見出し画像

『アイリッシュマン』を観て、改めてマーティン・スコセッシ監督を思う。

MARVEL映画に対する批判的コメントで、何かと話題に挙がっているマーティン・スコセッシ監督。

マーティンスコセッシ画像

そんなスコセッシ監督の最新作『アイリッシュマン』11月27日(水曜日)からNetflixで配信される。それに先駆け一部全国劇場で、11月15日から上映されるとの事で、先日観てきたぞ。

アイリッシュマンポスター画像

製作年:2019年 製作国:アメリカ 監督:マーティン・スコセッシ

【I Heard You Paint House、その意味は】

舞台は第2次世界大戦後のアメリカ。実在したヒットマン、フランク・シーラン。
晩年の本人の回想という形式をとりながら、当時の社会情勢、マフィア同士の抗争など裏社会に生きた者たちの生き様が描かれる。
本作は、フランク・シーランの晩年の告白に基づいたノンフィクション作品『I Heard You Paint House』が原作となっている。
ちなみに原作タイトルの『I Heard You Paint House』家を塗る=壁を血で濡らすという意味で、殺し屋を雇う事のスラングの意味。

アイリッシュマン原作本

【超豪華キャスト陣の共演】

本作の一番の魅力は何と言っても、豪華キャスト陣の共演だ。
名優ロバート・デニーロアル・パチーノの共演、ジョー・ペシという三人を同じスクリーンに並んでるのを観るだけでも感慨深かった。
ジョー・ペシは本作の出演を了承するまでに、何と50回ほと断ったというのだから凄まじい。また、ロバート・デニーロとアルパチーノの共演は『ヒート』(1995年)以来、24年ぶりというのも見どころだ。
恐らくこの3人の共演をスクリーンで観れる機会は、これが最後だと思うと少し切なくもなってしまう…
3時間29分という長丁場は正直身構えてしまうが、とにかくキャストが豪華なので、ダレる事なく観ていられたぞ。

デニーロとアルパチーノ

【本作を一言で表すなら、ジジイ版『グッドフェローズ』だ】

主要人物が3人という事、盛り上がる前半と、徐々に落ちぶれていく後半との落差。
本作を観ながら筆者は「これはグッドフェローズじゃないか!」と思っていた。
『グッドフェローズ』は、1990年に公開されたマーティン・スコセッシ監督の傑作。
思えば、あの作品も裏社会の人間の生き様を描いていたし、実在の人物を題材としている。
あの作品でも感じたマフィアの怖さは健在で、本当にポンポン人が殺されていく。ここまで死と背中合わせの生活、いくら良い暮らしができても筆者は御免だ…

グッドフェローズ

そんな中で、特に印象的だったのは、フランクの殺し方。
とにかく挨拶をするかの如く、あっさりと人を殺すのだが、その手口がとてもスマート。
思わず『ジョジョの奇妙な冒険』第5部のプロシュート兄貴のこの明言を思い出してしまったぞ。

プロシュート兄貴

また、この時の撮り方も長回しでとにかく格好いい。
劇場で観ながら、思わず鳥肌が立ってしまった。

アイリッシュマン殺害画像

【全編に漂う哀愁が切ない】

本作で、筆者が魅力的に感じたポイント、それが全編に漂う哀愁だ。
序盤こそ感じさせないものの、物語が進むにつれ、どんどんと濃くなっていき、終盤は胸を締め付けるくらい、ただただ切なかった。

とにかく本作は登場人物が多い、とにかく人が多すぎて中盤からは、筆者は名前を覚えることを完全に放棄してしまったくらいだ(しかし、特に問題はない)
面白いのが、脇役の登場人物達は登場するとともに、その生涯の終え方が文字で表されるのだが、その死因のほとんどがロクなものがないという点。
ほどんどの奴が頭に銃弾を喰らって死んでたと思う。しかし、それはフランク含む主要登場人物達も同じ、彼らがどんな晩年を過ごすのかは、是非、直接観て確かめて欲しい。

アイリッシュマン晩年

またフランクと娘のペギーの関係性も、本作の大きなみどころ
といっても、2人が表立って過ごすエピソードは少ない。
ペギーが父親であるフランクを、事あるごとに見つめてるカットが挟まれるのだが、それが凄くいい。
2人の間に言葉はなくてもそれだけで関係性が伺える。
この演出も凄く良かった。

アイリッシュマンペギー

思えば、マーティン・スコセッシは『グッドフェローズ』、『カジノ』(1995年)、『ディパーテッド』(2006年)などで、『社会と暴力』を描いてきた。
そして、それと同時に組織のしがらみで生きなければならない男達の悲哀も描いてきたともいえる。

ディパーテッド

それは本作でも充分に描かれている。特にフランクが後半、直面するある場面は、この世界に生きる者だからこその苦悩とも言えるだろう。

アイリッシュマンフランクの苦悩

映画を観終わった後の充足感、スコセッシ監督、MARVEL批判でいろいろ言われてたりするが、その作品はやはり面白い。
観た後にこれだけの満足感が得られる監督、そうそういない。
やはり信頼できる監督だ。
スコセッシ監督は現在77歳、願わくばいつまでも新作を追いかけたい監督である。

読んでいただきありがとうございます。 参考になりましたら、「良いね」して頂けると励みになります。