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web3は社会をどのように変えるか

web3は社会をどのように変えるのだろうか?
この点について、私としては以下の3つを挙げたい。

1.  トークンエコノミーの形成 

web3では、トークン(定義はCoinbaseのサイトを参照)を使って資金調達をしたり、協力してくれた人に報酬を支払うことができる。

例えば、新規事業を立ち上げるときに、イーサリアムと引き換えにトークンを発行し、集めたイーサリアムを原資としてプロダクトを開発することができる。そして、その収益をトークン保有者に配分することもできるし、トークンが暗号資産取引所に上場すれば、トークン保有者は、トークンを売却して投資を回収できる(ちなみにこれを日本で実施するには法規制がある)。

このようにトークンを使った経済システムが「トークンエコノミー」である。「トークンエコノミー」では、人々はトークンで報酬を受け取ったり、買い物をするようになる。

「楽天経済圏」というものがある。人々は楽天ポイントを貯めて、楽天ポイントを使って、様々な商品を買ったり、サービスを受けている。イメージ的には、それをより発展させたものがトークンエコノミーである。

このようなトークンエコノミーの形成の流れは、トークンがもたらす便利さを考えれば不可避の流れといえよう。現に暗号資産の市場が爆発的に拡大していることがそれを示している。

企業目線では、トークンエコノミーの中で、どのようにビジネスチャンスを掴むかが問題となる。トークンエコノミーの領域は、フロンティアであり、大きな市場成長が期待できる。また、企業がビジネスを遂行する上で、いかに上手くトークンを使いこなすかも課題となってくる。

国家としても、経済発展や、金融システムの維持・発展のためにもトークンエコノミーへの対応が重要となってくる。経済を発展させるためには、トークンエコノミーを上手く活用・育成する必要がある一方で、金融政策、マネーロンダリング、消費者保護、投資家保護の観点から、一定の規制も必要となる。問題は、それが適正なものかということであるが、国家はそれに対する明快な回答を現時点では持ち合わせてないように見える。また、通貨的な役割を持つトークンに対しては、国家が敵視しがちであり、旧Facebookの「Diem(旧Libra)」が国家によって潰されたことは記憶に新しい。

いずれにせよ、暗号資産の普及により、トークンエコノミーが形成されていくであろう。

2.デジタルアセットの形成

ブロックチェーンにより、秘密鍵を有する者しか移転ができないようにすることで、データに対して、あたかも所有権のようなものを付与できるようになった(正確にはそれは所有権では無いがそれについては別稿で改めて論じたい)。

従来、データはアクセス可能な状態であれば、コピーは容易であり、データは同時に複数存在できることから、特定の者とデータを明確に結びつけることはできなかった。しかし、ブロックチェーンにより、特定の者とデータが結びついていることを、改ざん不可能な形で公に示すことが可能となった。また、web2の世界ではデジタルアセットはプラットフォーマにせよ、自分自身にせよ、管理者が必要であったが、ブロックチェーンにより管理者不在でデジタルアセットが存在・流通できるようになった。

これにより、人々は、データを「デジタルアセット」として価値を見出すことができるようになった。

その典型例が、2021年頃に一大ブームとなったNFTである。ネットで誰でも見ることができるデジタルアートが、NFT化することで、特定の人と結びつけることができることになったことから、デジタルアートに価値がつき、多くの人がNFTを有償で取引するようになった。

また、NFT化することで、デジタルアセットが、Openseaなどのマーケットプレイスで取引しやすくなったことも見逃せない。これによりNFTの市場が一挙に広がり、クリエーターは作成したデジタルアセットを販売しやすく、人々はデジタルアセットを購入しやすくなった。

このように、web3により、デジタルアセットに価値が生じ、経済活動が生じるようになった点は画期的である。

3.インセンティブ革命

トークンの利用方法の一つとして、ユーザに配布するというものがある。例えば、サービスが開始した初期にユーザにトークンを配布し、初期ユーザがサービスを使うことにより、サービスが普及すると、トークンの価値が上がり、初期ユーザがトークンを換金してメリットを受けるというものである。これは、初期ユーザの「メジャーになっていない時に自分たちが応援してあげた」という気持ちに報いるものである。

今までは、初期ユーザに報いる方法はなかった(現金や株を配ることは一般的ではない)。しかし、トークンを使えばそれをすることができる。初期ユーザからすれば、トークン価格があがるという期待から、サービスをもっと使うとか、知り合いに宣伝しようというインセンティブが生じることになる。

また、トークンには、ガバナンス・トークンと呼ばれるものがある。これは、トークンに投票権を付したものである。ガバナンス・トークンを有する者は、プロジェクトの運営について、提案や、提案への投票をすることができる。

このような組織は、DAO(Decentralized Autonomous Organization、分散型自律組織)と呼ばれる。組織といえば株式会社があるが、DAOの場合、ガバナンストークンの保有者は、直接的に様々な提案ができるようになっており(株式会社では株主による提案権の行使が限定されている)、経営陣がいない中央集権的ではない分散型の組織である。また、議決権の行使については、スマートコントラクトにより実行されるので不正操作できず、透明性もある。

DAOの理想的な形態としては、あるプロジェクトを実現したいという共通の目的を持つ人々が、様々な提案をし、議論をした上で、投票により決定することでプロジェクトを運営していくというものである。

株式会社の従業員は、会社運営について口を出すことはできないのが通常である。株主も経営陣を通じてしか会社運営ができず、エージェンシー問題が生じることが指摘されている。DAOのメンバーは、プロジェクトの運営に直接関わることになるので、エージェンシー問題は生じない(ただし別の問題が生じるがこの点は別稿で述べたい)。

DAOのメンバーは、ガバナンス・トークンを持つことで、プロジェクトに対する当事者意識が生じることやガバナンス・トークンの値上がりへの期待などから、プロジェクトに対してコミットしようというインセンティブが働くことになる。

このように、トークンを使うことにより、従来とは違った形で、人々にインセンティブを与えて、動いてもらうことができる。

4.まとめ

 トークンエコノミーの形成デジタルアセットの形成インセンティブ革命のいずれも、従来なかったものであり、web3によって新たに生み出されたものである。これらはどれもが社会に対して大きなインパクトを持つ。それゆえに、web3はこれからの大きく社会を変えていく技術だと思える。 

 世間一般には、暗号資産=あぶないもの、避けるべきものという考えがかなりあるように思える。確かに、暗号資産を巡ってはハッキングによる流出事件や価格の暴落、詐欺事件などがあったことも事実である。しかし、このような社会に大きな変革をもたらすweb3を遠ざけてしまっては、日本経済も日本企業も成長の目を潰してしまうことにならないかを危惧する。web2の世界で敗北し、空白の30年となり、世界中で賃金が上がる中で日本だけが賃金も上がらず、閉塞感があるが、web3でも敗戦し、空白の期間がまた30年続いたら、日本という国は一体どうなってしまうのだろうと本当に心配になる。もちろん、このような状況を打破するのは我々しかないと思うのである。

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