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【岸部露伴のモデルはジョニー・デップ?】映画『ナインスゲート』

悪魔を呼び出せるという"禁断の書”を巡って怪事件に巻き込まれる男性の恐怖を描いたホラー映画『ナインスゲート』

監督は『ローズマリーの赤ちゃん』(1968年)、『戦場のピアニスト』(2002年)などで知られるロマン・ポランスキー
主演はジョニー・デップという『名監督×名俳優』の作品だ。

これまで観たことはなかったが、ある本でこの映画のことを見かけて興味が湧いた。

その本とは『ジョジョの奇妙な冒険』で知られる荒木飛呂彦先生の『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』

荒木飛呂彦先生が好き&影響を受けたホラー映画やホラージャンルを紹介する本で、荒木先生は『岸辺露伴』というキャラクターは本作に影響を受けたと語っている。

知らない方のために簡単に説明すると『ジョジョの奇妙な冒険』は「スタンド」という超能力をもったキャラクター達の冒険を描いた物語で、1987年から現在(2021年2月25日時点)まで、掲載誌を変えながら今なお連載が続いている人気漫画だ。

『岸部露伴』は4部に登場キャラクターするキャラクターだが、スピンオフで彼を主人公にした漫画や小説などが作られるなど、シリーズ屈指の人気キャラクターである。

去年の年末には高橋一生主演でドラマ化もされ、大きな話題を呼んだ。『岸部露伴』のことを知らない人でも『だが断る』というネットでよく使われる言葉を知ってる人は多いのではないだろうか。その元ネタがこのキャラクターだ。

映画とジョジョ好きな筆者としては「これは気になる」ということで鑑賞してみたわけだが、これがなかなか面白かった。

物語はジョニー・デップ演じる"本の探偵"コルソが「悪魔の本」の真贋を依頼されるところから始まる。世界に3冊しかない本を確かめるために、コルソはスペインやパリなど世界を旅していく。

主人公のコルソは業界でも評判の悪い男だがモラルやルールを守ることより自分の興味があるものに突き進む辺りは露伴のキャラクターと通じるものがある。こういう性格の部分が岸部露伴のキャラクターに取り入れられているのかもしれない(ただし、第4部の連載期間は1992年から1995年、本作の製作年は1999年なので、影響を受けてるのは本編後のスピンオフ作品からだと考えられる)。

ちなみにコルソは本を盗まれないため、劇中で常にショルダーバッグをかけているが、露伴も漫画家という職業柄、ショルダーバッグ常にかけている。偶然だろうが、この見た目の共通点も面白い。

冒頭で本作はホラー映画だと述べたがドッキリ演出やスプラッター描写などはほぼない。
それよりは劇中に登場するさびれた洋館や古書など雰囲気を堪能するゴシック・ホラーという印象のほうが強い。

コルソは行く先々で殺人事件に巻き込まれるが、この殺され方がいちいちユニークなのが面白いし版画が物語の鍵となるのも分かり易くて良い。

そしてコルソを演じたジョニー・デップ。最近はスキャンダラスなニュースばかりが聞かれるジョニー・デップだが、本作を観てあらためてその格好良さに惚れ惚れしてしまった。コルソは癖の強いキャラクターだが、ジョニー・デップが演じるからこそ洒脱な雰囲気の魅力ある人物となっているともいえる。
画面に出てるだけで目で追ってしまうのだから、やはり凄い役者だ。

しかし、コルソを岸部露伴に置き換えてみてみるとこの映画自体が、まるで岸部露伴の短編漫画のようである。

実際、2009年にルーブル美術館を題材にした『岸部露伴 ルーブルに行く』という物語は、ルーブル美術館に封印されている『邪悪な絵』を巡る話で、本作に通じる部分も感じられた。案外、荒木先生、本作から影響を受けているのかもしれない…なんてことも考えてしまった。

ということで、荒木先生の本を読まなければ、恐らく一生観ることのなかったかもしれない映画。こうした出会いで映画を観るのは新鮮だったし、また荒木先生のアイデアの源流に触れた気がして少し得した気にもなったのである。


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