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金融機能立て直しのため、大量の公的資金を投入する愚行 4章要約

こんにちは、癌と金の真説を紹介しているシン・説(しん・せつ)です。
★インフレは最も不公平で政治家と銀行家にのみ都合のよい徴税システムであることを告発したG・エドワード・グリフィン著の「ザ・クリーチャー・フロム・ジキルアイランド(邦題:マネーを生みだす怪物)」の要約をじっくり紹介しています。
インフレの本質は、物価高というより貴金属に交換できない不換紙幣を創出して、それをてこにした借金マネーの氾濫によってお金の価値が下がることです。インフレ徴税は国民に気付かれず、タンスでも預金でも政府から隠れる場所はありません。国民が知らないので税金が財源と思い込ませることもできます。政治家にとって最高の徴税システムです。
では4章の要約です。
※で囲んだ部分はシン・説の個人的感想の部分です。
 
 

4章 家、そして甘いローン


貯蓄貸付(S&L セイビングス&ローン)業界における今日の問題は、1930 年代の大恐慌にまでさかのぼることができる。アメリカ人は社会主義の理論に感銘を受けるようになり、すぐにその概念―政府が市民に利益を提供し、経済的困難から市民を保護することは適切である―を受け入れた。フーバーとルーズベルトの政権下、S&L の預金を保護することを目的とした新しい政府機関が設立された。
※ここで翻訳本の引用から注釈します。セイビングス&ローンのそれぞれ頭文字をとったS&L、貯蓄貸付組合は、貯蓄と住宅ローンに特化した金融機関です。要約を続けます。※
 
中産階級の住宅ローンを補助する。これらの措置は需要と供給の法則をゆがめ、その時点から、住宅産業は自由市場から政治の舞台に移された。
かつて政府介入のパターンは確立され、長く途切れることのない一連の連邦規則と規制が始まった。規制は、マネージャー、鑑定人、ブローカー、開発者、およびビルダーにとっては、拾い物の利益の源となった。また、不健全なビジネス慣行やリスクの高い投資を助長することで、業界を弱体化させた。これらのベンチャーが失敗すると、不動産は下落し始め、多くのS&Lが支払不能になった。
連邦保険基金はすぐに枯渇し、政府はこれらの企業を救済するという独自の約束に直面した。これらの企業は、そうするためのお金がない。規制当局の対応は、支払不能な倹約を支払い能力があるように見せかける会計上の仕掛けを作成することだった。これは避けられないことを延期し、事態をかなり悪化させた。失敗した S&L は毎月数十億ドルを失い続けた。そして救済の最終的なコストに大きく追加された。そのすべては、最終的には一般人が税金とインフレから支払わなければならないだろう。最終的なコストは 1 兆ドルを超えると推定されている
議会は行動することができないようで、奇妙に沈黙している。これは理解できる。多くの議員や上院議員は、S&L からの寛大な寄付の受益者だ。しかし、おそらくその主な理由は、議会自体がこの犯罪の主犯だということだ。どちらの場合でも、政治家は別のことについて話したいと思っている。広い視野で見ると、S&L 業界はカルテル内のカルテルだ。連邦準備制度と呼ばれるカルテルが、議会が約束した巨額の救済金を生み出すために待機していなければ、この大失敗は決して起こらなかっただろう。
 
※次にこの章への個人的感想です。
この本(初版は1994年)が書かれた後に、リーマンショックが起こりました。その原因はサブプライムローンです。
サブプライムローンとは何か、日銀情報サービス局内の金融広報中央委員会というサイトから引用しますと
<ローンの信用度が劣る低所得者層を対象とする住宅ローン。一般の住宅ローンよりも金利が高めに設定されており、その分審査基準が緩和されている。サブプライムローンは、米国で2004年頃から不動産ブームを背景に急速に普及した。借入れ当初の数年間は金利が低めに設定されて、その後、金利が高くなる頃に、値上がりした住宅・不動産を売却して借入れを返済したり買替えたりするというように、不動産価格が上昇することを前提として利用されていた。また、サブプライムローンは、複雑な工学技術を用いて証券化され、米国の内外を問わず、多数の金融機関に購入されていたため、不動産価格が下落し住宅ローンが不良債権化するにつれ、2007年夏頃よりいわゆる「サブプライムローン問題」として注目された。サブプライムローン問題はその後の世界的規模での金融危機の一因となり、金融機能立て直しのため、多くの主要国で大量の公的資金が投入された>このように説明されています。
黒田前日銀総裁の大蔵省時代の後輩で元東京税関長の志賀櫻氏は著書「日銀発 金融危機」の中で、「企業の抱えるリスクは外部の人間が正確に計量できるわけはなく、格付け会社による格付けなどは眉に唾つけて聞く必要がある」として、「リーマンショックの引き金となったサブプライムローン問題も、元はといえば格付け会社の格付けミスによるものである。あるいは意図的なミスであった可能性さえある」と指摘しています。
住宅バブルに踊った大企業や大銀行が窮地に陥いるや、金融危機を防ぐためという美名の下、それらを救済するために大量の公的資金が投入されるエゴを、庶民が理不尽だと思わなかった歴史が、また新たな理不尽を生むのだと思います。※

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