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【本紹介】夢を叶える逆算思考ー三苫薫

今、日本で一番ドリブルが上手いサッカー選手は誰か?この質問で最多票を得るのは、英プレミアリーグで活躍する三苫薫選手だろう。彼の新刊が出た。著書冒頭に書かれた下記3つが、大切な事だと彼は言う。

①自分にしかない武器を持つ
②自分を分析する力を身につける
➂毎日の努力を積み重ねる

①:彼ほど説得力を持って言えるアスリートは多くないはず。三苫選手は、誰に言われようと、何度失敗しようと、ドリブルの練習を誰よりもこなし、決して決してやめなかった
②:多くの人が自分の現在地を客観的に見れていない。これが分からないと、効果的な次の1歩が何なのか分からない。
➂:地味であるがゆえに注目されない。だが一流と呼ばれる人は間違いなく毎日の努力を長期間に渡って継続している。あえてこの当たり前のこの事を3つ目に書いた三苫選手の真意を重く捉えたい。続けられない人が99%。

本書を読んで、三苫選手の非凡さを感じたのは、分解して考えられるということ。目標についても、短期・中期・長期と分けて立てる。自分のコントロールできる部分に意識を集中させる。雑音を排除する。今の自分にとって大切なこと・必要な事は何なのか。それを自分で考えられる。そして、それを実際に大切にする生き方を毎日継続できる。他人がどう思おうと関係ない。(筑波大学時代に三苫選手は付き合いの飲み会に行った記憶がほとんどないと本書で述べている。大谷翔平選手に通ずるものを感じる)
多くの人はここまでストイックにはなれないが、自分が真剣に向き合える対象は何か、自分は何に本気になれるのかを考え、試す事はできる。学生なら、20代ならば、多くのことが試せる。このメリットを享受して、多くのトライ・失敗を重ねよう。その失敗は、必ず自分だけの血肉になる。

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川﨑フロンターレ U-12時代の髙崎監督、筑波大時代の小井戸監督は、三苫選手のサッカー選手としてのキャリアに大きな影響を及ぼした。髙崎監督から、「1回全員ドリブルで抜いて、ゴールを決めてみろ」と言われたエピソードとか、笑える。伊藤純也選手のスピードが分かりやすいが、特筆すべき武器がないと、トッププロとして生き抜いていくことは難しい。

1個上の板倉滉選手や三好康児選手がプロ入団後すぐには出場できていない姿を見て、プロに行かずに大学進学を選択した点も頷ける。つくばという人里離れた環境の体育学群という特殊な環境下で、別競技においてトップで活躍する選手や陸上競技を専門とする教授から走り方の指導をされていたのも、三苫選手にとっては幸運だったと言える。「加速したいときに上体を傾ける、減速したいときには上体を上げる」という常識に反し、その真逆のアプローチを学んだというエピソードは個人的に面白いと感じた。「上体が上がっていれば、横方向・後ろ方向にもトップスピードで入れる」という指摘は新鮮

 川﨑フロンターレU-18の最後の試合でつい試合中にベンチに怒鳴り返してしまった三苫選手は、最後の引退の会で、監督に個別にそれを指摘され、その後の態度を改めるようになったという。
サッカーしか知らずに育ってしまい、その"粗雑さ"を隠し切れないJリーガーもいる中、プレイ中にピッチにおいて激情する事がほとんどない・相手に対して礼を失することがない三苫選手だが、若かりし頃のそんなエピソードも本書で紹介されている。

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川﨑フロンターレのトップチーム昇格の打診がありながら、あえて大学進学を決断。

「プロで通用するための肉体づくりをしたかった」
プロになってからは結果がすぐに求められる。大学ならば、4年間自分で試行錯誤する時間を持てる
結果的に途中で退学を選択する上田綾世選手のような例もあるが、伊藤純也・旗手怜央・三苫薫選手のように、明大・順大・筑波等レベルの高い大学の環境を選ぶのは、理にかなっていると言える。

 異なった価値観を持った人たちと出会い、それぞれに違う考え方があることを知った。そうした沢山の人が集まってできた組織の中で働くことの意味と大切さも理解できた。(中略)
他人の目標をバカにするような人間は、僕の周りには一人もいなかった。愚直に努力し上を目指す僕に対して、周りの人間も負けじと情熱を注ぎ込んでいた。彼らを切磋琢磨できたからこそ成長できたと強く感じている。

VISION 夢を叶える逆算思考ー三苫薫

「このように、人間は周囲から強い影響を受けるものだ。その裏返しとして、自分も周りに影響を及ぼしているんだということを理解することが大事だということも、この時期に痛切に感じた。こうした人を思いやる心を知れば、自分がされていやなことを他人に対してしないはずだし、自分の行動を客観的にみる事もできると思う」

VISION 夢を叶える逆算思考ー三苫薫

サッカーに関する技術に関する基本という点でも本書から学べる点は多い。

・「止める、蹴る」という超基本技術の習得に、川﨑フロンターレというクラブは非常に多くの時間を費やしている事。その風潮を持ち込んだのは風間八宏氏である事。
・両足を使えるようにするよりも、利き足を磨く重要性。メッシやイニエスタは、ボールタッチ数の9割以上が自分の利き足であるというデータ紹介。

・食事による超回復の重要性。フロンターレユース時代には、トレーニング後すぐにフロンターレ施設で食事を摂っていた事。タンパク質・炭水化物・脂質・ミネラル・ビタミンのバランス等、良いものを摂る大切さは勿論だが、悪いものを摂らないようにすること。(遠征に行く三苫選手のリュックがサプリや栄養補助キットで膨らんでた事に旗手選手が驚いてたエピソードも)

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 命を燃やさないと、生きている実感は得られない。挑戦していないと、ドキドキもワクワクも得られない。結果でなく、プロセスに重きを置けるかどうか。自分の心は躍動しているのか。今の自分は、錆びついていないか。

 そんなことを考えさせてくれる本である。薄っぺらい自己啓発本とは違い、三苫薫選手本人の気持ち・文章が1ページにびっしり書かれているので、他人にバカにされそうになりながらも、自分だけの目標に日々向かおうとしている人には、おすすめしたいと思います。


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