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【運命の瞬間は雨とともに】映画『サタデー・フィクション』感想

太平洋戦争直前の上海で繰り広げられるスパイたちの攻防をモノクロ映像で描いた映画『サタデー・フィクション』

実は去年観た映画(ちなみに観たのはセンチュリーシネマで12月3日の11時の回)なのだが、感想を挙げ忘れていたので改めて挙げておく。

監督は『ふたりの人魚』、『ブラインド・マッサージ』などの作品で知られる中国出身のロウ・イエ
主人公ユー・ジンを演じるのは中国の名優コン・リー。日本海軍少佐・古谷を日本人俳優のオダギリジョーが演じる。共演に『よだかの片想い』の中島歩、トム・ブラシア、のパスカル・グレゴリーなどが名を連ねる。

この作品、日本での配給が決定したことを知ってから公開されるまで約4年。本当に長かった…コロナの影響もあって公開する側も大変だったんではないだろうか。

2019年製作/127分/G/中国

そんな本作は待たされた甲斐もあってかとても好きな作品だった。
雨の上海、緊迫した世界状況の中で繰り広げられるスパイ合戦と男女の淡い恋の行方。本作のジャンルを表すなら「ハードボイルド」。

くゆらす煙草、任務に生きる者たち、そして運命の瞬間が訪れる。
ハードボイルドな雰囲気にモノクロの映像が良く映える。そう、本作はビジュアルもとても良い。

舞台は1920年代だが建物も当時の時代のよう(パンフレットを読むと当時から存在してる建物をセットとして選んだとのこと)。そこにモノクロ映像が合わさってより時代感を引き立てている。
ハードボイルドな作品が好きな人ならチェックして損はないだろう。

キャスティングも良かった。コン・リー、オダギリジョーも良かったが、自分が特に惹かれたのはオダギリジョー演じる古谷三郎を護衛する梶原を演じた中島歩。スーツも決まってた格好良かった。

バイ・ユンシャンを演じたホァン・シャンリーも映画主演は初めてということだが可憐な存在感を放っていて良かった。

1920年代の上海のファッションが可愛い

本作の感想を見ていると「難解」という言葉を見かけるが、自分はどちらかというと「分かりづらい」という印象を抱いた。

説明描写や台詞はないので、誰がどういった立場でどういう関係性かわかりづらい。さらに当時の世界背景と各国の立ち位置もある程度は頭に入っておいた方が良いだろう。

最初こそ捉えにくいが映画が進んで徐々に全体図が見えてくると共に話も大きく展開していくのでカタルシスも感じられた。
ロウ・イエ、初期作品に比べ作風が変わったということで賛否もあるけど、自分は今のロウ・イエ監督の作品も好きだな。

ということで『サタデー・フィクション』。すでに公開は終了しているようなので気になる方は配信・ソフト化などの情報をチェックしてみてはどうだろう。


※映画の感想とは関係ないが、この映画の一つ前に観た映画『PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ』もスパイ映画で奇しくもジャンルが被っていた。

ハードボイルドな『サタデー・フィクション』に対し、『PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ』がヒロイック的な作風と対照的になっているのが面白い。

『PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ』も面白いよ!

※こちらはロウ・イエ監督の前作『シャドウプレイ』。この作品も大好き。


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