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ロウ・イエ監督『シャドウプレイ』を観て、あのお騒がせスターを思い出す。

11/23から開催した『第20回東京フィルメックス』
コンペティション部門の審査委員長を務める予定だったシュウ・ケイ監督が香港の民主化デモの影響で、開催二日前に来日不可能となるなどトラブルもあったが、(映画批評家のトニー・レインズ氏が急遽、審査委員長を務める事になった)、今現在は無事開催されている。
今回の東京フィルメックスのオープニング作品となったのが、ロウ・イエ監督の『シャドウプレイ』だ。
ロウ・イエ監督といえば、『ふたりの人魚』(2000年)が同映画祭の開幕年の最優秀作品賞を受賞し、『天安門、恋人たち』(2006年)で、天安門事件を題材にした事から、中国当局より5年間の映画製作禁止という処分を受けた監督でもある。
最近では『ブラインドマッサージ』(2017年)などが日本でも公開されている。
筆者自身は、ロウ・イエ監督の作品を実はそこまで観ていないのだが、性愛と孤独をテーマに、生々しい作品を撮る監督という印象を持っている。
今回の『シャドウプレイ』は東京フィルメックスのメインビジュアルとして使われてる↓の画に惹かれるものを感じ、上映を楽しみにしていた作品だ。

シャドウプレイポスター画像

製作年:2018年 製作国:中国 監督:ロウ・イエ

【製作費12億円!オープニングから掴みは抜群!!】

今作は、実際に中国で起きた事件を基に作られている。今作を観た時、「随分、お金が掛かってるな~」と思うことが、何度かあったが今作は実に12億円もの巨額の製作費が投じられている。ロウ・イエ監督の全ての製作費を把握してる訳ではないが、これは監督にとっても史上最高額なのでは。
ちなみに、その甲斐あってか本作は中国本土でロウ・イエ監督史上最高の興行収入を収めているとの事だ。

製作費を投じた分、アクションシーンも豊富な今作。
特にオープニングの暴動が起こる場面、次々と住人たちが集まっていく場面は、ドローン撮影の効果もあって、とてもスピーディーで迫力があった。
冒頭から、筆者の心はすっかり鷲掴みにされた。

【脚本は弱い、しかしそれを補って余りある魅力がある】

中国の都市再開発を巡るある事件を発端に、事件の謎を追いかける若き刑事と、事件の深く関わる事になる3人の男女。
実在の事件を基にしたという事もあるのだろう。正直、サスペンス作品としては2時間ドラマレベルだと感じた。恐らく、映画なり小説なりに日頃から触れている人なら、早い段階で、事件の真実には勘づくかも。しかも、129分の上映時間に対し、今作は謎明かしを丁寧に時間を割くので、そこら辺で退屈に思ってしまう人はいるかもしれない。
実際にレビューサイトなどでも、そこら辺を言及している人は多い。

しかし、筆者はそれを補って余りある魅力を本作に感じた。
一つはキャスト陣の演技力の高さ。
特に事件に絡む三人の男女の演技は観てて、引き込まれるものがあった。

シャドウプレイ③

明らかにイケメン過ぎて、1人だけ浮いている主人公のジン・ボーランも良い(何かに守られてるかの如く、格好悪い場面が不自然な程、ないのが面白い)

シャドウプレイ、ジンボーラン画像①

もう一つは演出力。
本作は、事あるごとに登場人物が当時を回想していくという形式を取っているのだが、前半の回想部分から現在へ立ち替わる場面は特に格好良い。
時間軸もカット割りも多用していく手法も賛否両論あるかもしれないが、筆者はとても好き。
総じて、物語はともかく、この映画の雰囲気が筆者好みだったので、一般公開されたら、2回目も観に行きたいと思っている。

【実はあの人が出演していたが…】

今作、製作から公開するまでに中国の検閲を通しているのだが、何と2年もの歳月がかかっている。
カットされてる場面も多く、今回のポスター画像の場面もカットされている。
それだけでも苦労が伺えるところだが、それより驚いたのが、ある人物の登場場面がことごとくカットされていた事。
実は本作で、私立探偵のアレックスという人物が出てきていたのだが、この人物、顔が全く映らない。鑑賞しながら、てっきりそういう演出なのかと思っていたが、実は全カットされていたらしい。

その人物とは…

エディソンチャン

この人物、そうエディソン・チャンである。

エディソン・チャンといえば、『インファナル・アフェア』で絶大な人気を誇り、『ダークナイト』にも出演するなど、一時期は世界的スターも有望視されていた俳優。
しかし2008年に、香港の人気女優たちとのハメ撮り写真が流出し、長い休養期間に入っていた人物だ。
この度、本作で正式復帰になるかと言われてたみたいだが、まだ世間は許してくれてないみたいだ…そして、中国当局恐るべしでもある。

ちなみに本作は2020年の2月頃にアップリンク系列で一般公開することが決定している。今回の機会に本作を見逃した方は、是非劇場で。筆者も2回目を見に行く予定だ。

シャドウプレイ②

#映画 #ロウイエ #シャドウプレイ #東京フィルメックス #アップリンク #エディソンチャン #ジンボーラン

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