーに手渡された。バレーは、3日おきに計7回にわたって培養液中の逆転写酵素の検出を試みたが、7回すべてが陰性の結果であった。しかし、1983年1月26日、培養液中の放射活性が五千六百カウントに達するに及んで―これはバックグラウンドの約3倍の数値である―バレーは注目し始めた。さらに3日後、放射能レベルが二万二千カウントにまで上昇したときには、ほぼ確定的な結論が得られたように思われた。>
しかし、次に起きたことと対応の中にこのHIVの特徴があり、ギャロが一番乗りできなかった理由にも通じます。
 
<ところが、この日以降は放射能の数値は下降し始めたのであった。
…当時、唯一のヒトのレトロウイルスとして知られていたギャロの白血病ウイルスが培養で増殖する場合には、逆転活性酵素は…上がる一方だったのである。
もし、エイズという病気がヘルパーT細胞の減少を特徴とし、かつウイルスがその同じT細胞に感染するのであれば、結局は培養液に何ら具合の悪いことがあったわけではない、ということになる。おそらく、細胞を殺しているのはウイルスそのものであろう。この解釈で逆転写酵素活性の低下と細胞死を説明できるだけでなく、エイズの臨床症状の進展までも説明がつくだろう。>
 
ウイルスの増殖を維持するためにバレーは「新鮮な細胞を追加」。献血者から得た新鮮なT細胞と混合して培養されたブリュジエールの細胞の逆転写酵素活性は13日目に上昇を始め、その2日後にピークを迎え、その3日後に低下が始まりました。さらに、新生児の臍帯血から得たT細胞で培養しても同じような動きを示しました。
 
<白血病ウイルスであればT細胞を急速に増殖させるはずだったが、このウイルスは細胞を殺すではないか。>
 

新発見ウイルスは白血病ウイルスとは正反対のふるまい


フランス勢が見つけたウイルスは、ギャロのウイルスは白血病ウイルスとは正反対のふるまいをしていますが、白血病ウイルスに対する抗体と反応するか反応しないかではっきりします。
 
1983年2月にモンタニエはギャロに電話連絡し、パリのエイズ患者から新しいレトロウイルスと思われるものを見つけたこと、白血病ウイルスの抗体で確認したい旨を告げた。
 
<「彼は大変興味を持ったんです」とバレーは回想する。「彼は私たちに、自分はHTLVがこの病気に関係しているかもしれないことを示すデータを持っている、と言い出しました」>
 

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