見出し画像

ダイバーシティカップという可能性

“ダイバーシティカップ”とは、2015年より東京と大阪で毎年開催されているフットサルの大会である。

参加者は不登校、LGBT、依存症、精神障害、被災者、ホームレスやひきこもりなど多様な社会的困難を持つ当事者とその支援者であり”立場を超えてサッカーという共通のスポーツを楽しむ”ことが目的である。私はボランティアという立場で参加した。

内容は次のとおりであった。

①アイスブレイク(参加者全員で自由に動き回り1人1人の名前を呼んでジャンプハイタッチをする)、②チームに分かれて試合、③ミックスチームで試合をする。

①では、各々が胸に名前を書いたガムテープを貼るのだがこれは本名であるかは問わない。何故なら本質を考えると”名前は何であっても良い”からだ。それぞれが多様な生き方や状況にありながらもここではサッカーという共通のスポーツの”参加者”として1人ひとりに隔たりがないのだ。”表示された名前”を呼び合うことで人との繋がりが得られるだけでなく、ハイタッチでは「せーの!」と言い合いジャンプのタイミングを一緒に合わせるのだが、これが意外と難解で、タイミングが合った時には嬉しくて走り出してしまう人や感動して泣いてしまう人がいた。

②では”一つ目標を決めてプレーする”ことを原則としており、日頃の練習の成果を発揮して勝つとか、ドリブルで抜く、とか根性論かつテクニカルな目標を挙げる人もいたが、他方では参加者の半数以上は未経験であることから人を呼んでボールをもらって人を呼んでパスをする、誰も怪我をしないように参加者全員を応援する、自分の大切なゴールを守る!、思いっきりシュートする、など純粋で真っ直ぐな目標が印象的であった。まるでサッカーに人生を投影するかのような魂を感じ、自身の”サッカー観”を顧みる大きな契機となったことを記憶している。

③はミックスということでチームの大半が初対面になることから”ぎこちない雰囲気”すなわち一般的にいえば”他人を意識する”心理が働くのではと先入観が働いたが、”共通の目的を持つ参加者”であるため、自己紹介から試合終了までにおいて互いを認め合い受容するといった空気感を肌で感じることができた。

最も印象に残っているのは、発達障害のある青年であった。イジメや差別などを受けてきた背景があるが、『この大会や日頃の支援団体との繋がりを通して出会う人達は、自分を受け入れてくれる、ありのままの自分でいられる』と話してくれた。何度もハイタッチをしてくる無邪気さが愛らしく今でも時折メールをくれる。

様々な社会的困難や人間関係の貧困を抱えている人にとっては自己肯定感が得られるのみならず”問題解決への後押し”ともなる可能性に満ちた大会であると感じた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?