俳優・林遣都の魅力をプロライターが本気でプレゼンしてみた②

前回も触れたように林は、デビューから数年間、映画・ドラマいずれも主演をつとめることが多かった。そしてその多くが“林遣都らしい”といえる役どころでもあった。

たとえば女優は、しばしば「清純派」というイメージからの脱却に苦労する。名子役もそうだ。

同じく林も、当初に根付いた好青年、薄幸の美少年といったイメージからの転換には、苦労があったのかもしれないと思う。

■バイプレイヤーとしての林遣都

林遣都(敬称略)の演技に味わいが出てきたのは、そして俳優・林遣都がおもしろくなってきたのは、彼がバイプレイヤーをつとめるようになってからのことであると私は思う。

一度主役として輝いてしまった俳優を、脇におくことはときに難しい。本人が望む・望まないは別として、主演としてしか作品に出演できない演者も少なくはない。

いつでも主役を張れる俳優、それも輝かしい受賞歴をもつ俳優が、時おなじくして助演をつとめるというのは、誰しもが出来ることではない。

しかし、林遣都はそれができる俳優だ。

たとえば『リーガルV』や『ST~赤と白の捜査ファイル』といった“チームプレイ”を要する作品において、林はうまくおさえた演技をしている。作品に所属する一員として調和し「いまの、林遣都だったんだな」と、あとから気付くこともあるほどだ。

一方『ストロベリーナイト』や『ON』といった、彼がキーマンとなる作品、あるいは個々の役どころが主張しあうべき作品においては、その登場シーンから一種異様な存在感を放っている。

主演であろうがなかろうが、林遣都には関係ない。彼は、必要な場面で確実にスポットライトを自らに引き寄せることができる。いつのまにそれほどの俳優になっていたのかと、驚いたのは『レジデント~5人の研修医』で矢沢圭役を演じているのを観たときだった。

今、ときにはバイプレイヤーとして、ときには主役として、個性的な役を次々と演じてみせる彼を見ていると、なんだかうれしくもある。

彼が「役者」という道を選び、努力し、存在し続けてくれていること、そして求められ続けていることに。

近年の林遣都はとくに「役者」を楽しんでいるように、夢中になっているように感じる。あくまでいち視聴者、いちファンの意見であるが。

■『小公女セイラ』で見せた好演から、大人の男性への成長

『小公女セイラ』では、使用人・三浦カイトを好演した。過酷な運命を生きるセイラと、貧しくも心優しいカイト。二人が心を通わせるシーンは、視聴者にとって唯一、ほっと心休まるひとときでもあった。

ゴールデンタイムの連続TVドラマということもあり、俳優・林遣都の存在を世間に印象付けた作品だといえる。同時に「林遣都」にある程度のパブリックイメージが定着した。

世界的な有名作品の日本版リメイクであり、少々どころではない無茶な設定もある。下手をすればコメディにもなりかねない勝負作品だ。

しかし、樋口可南子、大和田伸也、田辺誠一といったベテラン俳優がしっかりと脇を固め、志田未来・林遣都という品のある若手俳優が好演したことにより、本作品は独自の世界観をもって成立していた。

林の類まれな容姿、佇まい、ささやくような優しい声までもが、本作品を引き立たせていた。ボロを着た使用人・三浦カイトという、現代日本には存在しないであろう青年の存在に命を吹き込み、説得力をもたせていた。

最終話には、印象深いシーンがある。カイトとセイラが、互いに募らせてきた恋心を打ち明け、口づけをするシーンだ。

唇が触れるその瞬間、カイトの瞳から一粒の涙がこぼれ落ちる。演出か、はたまた偶然か。演出であるならばその演技力に脱帽するし、偶然であるならば、林はやはり演劇の神に愛された男だと思う。

涙のせいか緊張のせいか、林の耳が赤い。本作においてカイトはいつだって、セイラに触れる手がぎこちなかった。寒いからと、上着をかけてやることもうまくできない。

続くテレビ作品『美丘』においても、美丘に触れる林の手はぎこちなかった。当時の筆者は、それが林らしいとも思っていた。

数年後、あらためて『美丘』を視聴する機会があった。当時は「ぎこちない、たどたどしい」と感じていた、恋人を包み込む腕、震える指先には、たしかな力強さがあった。

若さゆえ、触れ方を知らない。愛しいからこそうまく触れることができない。それでも愛しい想いがあふれる…。

印象的だったぎこちない腕は、カイトがセイラに、太一が美丘にそうするように、自然と林の身体が動いたものだと、たしかに思う。

余談だが『花芯』『鍵のない夢を見る』を観たときには驚いたものだ。人間として、男性として、役者として成長した林遣都がそこにいた。

白い肌に、ほんの少し赤みを帯びた指、筋ばった腕や肩は、華奢でありながら女性をしっかりと包むことができる。

林遣都(35)なんて日が来たら、きっと我々はその色気にノックアウトされてしまうだろう。

次回:ファンでない人も必ず観てほしい。名作『しゃぼん玉』を徹底解説


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