チャットボットブームも一段落!カスタマーサポートの自動化に取り組む『前』に気をつけるべきこと4選
こんにちは。いつもカスタマーサポート関係の記事を書いているカラクリの小田です。
本記事は、『CS HACK Advent Calendar 2021』の12/08の記事として書いています。
普段は、カスタマーサポートの自動化まわりや、チャットボット等のAIソリューションについてnoteを書いているのでよかったらぜひ。
本日は、ここ3年くらいブームとなった、チャットボットなどのコールセンターのAI活用・自動化などについて、たくさんの失敗や少しの成功体験を積んできた弊社の知見を、これからコールセンターのDXや自動化に取り組もうと考えてらっしゃる方向けに、『テクノロジーを活用した施策に取り組む前に』整理しておいたほうがいいことを4つほどシェアさせていただきます。なにかの参考になると嬉しいです。
(1)流行りのテクノロジーに飛びつく前に整理すべきこと4選
たくさんの失敗から学んだこと
弊社カラクリが、カスタマーサポートの自動化ソリューションの第一弾であるチャットボットをリリースしたのが2018年2月でした。
当時は、チャットボットブーム真っ只中で、『とにかくチャットボットを入れたいんです』『精度の高いチャットボットで、顧客からの問い合わせを削減したいです』という顧客からの問い合わせが非常に多かったです。
弊社も問い合わせをどんどん自動化していき、コスト削減に貢献していこう!と、サービスを磨き込んでいきました。実際に、顧客からの問い合わせは自動化ができた部分もあり、コスト削減に寄与することができました。
おかげさまで、そのような顧客企業様から、『コスト削減はいったん達成したので、次はもっと事業に貢献するために売上や利益に直結する施策をやっていきたい』というような相談を受けるようになってきました。顧客企業からの要求のベクトルが変わった瞬間でもありました。
弊社としては、『ぜひ!』ということで、一部のお客様と、『コンタクトセンターをコストセンターからプロフィットセンターにしよう!』と意気込んで、様々なデータ協力などをいただき、鼻息荒くサービス開発・サービス改善に取り組み始めました。
すると、『問い合わせをしてくれるカスタマーの、問い合わせを削減するようなアプローチ』は、『売上・利益貢献』が達成できないどころかマイナスの影響が出ているかもしれない、というとんでもない現実にぶち当たってしまうことになりました。
今まで、『コスト削減』が、サービスの価値提案のコアに置いていた弊社には衝撃の事実でした。
なぜコスト削減だけのアプローチが、売上・利益貢献にネガティブな影響を与えるのか?
顧客ロイヤリティ協会が提唱するように、利益貢献にはサービス・リカバリーの機能が非常に重要であり、効果的であるということがわかっています。
不満を抱えた人の不満を解消することで、再購買や継続利用につながる、というデータです。
これは、サービス・リカバリー・パラドックスとも呼ばれ、『パラドックス(矛盾)』という言葉の通り、『不満を経験させて、それを解消するほうが、不満を経験しないことよりも結果的にLTVが上がる可能性がある』ということを示唆しています。
不満を経験させない方がいいのにこしたことはないことに異論はないと思いますが、不満解消体験の母数が、大きくなればなるほど、企業にとってのチャンスが大きくなり、売上や利益・LTVに貢献するということになります。
さらに、もう一つの事実として、顧客のほとんどは、困っていても問い合わせをしてくれないサイレントカスタマーです。
口を開けて待っていても、ほんの一部の人しか問い合わせをしてくれません。
コスト削減にフォーカスしたアプローチは、顧客の問い合わせを減らすことに重点を起きますので、不満解消体験を増やすためには?=顧客の問い合わせを増やすには?という問いは設定してませんでした。そもそもほとんどがサイレントカスタマーなのにも関わらず、問い合わせをしてくれる人の数を減らすようなアプローチをしていたのです。
『企業の効率化は、顧客にとっての苦痛』という表現もありますが、効率化だけを追い求めると、間違った方向に突き進んでしまうことを身を持って経験することとなりました。
本当に必要なのは、『問い合わせを減らすには?』と、全く逆の『問い合わせを増やすには?』という問いの設定だったのです。
2つの戦略と、それに紐づく4つの論点について
『問い合わせを減らす』と、全く逆の『問い合わせを増やす』ということは、当時の常識と真逆の考え方だったので、正直、いきなり受け入れてもらえる雰囲気ではまったくなかったですw
そこで、共感いただけるお客様と一緒に、地道にデータで証明していく活動を、1年半くらい前からスタートしました。数値で証明しつつ、その数値をさらに改善していくために必要なマインドセットや、組織、テクノロジーとはなにか?を、現在進行系で追い求めています。
現時点で、重要な論点を4つほどにまとめることができたので、今回、このようなnoteを書かせていただきました。前置きが長くなりましたが以下が概略です。
チャットボットやコールセンター・コンタクトセンターにおけるAI活用においては、CX(顧客体験)については、論じられるケースが多いです。
しかし、CX(顧客体験)をよりよくしていきたい!という思いはありつつも、『顧客は誰で、どんな困りごとを抱えている?』という点を理解しないまま、チャットボットなどのツールの導入だけに議論が終始するケースがよくあります。
結果として、間違った解決策・ツールの選択をするケースが非常に多いなと思っています。(弊社も間違っていたので、大きな声では言えませんが)
それらの要因として、①顧客理解の不足、②サポートシステム全体の設計図がない、というのが大きなハードルとしてあり、そこを整理しない限り、うまく課題設定ができないと感じています。
さらに、DXにはCX(顧客体験)だけでなく、現場で働くSVさん、オペレーターさんなどのEX(従業員体験)がキーになります。CX(顧客体験)の改善のために新しいツールは入れたが、運用は現場が泣きながら死にもの狂いでがんばるって尻拭いをする・・・というのをよく見てきました。また、テクノロジー活用をする場合、カスタマーサポート部門だけで物事が解決できるものではないケースが多く、関係部署と一緒に活動をしていく必要があります。③部門間連携の不足というハードルを超え、新しいオペレーションを回すために最適化していくために、④人材の評価・育成の仕組みが古い、というハードルを超える必要なあります。
CX戦略の不在:顧客理解の不足
CX戦略の不在:サポートシステム全体の設計図の不足
EX戦略の不在:部門関連系の不足
EX戦略の不在:人材の評価・育成の仕組みが古いまま
という4つの論点に、自社なりの方針をつくることが重要という結論に現時点でたどり着きました。
4つについて、それぞれ簡単に細く説明をさせてください。
(2)無自覚に起きている『顧客理解の不足』が致命的な間違いを起こす
こちら、コールセンター・コンタクトセンターで、主な対象としている顧客は誰ですか?の整理です。
問い合わせをしてくれるカスタマー
困っているカスタマー(問い合わせをしてくれるカスタマー + サイレントカスタマー)
このどちらに定義するのか?で、対処すべき顧客像が大きくことなってきます。
よくコールリーズン分析や、問い合わせをしてくれたカスタマーの対応満足度調査をしたりしていますが、顧客分析をそこだけに閉じると、困っているカスタマーの全体像は見えてきません。
残念ながら、問い合わせをしてくれるカスタマーと、サイレントカスタマーの不満内容・意見・要望は、完全一致するわけではないということが、弊社の取り組みでも明らかになっています。
しかし、それは悪いことばかりではありません。ある企業では、『今、問い合わせの9割は電話でくる。だから、顧客は電話での解決を望んでいる。』という理解のもと、『企業としてはデジタル化をしたいと思っている。ここに顧客の期待と、企業の思惑のギャップがある』とアタマを抱えてらっしゃる企業様がいらっしゃいました。しかし、新しく別部署から来られたリーダーの方が、『顧客は電話での解決を望んでいる』というのは本当か?という仮設を検証するために、『問い合わせをしないサイレントカスタマー含めて、すべての既存顧客』を対象に、『どのようなチャネルで、どのような問題解決の支援を求めますか?』とサンプリング調査したところ、多くの顧客は『デジタル上で自己解決したい』『仕方なく電話している』という結果が出ました。顧客の期待と、企業の思惑にはGAPなどなかったということが判明し、デジタル投資へ踏み切った事例もあります。
顧客像が違う、ということを踏まえて、設計していかないことには、ゴール設定も違えば、課題設定も間違う、、、ということを私達は痛感しました。
貴社のコールセンターは現状どちらでしょうか?また、どちらを目指すべきかでしょうか?
どちらの選択が正解、不正解ではないと思います。『自分たちはどちらを目指すか?』という議論なしに、安易にテクノロジー導入などはしないようにしましょう。
(3)個別最適と全体最適のバランスを取るには『サポートシステム全体の設計図』が必須
こちらは、部分最適に陥らないために、しっかりと全体の設計図を描きます。
チャットボットと、FAQを別々のシステムを導入して、それぞれ別々の担当者が運用しており、ソフトウェアのコストも運用負荷が高まっている
チャットボットと、有人対応チャネルの分断が起きて、情報が引き継がれておらず、カスタマーにたらい回しの体験を提供してしまっている
有人チャット対応で、個人を特定した対応ができず、ほとんどの質問に答えることができないオペレーション体制になっている
などの問題が、部分最適に陥った際に起きがちな事象です。
正直、使っているソフトウェアや基幹システムなどは企業ごとに異なるため、企業毎に整理するしか道はありません。
弊社ではワークショップ型で、企業様と一緒に『サポートシステム全体の設計図』を描くことをしていますので、ご興味がある方いらっしゃたらお声掛けください。※画像をもとに、みなさん各自でやってもらっても問題ございません!質問ありましたら、お気軽にぜひ。
(4)カスタマーサポートのDX、デジタル活用は、『コールセンターの部門だけでは達成できない』という現実
こちらも、わりと根深い問題かなと思いますが、部門間連携なくして、テクノロジー活用はできないので、関連部門(情報システム部門や、マーケティング部門など)と、共通のビジョン・目的を握るような活動や根回しに時間とリソースを使いましょう。
実はチャットボットなどのライトなツールは、コールセンター部門だけでも導入ができるのですが、導入後の拡張する際に、データ連携やシステム連携などに課題が広がった際に詰むケースをよく見ます。
サイレントカスタマーに対して施策を実行する、となった場合は、データ連携・システム連携は必須ですので、事前に連携を試みましょう。
具体的には、
CX(顧客体験)を改善していきたいから、一緒に協力してくれませんか?顧客の行動データをCS視点で分析して、問題の洗い出しをしたいので、ぜひ手伝ってほしいです!
オペレーションフローにおける、顧客情報管理がネックで、顧客対応の時間と工数がかかってしまっています。改善することで、カスタマーの問題解決までの時間、工数、ともに削減できそうなので、投資計画について相談させてもらえませんか?
などの、『事業を成長させたい』『顧客体験をよりよくしていきたい』という部門全体の共通目標・共通ビジョンを掲げた上で、さらにCS視点のエッセンスを加えた議論ができれば、部門連携は乗り越えることができます。
(5)いいところは残して、さらに伸ばすべきところを伸ばすような『人事・組織戦略』が必要
カスタマーサポートの設計図に合わせて、オペレーションフローが変更になることが予測されるケースが多く、それに対応した役割やスキルの定義も同時に実施しておきましょう。
さらに、そのような人材をどのようにアサインするのか?という点もまとめておくといいと思います。既存のメンバーの教育、別部門からの異動、新規採用や外部パートナーの活用など、状況に応じた施策案も具体的にまとめておくといいと思います。
社内で実現する場合、現状の評価の仕組みや評価制度で機能しそうかどうか、という点もチェックしておくといいと思います。
よくある論点は以下のようなケースです。
電話対応に加えて、有人チャット対応を開始する。その際に必要なスキルセットと、現状のメンバーの親和性はどれくらいあるか?
RPAの活用を開始するが、保守運用はどの部門でどれくらいの工数を見込んでおくか?また、障害が発生した場合の人員は誰が担当するか?
KPIを応答率から、解約防止数に変更する。その場合、人事評価項目は現状のままでいいか?KPIの変更に伴い、成果報酬に近いようなインセンティブ設計は必要ないか?
人事制度や評価制度は簡単に変更できるものではないですが、矛盾点が発生しそうであれば、運用やマネジメントでどのようにカバーするかのイメージは持っておいたほうがいいと思います。
(6)まとめ
いかがでしたでしょうか?
テクノロジー検討の前に考えることが多すぎる!と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、これらのことを考えずにスタートすると、手戻りが確実に発生しますので、急がばまわれな感じで考えてもらったほうがいいかなと思います。
精緻に計画を立てるというよりは、イメージを膨らましておく、くらいでいいかかなと思います。何か質問やご相談があればいつでもメッセージください。(TwitterやFacebookでお待ちしています)
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