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「定型文」で関係は冷え込む

今日は立春。暦の上では春です。

なんて、webの記事やテレビのニュースで、たくさん目にしました。こういう定型文は便利ではありますが、なんとなく「お! きたな!」という感覚があります。

なんでしょうね、これって。

ぬくもり?

情感?

つながり感?

興味?

なにかが足りず、パサッとした言葉だけが勢いよく飛んでくるんだけど、わたしのところに届く手前で落っこちてしまうような気がしてしまうのです。


会社で1on1をしている方から、相談を受けたことがあります。

「質問をたくさん準備しておいたのに、いざとなったらどれを使えばいいのか混乱してしまって……」

コーチング“研修”を受けたり、本を読んだりして、「よし! やってみよう!」と思っていたのに、うまくいかない。

もどかしいこと、この上ない事態だと思います。

「ちなみに、わたしって質問を準備しているように見えますか?」

「あー、そうは見えないですね。徒手空拳って感じ」

勇気を出して聞いてみたところ、こんなお返事でした。徒手空拳って。笑

実は、わたし自身はセッションの前にけっこうな準備をします。これが「たくさん」なのか、「ぜんぜん足りていない」のかは分からないけど。

そうして準備したものを、セッションの時には全部忘れているんです。アホだからかもしれない……。

そもそも、「ちなみに、わたしって質問を準備しているように見えますか?」なんて質問、用意しないですよね。

準備なんてしても意味がない、という話ではなく、逆です。ひたすら自分が想像できる準備はするけれど、そこにはこだわらないということです。

「聴く」という姿勢に一番合わないのが、「定型文」であり、「準備された質問」なのかもしれません。


なぜこんなふうに考えるようになったのかというと、「7つの習慣セルフコーチング」講座を初めて開催したときの、痛い失敗の反省からです。

「7つの習慣セルフコーチング」講座は、1Day開催だと8時間というボリューミーな講座です。伝えたいこと、伝えないといけないことも盛りだくさん。テキストには、これまでの勉強会での気付きをいっぱいメモしています。

その上、クライアントに合わせた準備もしたので、頭の中も、気持ちも、いっぱいいっぱいでした。

「アレも言いたい!」

「その質問には、コレを伝えておかなきゃ!」

なんてやっているうちに、ふと、自分とクライアントの心の距離が開いているような気がしてきました。

当然です。

自分のことでいっぱいで、クライアントを見ていなかったのですから……。


1on1という場は、ふたりで作り上げるものだと思います。定型文と、1on1の一番の違いは、一人ひとりにオーダーメイドされたものかどうか、かも。

そのため、聞く側の定型文的なパサッとした質問は、「あぁ、この人は、わたしに興味がないんだな」というメッセージとして伝わっている可能性だってあります。

また、「定型文」という準備された質問は、聞く側の「逃げ」につながっているのかもしれません。より深く、相手に興味をもって寄り添える自信がないとき、とりあえず定型文を使いたくなってしまうから。

定型文はたしかに便利です。でも、そこにひとつでも、「わたしの感情」を付け加えられたら、わたしと相手の間にあるコミュニケーションは、もっとぬくもりに満ちたものになると思います。

もっともっと言葉を大切にしたい。だからこそ、言葉を発する自分自身を、太く深く大きくしたい。

今日は立春。暦の上では春です。

人の心は、そんなにピシッと線が引けるものでもないから。どうしたって揺れ動くし、グラデーションができる。その間に、目を向けたい。

「聴く」は奥の深い行為だなと、やればやるほど思うのでした。

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