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【本紹介】Brain Driven②ストレスとの向き合い方

前回の続きです。

自分を守るためにも、"自分はどんな状況でどんなストレスを受けると、過剰なストレス反応が出るか"は、知っておいた方がいい。

過剰なストレスを感じる→前頭前皮質のdlPFCが働かなくなり、正常な判断力を失う(現実性の把握、エラー検知機能をモニタリングする機能が停止)

慢性的なストレスは、脳によくない

慢性的なストレス→コルチゾールが出続ける→海馬に悪影響で細胞を委縮させる(論文はこちら)

脳にとって大きなストレスは、認識されていない曖昧な状態が続くこと。ストレッサーが特定されれば、大した問題ではないと気づける事も多いし、課題が特定されれば、解決への行動や誰かを頼ることもできる。そうなれば、自分の注意の矛先をCentral Exective Networkによって自分で調整できるようにもなりやすい。
それでも集中できなければ、目の前の仕事や勉強に「想い」がない証拠だ。

他人への期待をしてしまい、ストレスを感じる場合。(例:仕事を依頼した部下のアウトプットが自分の期待値より低く、ストレスを感じる)

予測値や期待値に差分が生まれるのは、相手に原因があるのではなく、自分に原因があると考えた方がいい。

実際、これは難しいし、上記例でいえば、自分の依頼の仕方や部下のアウトプットの程度にもよる。ストレスを感じるのは、少なからず期待を抱いているからであり、部下の能力向上を期待するのは悪くないが、自己のコミュニケーション能力を見直す柔軟性を併せ持つくらいの余裕は欲しい。

海馬はエピソード記憶を保存し、海馬と繋がる扁桃体は感情記憶を保存する役割を担う。何か出来事があると、脳はその出来事も記憶するが、付随する感情の記憶も保存される仕組みになっている。海馬が扁桃体の上流にあると言われるのは、感情が発露されたあとに出来事を思い出すより、出来事を思い出したあとに感情が発露される方が一般的だからだ。

悪いイメージを何度も脳内で反芻すると、脳内の神経細胞の結び目であるシナプスの反応が強固になり、ますます嫌な感情が芽生え、増幅される。自分の悩みは、ホワイトボード上の1点の黒い点に過ぎない。世界にはそんな悩みすら贅沢に思える環境で日々生きている人々が大勢いる。渦中にいれば、そんな風に思うのは難しいが、ストレスを客観視し、矮小化する術は知っておいて損はない。

ネガティブな出来事の記憶を引き出しているときにポジティブな感情の発露を促すことで、ネガティブな出来事の記憶にポジティブな感情記憶の配線が作られ始める

自分にとって安心できる人、信頼できる人に辛い経験を話し、具体的なアドバイスはもらえなくても、話しただけですっきりした経験は誰にでもあるだろう。これは紛れもない感情の書き換え作用のひとつ。誰かに話す事で、あなたのポジティブな感情を誘発させるケースはある。

・違和感、葛藤を大事にする

前頭前皮質の前側にvmPFCという部位がある。価値記憶を担う部位で、やろうとしていることと過去の記憶を関連づけるのが、この脳部位。やろうとしていることが、自分が大切にしていることとあっているのか、やってきたことと一致しているかをモニタリングしてくれる。

違和感は、見逃しやすい大切な情報を教えてくれる可能性がある。すぐに言語化することは難しくても、違和感の源泉の言語化を試みる事は、新たな発見を導く可能性を高めるだろう。
葛藤している状態が生まれるのは、興味があるからだ。

我々は、葛藤を歓迎できるようになった方がよく、葛藤状態を俯瞰的に捉え、この葛藤の末に大きな成長があると考えられるようになれば占めたもの。ストレスを力に変えられるようになる。

脳には、rlPFC(吻側外側前頭前野)という部位がある。前頭前皮質の中でも解剖学的に最先端部位に位置し、その機能は特に高等とされ後天的に活用する事によって育まれていく。

(rlPFCは)どのような記憶をどのようにパターン化して脳に刻み込み、処理するかをつかさどる脳部位である。自己にとって挑戦から成功や成長に目を向ける事で、挑戦に価値があることを、脳に刻む。そうした記憶をパターンとして学習されていくことで、不確かさドリブンの探索機能はさらに強化される。
新しい学びや仕事上での挑戦がもっとも効果的だが、普段読まない本に挑戦したり、普段は行かない店に挑戦したりするのも悪くない。自分にとって曖昧やカオスや未知が広がる世界に飛び込み、その時の回避反応を自ら俯瞰的に捉えつつ、それでも学びを得ようとする態度がrlPFCを少しずつ育んでいく。

・笑いの効用

笑いは、我々を強くする。笑いによってストレスによって付き合い易くなる

笑いの効果は、βエンドルフィンによるストレス緩和だけではない。声を上げて「はっはっはっ」と笑っているときは、息を吐くことが中心となる。後ほどご紹介するが、それによって副交感神経が役割を発揮し、我々を休息モードにしてくれる。

集中しているときに脳に何が起こっているか。

自分が好きで楽しんでいる状態で出る脳の化学物質は、βエンドルフィンである。βエンドルフィン自体は快楽物質だが、NAccという脳部位の活動も抑制する。NAccはドーパミンを放出するVTAを抑制する働きがあるが、βエンドルフィンが出ることでNAccが抑制される。したがって、ドーパミンが放出されやすい脳の状態になる。このドーパミンこそが、我々の集中力に影響する。楽しむことは、その物事に長く向き合わせるための脳の状態を導くのである。

のめり込んで何かをやっている状態では、注意の対象が好きなものに独占され、脳がストレッサーに注意を向ける余裕がなくなる。
「よく遊び、よく学べ」も脳にとっては違う仕組みで効果的な可能性がある。遊んでいると遊びに注意が逸れ、ストレス反応が弱まる可能性がある。さらに遊びを楽しむと、脳にβエンドルフィンがつくられる。その状態のまま学びに移行すると、βエンドルフィンが効果的に作用し、ドーパミンがつくられやすい脳の状態となり、集中力や学習効果を高める脳の状態を期待できる。

・セロトニンを誘導する

βエンドルフィン以外に、ホメオスタシス的に脳の状態を整えてくれる脳内化学物質にセロトニンがある。セロトニンは脳や身体の反応として自動的にもつくられるが、意識的にも誘導できる。
セロトニンは単調リズム性運動に反応して合成される。イライラすると貧乏ゆすりをしたり、指をカタカタしたりする人が多い。それらの行動には、セロトニンを合成してストレス反応を抑える意味がある。そう捉えると、貧乏ゆすりをしている自分や他人が「ストレスに対して適応反応しているな」と客観視できる。また、意図的に単調リズムを刻むことも考えられる。
ガムを噛むなど咀嚼による単調リズム性運動も効果がある。種類は違っても、昔から人類には多大なストレスがあったと思う。それに適応していくうえで、リズムを伴う運動は我々をストレスから解放し、ストレスに対して冷静に向き合わせることで学びに昇華させてきたのではないだろうか。
ある人は、自宅に帰ってキャベツ3玉をひたすら千切りにするという。その単調リズム性運動によって、落ち着きを取り戻すという。これもセロトニンの作用がありそうだ。有名な経営者に、皿洗いをすると落ち着く人がいる。皿洗いという単純作業もリズム性運動として考えられる。無心で集中することで、セロトニンが誘導される可能性は高まる。もちろん「なんでこんなことしなきゃいけないの?」と不満を溜めながらやると、不満の思考に神経回路が使われ、セロトニンを合成する脳部位の活動は弱まる。結果として、不満によるストレスばかりが溜まる。単調で、それだけに集中でき、自分が心地よく感じるリズム性の動作を見つけると、セロトニンによって生活にゆとりの時間が広がるかもしれない。
セロトニンは朝につくられやすいので、朝日を浴びるのは効果的だ。3000ルクス以上の光量でセロトニンがつくられるという研究があるが、3000ルクスを超える人工光はなかなかない。

・副交感神経を優位にする

副交感神経は、我々にエネルギーを蓄えさせ、パフォーマンスを出すための準備をしてくれる。薄目になるくらいの光量を浴びる、ガムや飴を口にする、食事に集中する、泣く、深呼吸する等
身体と脳に働きかけて、副交感神経を優位にするのは効果的なストレスマネジメント。

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