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異文化と働くうえでの3つの心構え

いまの日本が抱える課題として定期的に取り上げられる話題に超高齢化と少子化があります。事実、日本の総人口は2010年をピークに直近10年で約218万人の人口が減少しています。また、2020年の出生数は過去最低の84.7万であり、日本政府の推計では2048年には日本の総人口は1億人を下回るというデータも出ています。(直近3年の出生数や、出生数が死亡数を下回る人口の「自然減」も加味すると2048年よりも早まる可能性もあり得ます)

過去に日本の超高齢化社会に関するnoteを書いているので、興味のある方は見て頂けると日本政府のデータを基に少し詳しく記載しています。(リンク

この背景からこれからの日本のビジネスシーンでは外国人労働者の助けが必要になるという話はメディアでたくさん取り扱われています。また、日本国内に関しても、外資企業では多国籍メンバーで構成された部門やチームも存在します。さらにテクノロジーの普及により日本に居ながらもクライアントやサプライヤーが海外にいる場合、自然と異文化と接する機会が増えているのが現代社会です。

この記事では異文化から見た日本のビジネスの特徴、それに対して日本人はどのような心構えを持つべきなのかという話をしたいと思います。

曖昧なコミュニケーション

日本文化は「ハイコンテクスト(High Context)」だと言われることがよくあります。The Culture MapNo Rules Rulesの著者としても有名なErin Meyer氏によれば、日本は世界一ハイコンテクストな国とのことです。ハイコンテクストとはコミュニケーションとしての言葉の中に見えない文脈、文中の前後関係や背景が豊富に含まれるということです。例えば日本語でのコミュニケーションの特徴の1つには主語が無い会話が多く発生することです。言い換えると、日本語での会話は前後のやり取り(文脈)から相手が何を指しているのかを主語以外から読み取る必要があると言えます。

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Erin Meyer | Low Context vs High Context Societies

これは言語だけではなく、コミュニケーション全般にも現れるのですが、それが海外の異文化からはよく曖昧なコミュニケーションとして指摘されることがあります。日本文化としては「察する」「文脈を読む」ということが自然ですが、それは日本特有の文化であり、海外では必ずしも当たり前ではありません。ハイコンテクストとは逆のローコンテクスト(Low Context)の組織では明確な表現が好まれるため、日本式のコミュニケーションは回りくどいを感じられると同時に何が言いたいのか分からない(曖昧)と思われることに繋がります。

ビジネス上の関係がある相手がハイコンテクストなのかローコンテクストなのかを理解したうえでコミュニケーションを取らないと意思疎通が難しくなるのはもちろんのこと、相手を誤解してしまうことにも繋がるため注意が必要です。

不十分な自己表現

日本では「協調性」や「和」を重んじる文化があります。家族、学校、会社などでは自分以外のメンバーに対する尊重や相手に合わせるということが日本では美徳とされることが多く見られ、反対に個の主張が強い人がいる場合、日本では「場を乱す」や「空気が読めない」というネガティブなイメージを持たれるケースも出てくるはずです。

一方、海外では自分の意見を求められる場面が多く、自分の意見を主張しない場合は、自分の意見を持っていないと思われることがあります。これは日本人が意見を持っていないということではなく、意見を持っている場合も周りの環境に合わせる特性が強いということなのですが、日本の文化を良く知らない人に関してはそれは非常に伝わりにくいため注意が必要になります。

個人的な見解ですが、日本での学校教育では画一的な教育が多く、制服などに代表されるように集団としての意識を高める反面、個性や特徴を際立たせるということが文化的には弱い側面があるようにも思えます。現代社会では「個の力」が求められ始めている一方で日本は文化として自己表現を控える特徴や、受け身になる傾向が比較的強く出るため、自己表現に苦手意識を持つ人が多くいるイメージもあります。

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Forbes Japan | 「自分の頭で考えられる子」の親がしている4大習慣

これからの社会はより国際化が強まることからも、文部科学省は小・中・高校生向けに国際バカロレアという教育プログラムを推進し、グローバル化に対応できる人材を育成しようという取り組みも進んでいます。

ビジネスシーンでは、上述のコミュニケーションも含めて、自分の意見がある場合は自己表現をはっきりと分かりやすく相手に伝えることで、ビジネスが円滑に進む場面も想定されるため、異文化との共存の中では自己表現方法を身につけることの重要度も高まるでしょう。

意思決定の遅さ

上記2つとは少し毛色が異なる話になりますが、異文化から見た日本において意思決定のスピードに関しては良く出る話題だと思います。特に日本経済を支えている製造業においてはジャパンクオリティーという言葉に代表されるように質の高い製品(プロダクト)を生み出す一方、現代社会では特にスピードが求められることが多く、コロナ禍での例を上げると公的機関でのデジタル化や民間企業のリモートワーク導入に置けるスピードはこの話題に当てはまるのではないでしょうか?

何かの意思決定を行う際には大別すると2つの種類があり、それは「トップダウン式」か「コンセンサス式」に分かれます。日本の文化としてはコンセンサス(合意)を重視する傾向が強く、日本人は多数決が好きなイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。一方、大切な意思決定の際に全員の合意を得ることはビジネスの場ではほぼ不可能と言えるため、それを気にしていたらいつまで経っても意思決定ができないのが実情です。

日本の文化では協調性を大切にするということも述べましたが、意思決定におけるスピードに関しては、協調性や和を重んじることがスピードを遅らせる要因になっている部分は多分に考えられます。さらに終身雇用という過去の神話からも連想されるように、日本の労働市場では1つの職場でキャリアを全うすることが良いと考えられてきました。そこから読み取れる仮説としては現状維持に対して固執する特性です。あらゆる変化が求められる現在のビジネスシーンに置いて変化に対する免疫が低い文化は必ずしも有利に働くとは思えません。

一方、社会や組織にて新しい変化や挑戦が求められる際の意思決定には注意すべき点もあります。それは透明性と公平性です。これは上述のトップダウン式でよくあるケースですが、意思決定のにおける背景や説明がメンバーに上手く伝わらないと組織が機能しないことがよく見受けられます。考え方や価値観の異なる異文化を持つメンバーと働く際の意思決定は決して簡単ではないです。上手く意思決定を行うためには、異文化に対する理解度を深めることが必要不可欠になるでしょう。

上記で3つ挙げた特徴に関しては日本文化や日本以外の文化の異なる点であり、どちらかが正しく、どちらかが間違っているという話ではありません。しかし、日本のビジネスシーンでは外国人労働者が増加することが高い確率で予想され、その環境で働くうえで「日本はこうだから」と異文化を持つ相手に日本文化を強要しても理想的な成果に繋がる可能性は低いと思われます。外国人にとっては日本が異文化であり、彼らも分からないことが多いと思います。まずは違う文化背景に対して興味を持つこと、異文化を理解することが自文化も理解してもらえることに繋がるはずです。

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