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【Bitter&Sweetな恋愛映画4選】

「恋愛映画」と聞くと何を思い浮かべるだろう?胸を弾ませるときめき、二人の間に流れる甘いひと時、人生において最も輝く瞬間…恋の素晴らしき面を思い浮かべる人は多いと思う。事実、日本でも「キラキラ映画」なるジャンルが存在するほど、恋とは人にとって輝かしいものなのだ。

いらすとや恋愛①

その一方で、恋愛は、相手とのすれ違い、裏切り、別れ…という苦い面も持ち合わせている。ここでは、そのような恋の甘い面と苦い面を描いてる恋愛映画を4作品紹介していこう。

【ブルーバレンタイン】上映時間:112分、製作国:アメリカ

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「トラウマ恋愛映画」の代表作として有名な本作。「観たらトラウマになる映画」というテーマで語れば、必ず名が挙がるといっても過言ではないだろう。事実、映画評論家の町山智浩さんの『トラウマ恋愛映画入門』内でも、本作が表紙&紹介もされている。

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主演は、『ドライヴ』(2012)、『ラ・ラ・ランド』(2017)、のライアン・ゴズリングと『テイク・ディス・ワルツ』(2012)、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2017)のミシェル・ウィリアムズ。本作は、あるカップルが誕生するまでの過去と破局を迎えそうな現在を交互に描いている。恋愛というのは、成就するまでが一番盛り上がる&楽しいというのは周知の事実。この恋愛の最も甘い部分と、別れという最も苦い部分を交互に見せていく構成が見事。全てがキラめいていたあの時と、全てが色あせて見える今は、まるで、恋愛の理想と現実を見ているかのよう。観る者の心を揺さぶり、ひたすらに落ち込ませてくれる事必死だ。それに拍車をかけるのが二人の演技なのだが、デレク・シアンフランス監督による撮影エピソードが凄い。当初、監督は本当に二人の関係の変遷っぷりを撮ろうと試みて、カップルになるまでの撮影を終えたら、実際に数年後に撮影をしようとしたとの事(実現はできなかったが)

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しかし、寝起きのシーンでは、役者を本当に眠りにつかせたり、橋の場面では、主演の二人に別々の指示を与えた事で、ライアン・ゴズリングが橋から飛び降りようとしたり(もちろんアドリブで)と徹底的にリアルスティックな演出にこだわっている。その演出が功をそうしてか、二人の演技はまさに迫真と呼ぶに相応しく、ミシェル・ウィリアムズはこの作品で、アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされた。恋愛の酸いも甘いも知りたければ、この作品をまずお勧めしたい。ただ、鑑賞後は気持ちが落ち込む事も覚悟して臨むこともお忘れなく。

【テイク・ディス・ワルツ】上映時間:116分、製作国:カナダ

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お次は、結婚生活5年目の若い夫婦に訪れる転機を描いた物語だ。主演は前述した『ブルーバレンタイン』(2011)に引き続き、再びミシェル・ウィリアムズ。共演は、『ナイト・ビフォア 俺たちのメリーハングオーバー』(2016)、『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』(2020)のセス・ローゲン。この映画は、恋愛映画であると同時に、人生の教訓を学べる哲学的映画とも言えるだろう。結婚して5年目になるマーゴとルーの夫婦。子供はいないが、喧嘩もなく穏やかに過ごしていた二人。しかし、ある時、マーゴは仕事先で若い男性ダニエルと運命的な出会いをしてしまう。

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一言でいえば、妻と若い男の浮気物語なのだけど、この映画からは、ただの浮気話だけでなく、いつまでもときめきを追い求めていたい女性の性も感じ取ることができる。(敢えて女性と限定したが、『ブルーバレンタイン』と合わせて観たら、よりそれを感じた)結婚生活に問題もなく、セス・ローゲン演じるルーも、完璧でないけど、申し分のない夫だ。しかし、マーゴ自身は、この生活にどこか物足りなさを感じている…『しあわせに鈍感なんじゃない さみしさに敏感なだけ』というこの映画のキャッチコピーだけども、このコピーは、マーゴの事を上手く言い表してるのかもしれない。マーゴは、恋のときめきをいつまでも夢見てしまっているのだ。だからこそ、ダニエルに徐々に惹かれていってしまうのだ(もちろん、マーゴと出会うダニエルがとても魅力的&意識せざるをえないシチュエーションという事もあったのだろうが)しかし、安定した生活に物足りなさを感じる気持ちと、いつまでもときめいていたいという気持ちは誰しも持ち合わせているものではないだろうか。だからこそ、マーゴの行動も共感できてしまうのだ。

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そして、この映画が、素晴らしいのは「その後」を描いてる点。むしろこの終盤にこそ、サラ・ポーリー監督が最も伝えたいメッセージが表れていると、筆者は思う。それが形に表れてるのが、映画の終盤で、ルーの姉がマーゴに対して放つ言葉だ。この言葉は恋愛を通り越して、まさに人生の格言と言えるだろう。どんな言葉かは、ぜひ映画を観て確かめてほしい。また、「その後」のマーゴの佇まいと表情もよく観て欲しい。

【アニー・ホール】上映時間:93分、製作国:アメリカ

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恋愛映画の名手、ウディ・アレン監督の1977年の作品にして代表作。公開から40年以上経った今も、登場人物の着こなしなどから、「お洒落映画」として広く知られており、『POPEYE』はじめファッション雑誌の映画特集では、必ずといって良いほどこの作品が挙げられる。その最も大きな所以は、ダイアナ・キートンのファッションと言えるだろう。その人気は非常に高く、ダイアンの着こなしは、「アニー・ホール・ルック」と呼ばれ、アパレルブランドでも本作をテーマにしたコレクションが発表されている程だ(↓の写真は、「THE NERDYS」の18SS COLLECTION)

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むろん、この作品が時を超えて長く支持されるのは、ただお洒落なだけだからではない。愛の変化とすれ違いは、恋愛の普遍的なテーマであるし、別れた後も相手の事を想う気持ちは、観る人の多くが共感するだろう。ウディ・アレン演じるアルビーがスクリーン越しに観客に語り掛けるという、「第四の壁」を壊す演出や、アニメーションを取り入れる演出はとてもユニークで、この作品はアカデミー賞最優秀作品賞含む、数多くの賞を受賞&ノミネートされた。劇中のアルビーの「“関係”というのは、まるでサメだ。常に前進していないと死んでしまう。」という台詞はまさに名言。本作も甘いというよりは、むしろほろ苦さを覚える恋愛映画といえるだろう。

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養女による性的虐待で、目下、干されている状態のウディ・アレン監督だが、最新作の『A Rainy Day in New York』が、今夏、日本で公開される事となった。アメリカでは、反対運動を受けて公開見送りになってしまった作品だが、ティモシー・シャラメ、エル・ファニングという二大若手スターが出演してる本作(ちなみに両者とも、この作品に出演した事を「後悔してる」との発言が見受けられるのが残念…)。何にせよ公開が待ち遠しい。それまでにコロナ騒動が落ち着いてる事を願うが…

レイニーデイ・イン・ニューヨーク


【エターナル・サンシャイン】上映時間:108分、製作国:アメリカ

エターナルサンシャインポスター画像

最後に紹介したいのは、一組の男女が織りなす不思議なSFラブストーリー映画『エターナル・サンシャイン』だ。主演は、『マスク』(1995)、『トゥルーマン・ショー』(1998)のジム・キャリーと『タイタニック』(1997)、『愛を読むひと』(2009)のケイト・ウィンスレット。この映画、そのファンタジックな雰囲気とキュートなビジュアルから、おすすめ恋愛映画などで高確率で名が挙がる作品でもあるが、実際は、見た目以上に人を選ぶタイプの作品だ。

エターナルサンシャイン②

というのも脚本を担当しているのが、一筋縄ではいかない物語を作るチャーリー・カウフマンだからだ。変な映画として知られているスパイク・ジョーンズ監督の『マルコヴィッチの穴』(2000年)や自身が監督をつとめた『脳内ニューヨーク』(2009年)など、彼が関わる映画はどれも癖のある不思議な作品となっている。

マルコヴィッチの穴

そんな彼が今作では、脚本を担当しているのだから、この映画もただのラブストーリーになる訳がない。物語は、あるカップルが出会って恋に落ちる所から始まるのだが、実はこの二人、以前も付き合っていた。しかし当人たちはかつて付き合っていたことは忘れている。実は、破局を迎えた二人は、お互い「特定の記憶を消す」手術で相手の事を忘れてたのだ。このように一癖ある話を、時系列を弄った構成で見せるので、正直、一見しただけだと、物語の全貌は掴みづらい。その為、SNSなどで感想を見ると、分かりづらいためハマらなかったという声もよく見かける。(特に時系列を弄った演出が苦手な人はこの映画は合わないかも)しかし、ラブラブだった時と、関係が悪化していく姿をパッチワークの如く見せる演出は、二人の関係性の変化をよく表していると言える。また、同じ間違いを繰り返しながらも惹かれあってしまう人間の不思議というテーマも、人間の性を描いているようで面白い。

エターナルサンシャイン①

監督のミシェル・ゴンドリーはMV出身という事もあり、普通に撮ったら奇抜にしかならないであろう物語を見事にポップ&ファンタジックな雰囲気に仕上げている。ケイト・ウィンスレットの髪の毛の色が劇中で何度もカラフルに変化するのも何ともキュート。そして二人が選んだ結末にも注目してほしい。筆者は何とも人間らしい選択だと思うのだ。他の3作に比べると、苦みは少ないが、決して甘いだけではない人間のやるせなさを感じ取れる作品だ。

いかがだっただろうか。甘いだけではない映画という事で挙げさせてもらったが、興味を持っていただけたら、是非観てみて欲しい、ではまた。

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