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【因果は巡るよ】映画『ブレット・トレイン』感想【どこまでも】

9月1日より公開している映画『ブレット・トレイン』。新幹線で東京から京都まで荷物を届けることになった運の悪い殺し屋と、同じ新幹線に同乗した殺し屋たちとの騒動を描く。小説家の伊坂幸太郎による「殺し屋シリーズ」の2作目「マリアビートル」を原作にハリウッドで映画化した作品となる。

ブラッド・ピットが主演をつとめるほか、共演者に『キック・アス』のアーロン・テイラー=ジョンソン、『ラストサムライ』の真田広之ら豪華キャストが集結したことでも話題になった。監督は『アトミック・ブロンド』、『デッドプール2』のデビット・リーチがつとめている。

ミッドランドシネマ名古屋空港の9月4日の10:35の回で鑑賞。159席に対し7割程の埋まり具合。客層が幅広かった印象。

日本が舞台で主演がブラッド・ピットということで公開前から楽しみにしていた作品。デビット・リーチ監督の作品はこれまでも何本か観てきたが、安定して面白かったので安心していたが、今作も期待を裏切らない面白さ。

予告編やポスターからもうかがえるとおり本作はポップで軽妙。原作は読んでいないが、展開も意外性があり、この旅の顛末がどうなるのか最後まで読めなくて引き付けられた。

2022年製作/126分/R15+/日本

特に登場人物たちの関係性が萌えるので、ブロマンス好きには特にお薦めしておきたい。ミカンとレモンの殺し屋コンビの関係性にはグッとくるし、ラストの生き残ったメンバーが集結する様にも熱い。

作風はタランティーノ作品を意識したのだろうか?日常会話が多かったり時系列の弄り方からはそう感じたし、テンポの良さやスタイリッシュなアクションからはガイ・リッチー監督の作風も感じられた。

登場人物たちが偶然ではなくある因果によって集まっている点や、運命が物語の一つの軸になっている点なんかは、漫画の『ジョジョの奇妙な冒険』に通ずるモノも感じたな(少し調べたら伊坂先生の作品自体が運命論を題材に取り入れてるらしいので今作に限ったことではないんだろう)。

本作は豪華キャストの演技も本作の見どころの一つ。ブラッド・ピットはくたびれた役柄だが、年をとっても相変わらず格好良い。スター俳優なのに自分を前面に押し出さず(トム・クルーズやディカプリオだと彼らの映画になりがちな印象)共演者を引き立ててくれてるのもブラピの良さ。本作もブラピが主演だけど、他のキャラクターとのバランスが良いから殺し屋たちの群像劇として映画が成り立っている。

ミカン役のアーロン・テイラー=ジョンソンのコミカルな存在感も良かった。『キック・アス』の頃から見た目はすっかり変わったけど、『GODZILLA ゴジラ』や『TENET テネット』に出演したり話題作に出演し続けている印象。今作観ても思ったけど、アーロン・テイラー=ジョンソンも主張は激しくないけど、何でも器用にこなすタイプの役者だ。

後、真田さんの見せ場が予想以上に多かったのが個人的には嬉しかった。『モータルコンバット』もそうだけど、年齢考えるとあそこまでキレッキレのアクションをこなせるのが驚異的。今や名実ともにハリウッドで活躍する日本人俳優のトップと言えるだろう。

真田さん、今回は死ななくて良かった…

こういう日本を舞台にした作品の時に必ず話題に挙がるのが「ハリウッド映画における日本描写」。今作もポスターや予告編が公開された時点でSNSでは突っ込まれてたし本作の感想でもそこに触れてる人も多い。筆者もどんなもんかという気持ちで観たが気になるほどではなかった。

「東京から京都にいくのに何時間掛かってんの?」、「誰もいないバーがある車両って何?」とか突っ込み所は多数あるんだけど、そもそも映画自体がコミカルで漫画っぽい雰囲気なので、日本描写のズレはそこまで気にならない。

むしろ、マスコットキャラクターの「モモもん」とかは日本のゆるキャラを研究した感があって(絶妙に可愛さだけじゃないところとか)、日本への理解度はこちらが思っているよりも高いんじゃないだろうか(冒頭に出てくる看板も見た限り、日本語になってない看板はなかったと思う)。パンフレット内の伊坂先生へのインタビューでも語っているけど、ポップな作風にするために敢えてこうした日本描写にしてる部分はあると思う。

ということで、頭空っぽにして楽しめる作品を観るなら『ブレット・トレイン』お薦め。

ここからは映画の感想以外の話。映画が終わり、劇場が明るくなったので、さて出ようかと思ったら「触らないで下さい!」と女性の大きな声が。何事かと思って見たら、劇場通路で50代くらいの女性が後ろを振り返っている。すると後ろの方から男性の声で「誰がババアなんか触るかよ!」と。それに対して女性が「あなた、本当に失礼な人ですね!」と言い返している。
帰りかけていたお客さんも全員動きが止まっていて、劇場の空気が凍り付いていた。

その後、その女性が足早に劇場を去り、自分も劇場を後にしたのだけど、何があったのだろう?後ろから男性が連れの方に説明していた声らしきものも聞こえてきたのだけど、どうも女性の方が上映中(エンドロール中?)にスマホを触っており、それを注意しようとしたらしい。

本当に何があったかは当人同士にしか分からないけど、こういう場面に遭遇すると、せっかくの映画の余韻が吹っ飛んでしまう。多分、自分だけじゃなく当事者含む他のお客さんもそうだったと思う。マナー問題(今回は本当にそうなのかも分からないけど)って、注意の仕方とかトラブルに発展する可能性があるから本当難しいよな…と改めて思った話。



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