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【都会女子生態観察】映画『ナミビアの砂漠』感想

何はともあれ河合優実に尽きる。

可愛さ、格好良さだけじゃない。
強かさや無邪気さ、弱さを含めた人間味ある人物として魅力に溢れていた。劇中、何かが起きる訳でないけど彼女の動きに見入っていた。

2024年製作/137分/PG12/日本

映画は都会に生きる女性の日常を通じて現代に生きる若者たちの姿を描いていく。

タイトルの『ナミビアの砂漠』の由来は、劇中にも登場するナミビアの砂漠に設置された定点カメラの映像からきているらしく、本作は「都会」という砂漠に生きるカナという女性の生態を観察するような作品となっている。(劇中でカナがナミビアの砂漠のLive映像を見ている姿は入れ子構造みたいにも感じた)

※↓が「ナミビアの砂漠」のYoutubeのLive映像。
最近だとアザラシの映像が話題となっていたけど、この映像も観ていて飽きない…

劇中で起こることは淡々としてドライ。
ドラマチックな演出やカタルシスを感じる瞬間は少なめだったため、そういう作品を期待すると肩透かしを喰らうかもしれない。

ただ日常生活のあるあるや人物同士のやり取りはとても面白く笑ってしまうような場面も多い。個人的には映画冒頭の目の前の友達より他人の会話内容が気になってしまうのはあるあるだと思ったし、寛一郎演じるホンダの風俗の下りは笑ってしまった。

監督は『あみこ』の山中瑶子。監督のインタビューで特に印象的だったのがこの二つの言葉。

「生きている過程、その延長に映画を作れたらいい」

「映画は社会を映す鏡だから、映画で描かれていないと、社会に存在しないということになってしまう

このインタビュー(下記にリンク先あり)は鑑賞後に読んだのだが、まさにこの言葉が反映されている映画だと思った。

カナが金子大地演じるハヤシに浴びせる「お前みたいなもんが作ったもんは毒だろう」という台詞は映画界の性加害問題を意識させるし、カナの「日本は少子化と貧困で終わっていくので今後の目標は生存です」という台詞も今の日本が直面してる問題で思わずハッとさせられる。

山中監督、自分の思ったこと、感じたことを実直に映画に落とし込んでいる方なんだろうと感じた。

しかし『時々、私は考える』を観た時にも思ったけど、普通に生きていくのって大変。

今の時代なんてSNS、スマートフォンの普及で肉体的にも精神的にも逃げれる場所がない。インターネットで世界が繋がった代わりに誰もが何かしらの意志表明を求められる。良くも悪くも人は繊細かつ過敏になったと思う。

こんな世の中で皆、何で普通に生きていけてるんだろうって思ったりするけど、実は皆素知らぬ振りして生きているだけかもしれないな。

この映画に登場する人もカナ含め変に感じたり滑稽な部分があるけど、これも傍から見てるからそう思うだけで、それが普通だよね。

正直カナには共感しづらいけど理解できる部分はある。

ハヤシ、最初ヤバい奴だと思ったし(引っ越し後の羽虫叩いてる場面とか)、カナとは結局別れるんだろうなと思ってたから、一緒にご飯食べる場面(自分からカナに声かけてるし)を観た時は何か安心したな。

人は選ぶかもしれないが(エンタメでもないから)自分には痺れた。
2回目も観に行きたい。

※金子大地さん、こういう役柄多いよなぁ

※普通に生きていくのは難しいよね…


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