【EUフィルムデーズ2022】『オーナーズ』感想【チェコ映画】
欧州連合(EU)加盟国の映画作品を一堂に集めて上映する映画祭「EUフィルムデーズ」。今年で20回の節目を迎えるユニークな映画祭で、東京はじめ京都や広島と全国各地で開催されている。8月7日までオンライン配信もされており、その中の1本『オーナーズ』を鑑賞した。
筆者がこうした映画祭の作品をチェックするのは、漫画や音楽でいうところの「ジャケ買い」と同じ感覚に近い。内容をよく知らない状態で観た映画が面白かったら喜びもひとしおだし、そういった作品は忘れられない作品となる。加えて映画祭に出品されている作品はその後、劇場公開されることも少ない。なので、こうした映画祭の作品を観るのは、まさに「一期一会」の出会いなのだ。
そういう意味で、今回観た作品は当たりだった。今年はEU映画祭の作品は2作品しか観れなかったがそれでも満足。今回の記事では『オーナーズ』の感想を述べていきたい。
【感想】
物語はアパートの一室、住人達が集まって会議が開かれる場面から始まる。片付けるべき議題は多いようだが、住人たちの横槍もあり、なかなか話が進まない。開始10分もすれば観客の多くが察するだろう、これはそういう映画なのだと。
本作は会議室を舞台にしたワンシチュエーション作品だ。曲者だらけの住人達による毒っ気たっぷりの会議の様子が描かれる。会議をすすめたい夫婦の思惑とは裏腹に、全く話が進まない姿は観てるこちら側までもどかしい気持ちになってくる。
出てくる住人は癖が強い人物ばかり。やたら体裁やルールにこだわる住人、何でも昔は良かったと口にする住人、何にでも口を挟み進行を止める住人など、彼らによって会議は一向に進まない。本作はチェコ映画だが、劇中のような状況、似たような人物は日本にもいるだけに観ていて共感を覚える人は多いだろう。
全く進まない彼らの会議とは逆に、すっかり映画に引き込まれ97分という上映時間もあっという間だった。エンディングで明かされる住人達の裏の姿もこれまた恐ろしい(水道代のことをあれだけ言っていたおばさんもだが、ゲイの青年を散々避難していたお爺さんが読んでいる雑誌…)ブラックで不謹慎な内容なだけに人を選ぶ作品だが、好きな人にとってはたまらなく好きだと思う。
少し調べたら、元々もは舞台劇ということで納得。チェコの歴史的背景を揶揄したような台詞などもあり、チェコに詳しい人ならより趣深く味わえるのだろう。映画祭はこういう作品に出会えるから巡るのをやめられない。
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