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映画『ザ・バットマン』未公開シーン&続編情報について

※本作は『ザ・バットマン』の内容に触れています。未見の方はご注意ください。

3月11日から公開されている映画『ザ・バットマン』。大人気のアメコミキャラクター、バットマンを『クローバーフィールド HAKAISHA』(2008)、『猿の惑星:聖戦記』(2017)を手掛けたマット・リーブス監督が新たに映像化した作品である。

2022年製作/176分/G/アメリカ

興行収入は現時点で6億ドルを突破し、パンデミック期間中に公開された作品の中では第4位に位置付けるという大ヒットを記録している。日本でも動員50万人を超え、興行収入は10億円を記録する人気っぷりだ。

そんなバットマンだが、映画だけに留まらず、現実世界でも面白い仕掛けがされていたのはご存じだろうか。
劇中に登場したヴィラン、リドラーのサイト『www.rataalada.com』にて、次々と『ザ・バットマン』に関する新情報が発表されていたのだ。(現在は、ゴッサム市警によって押収されている)

一つは、リドラーを演じた俳優ポール・ダノが、リドラーを主人公に据えたスピンオフコミックを執筆するというもの。

『Riddler: Year One(原題)』というタイトルから察するに、
リドラーの1年目を描いた作品だと思われる。本国では10月刊行予定。

この情報も驚きだったが、今回公開された情報はさらに衝撃的だった。『ザ・バットマン』でカットされたシーンが公開されたが、その場面は、バットマンの宿敵であるジョーカーの登場シーンだというのだ。

これまでのジョーカーの中でも、最もインパクトのあるビジュアルをした新しいジョーカー。未公開シーンは5分程度だが、その存在感は圧巻の一言。
この未公開シーンはSNSを中心に話題になり、多くの人が様々な反応をしている。

筆者もいくつかのコメントを見かけたが、意外にこの場面の詳細や背景を知らない人が多いという印象を受けた。そこで、今回の記事ではこの未公開シーンについての情報と、『ザ・バットマン』の続編の情報をまとめてみた。

【カットーシーンの内容要約】

今回のジョーカーを演じたのは『ダンケルク』(2017)、『聖なる鹿殺し』(2018)のバリー・コーガン。これまでのジョーカーの中でも見た目がかなりパンチがあり雰囲気も恐ろしい。

カットされたのは、バットマンとジョーカーが会話を交わしている場面。2人は何を語っているのだろうか?ここでは会話の内容をまとめてみた。

まず、バットマンがジョーカーの元を訪れる場面から始まる。目的は連続殺人犯(リドラー)についてジョーカーに意見を聞くためだ。
この会話の際、ジョーカーは自分とバットマンが出会ってから1周年に当たると語っている。劇中のバットマンは活動を始めて2年目であることが明かされている。
このことからバットマンは活動1年目に何らかの形でジョーカーと出会っていることが分かる(恐らくジョーカーを捕まえたのもバットマンなのだろう)

次にジョーカーは、リドラーの犯人像について語る。
ジョーカーはリドラーについて「彼はパズルが好き」、「犯行は政治的ではなく、個人的な動機」と分析している。またリドラーがバットマンに対して並々ならぬ執着を持っていることも指摘する。

ジョーカーは、バットマンとリドラーの共通点について話しつつ、バットマン自身へ話を振ってくる。その場から立ち去ろうとするバットマンだったが、ジョーカーはバットマンのリドラーへの葛藤も見抜くのだった。

ジョーカーは『羊たちの沈黙』のレクター博士ポジション?

知性的な凶悪犯というキャラクターを世に産む出したレクター博士。
強烈なキャラクター像は後世の作品にも多大な影響を与えている。

一連の場面を見て思うのが、今回のジョーカーの立ち位置。ジョーカーのリドラーに対しての見事なプロファイリングっぷり(しかも全て的中している)多くの人が指摘しているが、このジョーカーの立ち位置はサスペンス映画の名作『羊たちの沈黙』(1991)のレクター博士を連想した。

マット・リーブス監督は、今回のジョーカーについて、サイレント映画『笑ふ男』(1928)のグウィンプレンをモデルにしていると語っている。『ザ・バットマン』のジョーカーは、生まれつきの病で笑いを止めることができないという設定でもあるらしい。

歴代のジョーカーに比べ、ひどく皮膚が爛れている原因については明らかにしていない。原作のエピソードの一つでは、溶解液に落ちたというものがあるがそれが原因の可能性もあるだろう。

映画『笑ふ男』(1928)より。ビジュアルは恐ろしいが、心は優しい青年

何故カットされたのか?

このジョーカーの登場シーン、かなりのインパクトと恐ろしさがあって素晴らしいと思うのだが、何故カットされたのか?
リーヴス監督いわく、物語上不要と判断したからとのこと。それどころか、その存在を丸ごとカットする案も出ていたらしい。

筆者も最初、この場面を見た時にこのジョーカーの場面をカットしたのは勿体無いと思っていが、改めて考えてみると、ジョーカーを出してしまうことで、リドラーの存在感が薄まるようにも思えた。

序盤に出てくるこの不良集団。何でジョーカーメイクなのかと思ったが、
ジョーカーが既に登場してるから感化された若者達という可能性が考えられる

それにジョーカーの会話内容は、映画全体を要約したものとも捉えることができる。プロファイリング内容はリドラーの犯人像を見事に言い当ててるし、立ち去る時にジョーカーがバットマンに投げかける台詞はバットマンの本質を突いている。

「お前は本当はリドラーの犯行を正しいと思ってるんじゃないか?被害者は殺されて当然と思ってるんじゃないか?」という問い掛けは、その後のバットマンもリドラーが同じ復讐者であり、まさにコインの表と裏であった展開を考えると、この会話で映画全体を説明し過ぎな気もする。
そう考えると。ジョーカーの場面を全カットしたリーブス監督の判断は妥当といえるのかもしれない。

【次回作の展望について】

大ヒットを記録したもあり『ザ・バットマン』の続編製作はほぼ確定していいるといえるだろう。
正式な製作決定のニュースは出てないが、プロデューサーによると5年以内(2027年)までには公開されるだろうと語っている。

では、次回作はどんな内容になるのだろうか?ここでは現時点まで判明している情報をまとめてみた。

次回作にジョーカーは出ることは確定していない

今回、未公開シーンが公開されたジョーカーだが、実は続編に出演することは確定していない。また、仮に登場させたとしてもメインヴィランにする予定はないとの情報もある。

そもそも今回、ラストシーンにジョーカーを登場させたのは、次回作への布石という訳ではない。リーブス監督によると、リドラーの一件が片付いてもゴッサムの脅威は去っていないということを観客に示唆するために登場させたということらしい。今回のカットシーンみたいにサブ的な扱いで登場する可能性はあるだろうが、次回作へ登場するかは現時点では未定だ。

仮に次回作のメインヴィランがジョーカーだとすると、『ダークナイト』(2008)と比較されるのは必至。そういう意味でもジョーカーをメインヴィランにするのは控えそう。

だが、リーブス監督は、現在進行中の『アーカム・アサイラム』のドラマでジョーカーが出演する可能性があるとも語っている。もしかしたら映画『ザ・バットマン』シリーズではなく、スピンオフ作品のドラマでその活躍を観る事ができるかもしれない。

ロビン登場の可能性は?

バットマンの相棒として知られているロビンはどうなのだろうか?
リーブス監督はインタビューに対し「多分、出ます」と判断がつかない回答をしているため、こちらも現時点では未定のままだ。

主演のロバート・パティンソンもロビンについて語っているが、その起用には拘りがあるらしく、ロビンは13歳でなくてはいけないらしい。またコミックの『デス・イン・ザ・ファミリー』が好きとも語っている。

『デス・イン・ザ・ファミリー』は2代目ロビンがジョーカーに殺されてしまうという内容。
日本だとプレ値がついてるので、再販して欲しい…

ロビンについて、筆者は続編で登場するのではないかと予想している。というのも今回の『ザ・バットマン』はミステリー、ハードボイルドな作風を意識して撮られている。通常、探偵役には助手役がつきものだ。シリーズでこの作風を貫くなら、助手的ポジションとしてロビンが登場するのは自然な流れではないだろうか。

現在までに言及されているヴィランについて

これまでのインタビュー等で、監督、出演者が言及しているヴィランの情報についてまとめてみた。

①ハッシュ:顔に包帯を巻き、トレンチコートを着ているヴィラン。過去の出来事からブルース・ウェインに恨みを抱いており、バットマンの正体がブルースであることも知っている。

数あるヴィラン達の中でもマット・リーブス監督は特にハッシュがお気に入りらしい。Twitter内でのQ&Aコーナーで、「バットバース(『ザ・バットマン』から派生した映画、ドラマを含むバース)に誰かヴィランを登場させるなら誰が良いか?」という質問に対し、「ハッシュ」と答えている。

『バットマン:ハッシュ 完全版』

ただし、この発言は次回作のメインヴィランがハッシュになる訳ではないとも付け加えている。ハッシュは映画化されてないヴィランであり『ザ・バットマン』の現実的な世界観にも合うと思う。

だが、ハッシュのブルース・ウェインに恨みと並々ならぬ執着があるという点は今作のリドラーと被る点もあるだけに、登場させるならある程度設定を変える必要があるかもしれない。

②Mr.フリーズ:末期患者の妻を救うために活動していた低温学者。事故の影響で体温を極低温に保たなければ死んでしまう身体になってしまったヴィラン。

Mr.フリーズと聞くと、シュワちゃんが演じたキャラクターを思い出す。
ちなみにロビンが出るなら、こちらの作品とも重なる…

ミスター・フリーズはSF色の強いキャラクターだけに、『ザ・バットマン』の世界観とは相性が悪いように思えるが、リーブス監督は、むしろそういったキャラをどう現実的に変えるかに興味があるようだ。

筆者が一番観てみたいのは、このミスター・フリーズ。妻への愛という動機もあるため、演出と脚本によっては『ザ・バットマン』の世界観にも映えそうな気がする。

③梟の法廷:フクロウを紋章にした闇の秘密結社。ゴッサムの歴史を裏から牛耳ってきた存在でバットファミリーを窮地に陥れる。

『バットマン:梟の法廷』より

こちらの『梟の法廷』シリーズを推してるのは、マット・リーブス監督ではなくロバート・パティンソン。ロバート・パティンソンは海外メディアの「続編のどのヴィランと戦いたい?」という質問に対し、「梟の法廷のようなものをやりたい」と答えている。

梟の法廷はミステリー、ホラー要素が強い作品だけに、今回のバットマンとは非常に相性が良いと思う。また、リブート後の新シリーズなのでそういう意味合いでも相性は良いかも。

ただ、少し思ったのが、今回のリドラーのビジュアルと梟の法廷に登場する梟を模した暗殺者達の格好が少し似てるような気がしないでもない。

丸っぽい形のレンズや全体的なシルエットが似てるような気もするが…

ということで『ザ・バットマン』。次回作がどんな物語になるのか?まだまだ不明なことだらけだが、今回の作品が凄く良かっただけに、次の作品にも期待してしまう。情報が入り次第、また記事を挙げていきたいと思う。

【参考にした記事一覧】

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