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簿記を受けに行ったら人間としての尊厳を失いかけた

何から伝えればいいのか
わからないまま時は流れて2日

最初から説明していこうと思う。


「あ、今日の夕ご飯サバにしよ♪」くらいのノリで、「簿記受けてみよ♪」と思い立ったのは約3か月前。

数日後に長期治験も迫っており、時間があるのでちょうどよいと考えた。

会計仕事はもうコリゴリ、と感じている私がこの資格を今後どう生かすのかは謎だが、「日々頑張っています」という雰囲気を出さないと死ぬ病気を患っているので、受験を決意。


そうして入社直前にチラっと読んだテキストが、7年ぶりに目を覚ました。

【簿記3級 勉強時間】でググってみたところ、70~100時間ほどの勉強が必要らしい。
ざっくり1日1時間×3か月=90時間でOKだろう。
このどんぶり勘定、うまくいったためしがなくて、もちろん今回も勉強時間が足りなかった。

前日に鬼の形相で8時間勉強して、なんとか計75時間ほど勉強できた。

過去問を解いたら「クレジット売掛金」「税抜き方式」といった知らない顔ぶれが登場し浦島状態だったので、やはりテキストは最新版を使うのがいいようだ。


さて、受験当日。

受験者は約20人、年齢層は若め。商業高生っぽい子もいた。

問題はオーソドックスな仕訳問題と、商品有高帳を完成させる問題。合計試算表作成問題と、文章を作る穴埋め、決算整理後の残高試算表作成問題と、難易度はそこまで高くなさそうだった。

これならよほどの事態が起きない限り大丈夫だろうと、意気揚々問題に取り組む私。


話はまったく関係ないようでいて大ありなのだけど、私は最近「蓄膿症」になってしまった。

なってしまった、というか、おそらくずっと昔からそうだった。

鼻が詰まり喉に痰が絡んでいる感じがして、息苦しい。ぼんやりする。
口呼吸気味でたまに嫌な臭いがするし、頭は常に重く目も痛い。
あと鼻声。

過去何度か「蓄膿症……?」と思ったことはあったけれど、「いや、黄色いハナが出ない!」という1点だけを拠りどころに「自分は蓄膿症じゃない!」説を主張し続けてきた。

なんのことはない、もうバリバリに蓄膿症だった。
で、3か月を目安に治療が始まった。

メイアクトMSという抗生剤と、カルボシステインという鼻や痰を出しやすくする薬、それらの副作用で下痢になるからと乳酸菌入りの整腸剤。

これらをせっせと朝昼晩、飲んでいる。

「食後」と言ってるのに寝る直前に「おっと忘れてたぜ」と飲んだり、服用した直後におにぎりを食べてみたりとまあ雑なものだが、欠かさずに飲んでいる。

この日の朝は忙しく、朝は抜いてとりあえず薬だけを飲んで出かけた。

空腹に薬を入れたのがいけなかったのか、会場が寒かったからなのか原因はわからないが、試験開始から30分ほどが経ったころ異変はやってきた。

キュ~~~グルルルルゴォォオォ……

!!!!!!!

ストッパかなんかのCMに起用されるんじゃないかっていう腹の音。
お腹がすいたわけではなく、ヤバめな音。

んんんん!?
そう、数日前より「整腸剤効いてるのか?」と疑問に思うときは多々あった……が、効いてない!
いや、効いていてこのレベル。

恐ろしいのは腹痛がまったくないのに、なんか出るやもしれん、という気配があること。

???「屁です!」

いいや、おまえは絶対違う! 断じて違う。

そして私の脳内は、「売掛金が800,000……」という情報と「トイレに行きたいよ!」という欲望が混在し始めるのである。

だから「1,200,000+600,000=4,550,000」なんて意味不明な計算ミスもやらかす。
なんだこれ、ありえないだろ。


いや、ありえないのは計算ミスではない、私の腹だ。
トイレというワンクッションを挟みたくとも、一度退室したら戻ってこれないらしい(当たり前だが)。
だからもう下腹部に全集中した。全集中の呼吸。

そういえば兄が以前、

「全集中・ニンニクの呼吸、壱の型」ブッ!!!

とかいう下品しか詰まってない技を披露していたが、いかんいかん、思い出し笑いで弛緩すると大変なことになる。

それにしても架空の試算表を完成させたところで何になるのだろう? 私の人生に何の得があるというんだ。
そんなことより今ここで粗相をしたら死ぬ。社会的に死ぬ。

28歳無職なんて、すでに社会的に死んでいるも同然の私をまだ殺すのか? 死体蹴りか? 〇痢だけに。埋葬騒ぎだよ。

私はこの二十数年の人生で、「物心ついてからう〇こを漏らしたことがない」ということくらいしか誇れるものがないのに、その唯一さえ奪うのか? 許さねえ!! 許さねえ!! 許さねえ!!

何の前触れもなく唐突にやってきて、私の尊厳すべてを奪おうとする。許さねえ!

私は内心で怒り狂い、困惑と苦痛でドンドコドンドコと脳内に太鼓を響かせていた。

未払法人税等34万円んんんん!!!!! ドンドコドンドコ!!!!


ところで私は、「真顔で道に迷える」という特技を持っている。
旅先で全然違う道を歩いていても、それをおくびにも出さず、しれっとした顔で歩き続けて唐突にUターンしたりする。

正反対の電車に乗っても、素知らぬ顔で次の駅で下車したりもできる。

会社員時代も、
上司「やだ~、この道いつも迷っちゃうのよね~。次右だっけ? 直進だっけ?」
私「右っすよ(知らね)」

こんな調子だった。
表情の乏しい顔なのである。

そんな私なので、内心「なまはげ柴灯まつり」のような珍事が繰り広げられていても、平然と簿記試験を受けることができた。

万が一にも履歴書を書く機会があったら、特技欄には「真顔で便意を我慢できます」って書くつもりだ。

言わなくても大丈夫だと思うけれど、もちろん何ひとつ問題はなかった。
机上の消しカスまで集める余裕さを見せて、颯爽と退散。

その足でトイレに駆け込んだ。
本当にもう、やつは突然にくる。やばい、真のKYってああいうのを言うんだろうな。

生まれ変わって小田和正になれたら「Ben・iは突然に」って歌をリリースするわ。

とりあえずこれからも「物心ついてからう〇こを漏らしたことがない」を誇りながら生きていこうと思う。

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