映画の不思議な魅力と映画好きについて思うこと
ツイッターの映画界隈である議論が話題となっている。
「映画好きなら、ある程度の有名作品は抑えていて欲しい」という主旨のツイートに端を発したものだった。
要は「映画好きと名乗るなら、これくらいの作品は知っておいて欲しい(観てなくても良いから)」ということだ。
このツイートに映画好きが様々な反応をして盛り上がってた訳だが、このツイートを見た時、筆者は「ああ、またこの季節がきたな…」と思っていた。
というのも、この議論は今回が始めてではない。ツイッターは映画に限らず定期的に同じ話題がループするSNSだ。
下にツイッターの映画界隈で定期的に話題になることをまとめてみた。ツイッターやってる人なら一度は目にしたことがあるのではないだろうか。
もはや、このループは恒例行事のようなもの。ツイッターを始めた頃は「何で同じ話題が繰り返されるんだろう?」と思ったが2年経った今は何となく分かる。
ツイッターはあくまで自分の思ったことを呟く場所で解決に向けた議論をする場所じゃない(140文字しか打てないのも議論するのに向いてない)。意見の異なる者同士は平行線のままループしてるだけ。こうした話題が終わる事もない。
該当ツイートに対して、筆者の考えを述べておくと、映画に限らず「○○好き」と名乗るのに他人の許可はいらないと思う。自分でそう思うならそう。自己申告制で良い。
さらに言えば「映画好き」の定義を共有する必要もないと思う。正解・不正解を決める話でもない。各々の考える「映画好き」で良いんじゃないだろうか。
だからツイート主のように「これを観てなきゃ映画好きとは言えない」と思う人がいても良いし、筆者のように「自分が思えば映画好き」という人がいても良い。筆者が言えた義理でもないが、あのツイートに対し皆さん反応し過ぎな気もする。
(「そういう考えもあるか」で済む話とも思うけど、ツイッターがそういう場所なのか映画好きには熱い人は多いのか)
それにツイート主の考えに共感する部分もある。筆者も「映画好きかどうか」ではないが、似てることを思ったことがあるのだ。
前置きが長くなってしまったが、今回の記事で述べたかったのは「映画好きにも色々いるよね」という話だ。
どういうことか?
例えば筆者は映画好きなので、日常生活で自己紹介する時「趣味は映画です」なんて名乗る訳だ。そうすると「私も映画好きですよ」と名乗る人に出会う機会は少なくない。同じ趣味を持つ人との出会い、通常なら嬉しいはずだ。
ただ、これで「あ、同じ趣味なんですね!わーい!」となったことは少ない。よくよく話していくと、同じ映画好きでも「あ、この人が観てる映画は自分が好きな映画の系統とは違うな…」と気付かされるが多いのだ。
もちろん、映画好きに会えたのは嬉しい。嬉しいが深いところまでは分かち合えない微妙にズレた感覚。こうした経験、映画好きならあるあるだと思うがどうだろう?
だが、これは仕方ない。何故なら映画の本数は莫大だ。毎週何かしらの新作が公開され名作も無数に存在している。映画を掘り下げようとしても圧倒的な本数に追い付かない現実がある。
その中で「映画好き」と言っても、SF、コメディ、ホラーにスプラッター、ドラマ映画などジャンル好きに分かれるし、ハリウッドや邦画、韓国映画、ヨーロッパ映画など国別でみてもキリがない。これだけジャンルが多様化している中で、同じ映画の趣向を持つ人と出会うのは凄く難しいことなのではないだろうか。
これは今回の盛り上がったツイートにも通じることなのではないだろうか。「映画好きと名乗るなら、これくらいの作品は抑えておいて欲しい」とあるが、これだけ有名・傑作が無数にある中「これくらいの作品」という基準を決めるのは難しいとも感じる。
考えてもみると映画は特殊なコンテンツだ。毎週何かしらの新作が公開されている。同じようなコンテンツだと音楽が近いのかもしれないが、映画は1作品観終わるのに掛かる時間も長い。映画館で観ようと思ったら往復する時間も含まれるから作品によっては1日の大半を費やす場合もある。
しかも観終わるまで面白いかどうか分からないのに1900円という安くない金額を支払う。映画鑑賞とはある意味ギャンブルのようなものだ。
そこまでして何で映画が好きかなのというと、やはりそこに金額や時間以上の感動があるからだ。
また皆色んな考えはあるし、ズレもあるだろうけど同じ映画好き同士仲良くしたいものだ。(この記事のような映画好きあるあるや、あなたの考える「映画好き」などあれば、コメントなとで反応頂けるとありがたいです)。
【余談】
少し話題は逸れるが「映画好き」の議論の中で「映画を仕事にしてる人なら有名作品を観ている」という主旨のツイートを見かけたが、そんなことはない。
一時期、映画宣伝の仕事をしてたが、職場で有名作品を観てない・知らない人はザラだった(自分がいた会社は邦画を担当していたせいか芸能やエンタメ好きな人が多かった印象)
全員映画好きだったと思うが、話題作を観に行くようなライトな映画好きが多かったな。週2~3本観るようなコアな映画好きはいなかったと記憶している。配給や製作は分からないが映画宣伝業はそんな感じだった。
映画好きということでかつて「映画好きだった人」のことを思い出したことがあったので、残しておきたい。
映画宣伝業時代、ある先輩と現場が終わり駅まで向かう帰り道。当時『ジョーカー』が話題となっていたのでその話を振った時のこと。
自分「そういえばジョーカー観ました?」
先輩「いや、観てないな。最近映画全然観てないんだよなぁ~」
自分「休日何やってるんですか?」
先輩「お酒飲んで寝てる」
この一連の会話は印象に残ってる。
というのも、この先輩はかつては、映画1本観るために地方から東京の映画館(ユーロスペース)まで遠征するくらいのシネフィルだったからだ。それが「今は映画を全然観なくなったんだな」と思ったことを覚えている。
ただ現実問題、映画宣伝業は多忙だ。イベントなどで土日のどちらかはほぼ潰れるし、自分の会社は終電ギリギリや逃すこともけっこうあった。
その中でたまに休みがあっても、掃除や洗濯、溜まってることを消化するために映画を観に行こうとは思えない。自分も映画宣伝の職に就く前は週2~3回、映画を観に行っていたが、宣伝業についていた時は月に2~3本に減った。
先輩が映画を観なくなった本当のところは分からない。単純に映画熱が冷めただけなのかもしれないし、たまたま観ていない時期だったのかもしれない。他に理由があるかもしれないし、こちらが勝手にあれこれ推測するのも失礼な話だ。
ただ、もしかしたらこうした忙しさの中で観に行かなくなったのかもしれないな…と思ってしまった。だとしたら映画が好きでこの世界に入った筈なのに皮肉だし同じ映画好きとして少し寂しくも感じたのだ。
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