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日本ナンパ紀行

以前、世界ナンパ紀行というものを書いてみた。

海外のナンパは、旅先の思い出なだけになんかいい感じに記憶に残るが、

国内のナンパはそうもいかない。

国内でナンパされることは私はあまりないが、

振り返ってみるとなくもない。

ミニスカートにロングブーツが流行った頃、
ウキウキとそんな格好で渋谷に行き、
待ち合わせで友達を待つ。

すると、

『おいくらですか?』

とか、

『あの、〇〇さんですか?』

とか、

知らぬ男性に声をかけられる。


どうも、娼婦とか、出会い系の何かとかに見えるらしい。

残念だ。残念すぎる。

私は流行りのファッションを楽しみたかっただけなのに。


そして地元の町に戻り、夜の商店街を歩いていた時。



『おい、寿司食いに行くぞ』




なんと、フラフラと自転車に乗ったおじさんが話しかけてきた。

えっと、
えっと、


え?これはナンパ?


私は動揺した。

おじさんだからではない。

寿司だったからでもない。







そのおじさんが、
友達のお父さんだったからだ。







そのおじさんは、時計屋さんだった。

電池交換に行くと、時計に囲まれた小さな店内で、手際良く電池を替えてくれた。プロの手作業は見ても見飽きない。

年に一度くらいだけど、母の代わりに行ったり、ほんの数回、その手際が見たくてお店に行っていた。


そんな時計屋のおじさんが、である。


自転車に乗って、ブーツで足早に歩く私と並走をして、

え?寿司だ寿司。
行くか?駅前にあるだろ?


とご機嫌に声をかけている。


私は笑うのを堪えて、自らを名乗った。
息子さんの同級生です、とも。


おじさんは

ええ??そうなのー?!

と決まり悪そうに笑い、チャリでスーーっと去っていった。


後日この話はその息子である友達といい笑い話になった。


そんなおじさんが、昨年亡くなられた、と別の同級生から聞いた。


ナンパされてたよね?おじさんに。

それもご縁だからさ、伝えておくよ、と。



一番微笑ましいナンパのおじさん。
あっちで可愛いお姉さんと寿司食べてるかな。



なんか、おじさんの優しさが、このお話のおじいさんととても被ったので。思わず書きました。

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