【Web3】DAOのメリット・デメリットと課題
DAOは「分散型自律組織」という名前が示す通り、意思決定がメンバーに分散され、経営者による中央集権的な運営がされず、メンバーによって自律的に運営される組織です。
現在、Web3の世界では、多くの組織がDAOとして運営されています。例えば、Defiでは、UniswapDAOやMakerDAOが、NFTでは、ApeCoinDAOやNounsDAOがあります。
DAOについて、イーサリアム財団のDAOについての解説サイトは、「組織を誰かと一緒に組織を立ち上げるには、資金やお金が関わるため、相手との信頼関係が必要になります。しかし、インターネット上でしか交流のない人を信用するのは難しいと思います。分散型自律組織(DAO)では、グループ内の他の誰かを信用する必要はなく、100%透明で誰でも検証可能なコードだけを信用すれば大丈夫です。これにより、グローバルなコラボレーションやコーディネーションに新たな可能性が広がりました。」と説明しています[1]
[1] https://ethereum.org/ja/DAO/
このようなDAOという組織のデメリット・デメリットや課題について解説します。
DAOのメリット・デメリット
DAOについて、そのメリット・デメリットを挙げると以下の通りです。
メリット
① 透明性
ブロックチェーンを利用することで、運営や意思決定が公開され、不正行為や情報の非対称性が減少します。
② 効率性
スマートコントラクトによる自動化により、管理コストや運営負担が軽減されます。
③ グローバル性
ブロックチェーンを利用することで、国境を越えた参加やコラボレーションが可能になります。
④ コミュニティ主導
メンバーが共同で意思決定を行うため、コミュニティのニーズや価値観が活動に反映されやすくなります。特に、あるサービスのユーザーが、そのサービスを運営するDAOのメンバーと一致する場合、ユーザーがサービスを運営することになるので、サービスの利用率、ロイヤリティ、満足度の向上が実現しやすくなります。
⑤ 経営者不在によるコストの不発生
DAOには経営者がいないため、経営者への報酬支払といったコストが不要になります。また、経営者がいると、メンバーの利益を犠牲にして私利私欲を図ることが起こる可能性があるほか、経営者が真摯に行動していてもメンバーの意図とは異なった行動を行う可能性がありますが(そのコストを「エージェンシーコスト」といいます)、DAOであればそのような可能性が生じません。
⑥ 組織・サービスの永続性
中央集権的な管理者が存在しないため、管理者不在でも組織が存続し、サービスが提供されることになります。
⑦ トークンのインセンティブの活用
DAOではトークン発行ができますが、これをユーザーや協力者に配布することにより、DAOに協力するインセンティブとして利用することが可能です。
デメリット
① 意思決定の遅さ
DAOでは、メンバーが直接的に意思決定プロセスは、メンバーという多くの人々を巻き込むため、経営者だけで判断する場合と比べて時間がかかり意思決定が遅くなります。
② フリーライドの発生
運営に積極的に参加するメンバーの貢献によって生じる成果に、参加しないメンバーがただ乗り(フリーライド)し、メンバー間で不公平が生じることがあります。
③ 法規制の不確実性
DAOは新しい組織形態であるため、法規制が十分に整備されておらず、不確実性があります。
④ セキュリティリスク
スマートコントラクトの脆弱性をついたハッキングによる資金流出や議決権の不正行使などのリスクがあります。
⑤ ベストプラクティスの未確立
現状、DAOの運営について、ベストプラクティスが存在せず、手探りで試行錯誤を繰り返している状況にあります。そのため、DAOをどのように組成・運営したらよいのかわからず、検討や試行錯誤のためのコストが必要となります。
⑥ トークン設計の複雑性
DAOではトークンを発行することになりますが、トークン設計については自由度が高い反面、トークンには様々な法規制があり、これらをクリアする必要があります。また、トークンが売買の対象となる場合にはその価格をどのようにコントロールするかというトークノミクスと呼ばれる経済的視点も必要となります。そのため、トークンの設計はかなり複雑となります。
⑦ DAO・Web3の認知度の低さ
世間では、現時点では、DAOやWeb3の認知度が低く、Web3についての知らない人をDAOのメンバーとして勧誘するのはハードルが高いため、DAOを拡大するにあたっての制約となります。
DAOと特徴と課題
以上を踏まえてDAOの特徴と課題を整理すると以下のことが言えると思います。
① DAOの重要性
DAOは、ブロックチェーンを活用し、従来の中央集権型の組織とは異なる分散型のガバナンスを提供します。これにより、透明性や効率性が向上し、参加者がより平等に意思決定に関与できます。そのため、DAOが企業や組織にとって新たな組織形態としての可能性を持っています。
② ガバナンス
DAOのガバナンスは、従来型の企業や組織におけるガバナンスよりも柔軟性や拡張性があります。
③ スケーラビリティとコミュニティ
DAOは、世界中のどこからでも参加が可能であり、コミュニティがグローバルに拡大することができます。また、参加者はDAOの成長に応じてリソースを効率的に配分し、組織の拡大や縮小に対応できます。そのため、DAOは、スケーラビリティとコミュニティの観点からも革新的な潜在能力を持っています。
④ 複数のDAOの連携
将来的には複数のDAOが連携して、より複雑で高度な機能を持つ組織が現れる可能性があります。例えば、あるDAOが別のDAOにサービスを提供することで、相互に協力し合い、効率的に資源を共有することができます。このようなDAOの連携は、分散型のインターネット経済において新たな可能性をもたらします。
一方で、DAOにはまだ解決すべき課題があります。
⑤ ガバナンス
DAOのガバナンスについては確立した手法はありません。例えば、シビルアタック(一人の参加者が複数のアカウントを作成し、投票権を悪用する攻撃)、低い投票率への対策が必要です。
⑤ 法規制・税制
現行の法規制がDAOにどのように適用されるのか、またどのような制度が必要かについて検討する必要があります。法規制が整備されることで、DAOが一般的な組織形態として認識され、信頼性や安全性が向上することが期待されます。
現代ではあまりにも大きな貧富の差が生まれるなど、中央集権的な組織によって形成されてきた資本主義が行き詰まりを見せていることころです。分散型組織であるDAOは、このような資本主義の行き詰まりに対して何らかの解決策を示すことできるかもしれません。
DAOは、新たな組織形態として様々な可能性があります。このような可能性を持つDAOを活用することで、より良い社会を築くことができたら素晴らしいと考えています。