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永遠のロマンチスト、岩井俊二監督『ラストレター』の感想

ラストレターポスタービジュアル

この映画を先に観た友人が、「映画を観たら新海誠にコメントを貰いに行った理由がよく分かる」と言っており、どういう事だろう?と思って観てみたが、なるほど、観終わると、確かにコメントを貰いにいった理由がよく分かる。ちなみにそのコメントが↓

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まさしく、この映画は新海誠の世界観に通じるものがあった。しかし、それ以上に岩井俊二監督の作家性にも改めて気づかされたので、それを記しておきたい。

【岩井俊二監督を改めて振り返る】

岩井俊二
出身地:宮城県仙台市
生年月日:1963年1月24日(57歳)
代表作:『Love Letter』、『スワロウテイル』、『リリイ・シュシュのすべて』、『花とアリス』etc…

岩井俊二画像①

アニメ映画化もされた『打ち上げ花火、下から見るか?上から見るか?』(1995年)に始まり、『Love Letter』、『スワロウテイル』、『リリイ・シュシュのすべて』と、90年代後半から2000年にかけては、岩井俊二という存在は、サブカル層にとってカリスマ的存在だったと思う。この頃は筆者も新作が出るたびに胸をワクワクさせながら観に行くのを楽しみにしていたものだ。
正直『花とアリス』(2004年)以降は、長らく作品を観てこなかったが、(フィルモグラフィーを見るとコンスタントに撮り続けいてはいる)、2016年の『リップヴァンウィンクルの花嫁』が大変な傑作だったので、今作も楽しみにしていた。

リップヴァンウィンクルの花嫁

岩井俊二監督の作品の特徴は何か?と言われたら、柔らかくファンタジックな映像と、可愛らしさと残酷さが同居した少女漫画的世界観だと、筆者は思っている。そして今作もまさしく岩井俊二の世界観全開の作品だった。

【文学青年の妄想とも思える場面も…】

この映画、先に言ってしまうと素晴らしかったのだが、同時に文学青年の妄想とも思える部分があった。
自分がかつて心の底から愛した女性が、別れた後も自分の事を思い続けてくれた、なんていくらなんでも男性にとっては都合が良すぎるとも思う

ラストレター場面写真①

「男性は『名前を付けて保存』、女性は『上書き保存』」とは、よく例えられている言葉だが、これは事実だよなぁ。
実際に、かつての女性を忘れられない男性の映画は邦・洋問わず、多くの作品を思いつくが、逆に男性を忘れらない女性の映画は全然思いつかない(探せばあるんだろうけど)
ただ、絶妙なキャスティングと監督の演出ゆえだろう。鑑賞中は全くそんな事を感じさせなかった。

ラストレター場面写真②

【新海誠監督との共通点と違い】

この作品を観て思い出した作品がある、それは、新海誠監督の2007年の作品『秒速五センチメートル』。

秒速5センチメートル

あの作品もかつて自分が愛した女性を忘れられない男性の物語だったが、この2作品は、過去の甘美な思い出からいつまでも逃れられない男性という点で共通する。
恐らく、新海誠監督も岩井俊二監督もどちらもこじらせた思春期を過ごしてきたんだろう。

しかし、新海誠が、自分がかつて愛した女性が自分の事を思っている訳がないと分かってるのに対し(だからこそ秒速5センチメートルはああいう展開なのだろう)、岩井俊二はそこを突き抜けていく。自分がかつて愛した女性が、自分を思っていくれているという妄想を見事に実現させてしまうのだ。恐らく岩井俊二は信じているのだ。
だからこそ、新海誠は岩井俊二の事を「ロマンチックな作家」といったのだろう。
筆者もそう思う、現実では起こりえない事を、映画で実現させる。
岩井俊二という人はどこまでもロマンチストな監督だ。

ラストレター場面写真③


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