今だからこそ観たい!ストップモーション映画【お勧め14作品紹介】
ストップアニメーションアニメがきている。ハリウッドではストップモーションで撮られた『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』が『トイ・ストーリー4』、『アナと雪の女王』を抑え、第77回ゴールデン・グローブ賞で史上初の長編アニメーション賞を受賞し、日本では『PUI PUIモルカー』がSNSを中心に大ブームとなったほか、独学で1人の日本人クリエイターを中心に製作された『JUNK HEAD』が公開され話題となっている。
世界中でストップモーション映画の波がきていることは間違いない。今回の記事ではストップモーションのお薦め作品をいくつか紹介したい。存在は知っていたけど作品は観たことない、そんな人こそ是非目を通していって欲しい。
【ストップモーションアニメとは?】
そもそもストップモーションアニメとは何なのか?
アニメーションの表現方法の一つで実写映画ではSFXの一つとして用いられることが多い。手間の掛かる技法としても知られ、素材はクレイ、パペットなどがある。
日本だと『PUI PUI モルカー』、『ひつじのショーン』、『ピングー(PINGU)』などがストップモーション作品と知られている。
【ストップモーションの起源と歴史】
調べた限り明確な起源はハッキリと分からなかった(サイト、文献毎に違ったりする)。最初のストップモーションといえる作品も見つけることはできなかった。
ただし、ストップモーションの技法自体は、映画の黎明期から映画に取り入れられていたらしい。
ストップモーションの祖としては、1910年代からロシアとフランスで主に活躍したラディスラフ・スタレヴィッチという人物の記述が見られ、近年ではバレエ教師であったアレクサンドル・シリャーエフの人形アニメーション作品が1900年代にすでに作られていたことが判明している。
【ストップモーションの魅力とは!?】
ストップモーション作品はなにが魅力的なのか?理由を三つ挙げたい。
一つはコマ撮りだからこそのインパクト。普通だと流し見してしまうような映像もストップモーションだとついつい見てしまう。ストップモーション特有のカクカクした動きは人の目を引き付ける。
二つ目はハンドメイド感。ストップモーションで用いられるクレイ人形やパペットなどを用いた演出は、CGや手書きアニメーションには出せない暖かみがある。
三つ目は完成までに時間を要するということ。ストップモーションは上記でも述べた通り、とにかく制作に手間が掛かる。1日わずか数秒分の映像を撮影することしかできない、だからこそ作品を観た時に、その背景にある制作者達の努力を感じ取ることができそれが感動に繋がるのだ。
無論、CGや手書きのアニメーションも製作に膨大な時間を掛けていることは間違いないが、ストップモーションはその努力が観てる人に伝わりやすい技法といえるかもしれない。
さて、そんなストップモーション作品だが、素材が色々あるように表現が変われば、内容も大きく異なる。今回はストップモーションアニメをタイプ別に14作品紹介していきたい。
【日本が舞台となっている冒険劇】
ここでは冒険を題材にした作品、しかも日本をモチーフにした作品を2本紹介したい。どちらも海外で製作された作品だが、ハリウッド映画によくあるような「なんちゃって日本」として描かれた作品群とは一線を画す。
どちらも作品にも共通してるのは日本愛。作品からは作り手の日本への愛を感じることができる。
『KUBO クボ 二本の弦の秘密』
『KUBO クボ 二本の弦の秘密』は中世の日本を舞台に、少年の冒険と成長を描いた作品だ。製作したのはストップモーション製作会社の代表格でもあるスタジオライカ。本作はとにかく映像が素晴らしい。冒頭から『これストップモーションなの!?』と言いたくなるくらいの美麗な映像に見とれてしまう。
子供でも楽しめるであろう物語なので親子で一緒に鑑賞しても楽しいだろうし、豪華な声優陣や日本への敬愛ぶりなど見どころも多い。ストップモーションでとにかく面白い作品を探してるなら、まずこちらの作品をお薦めしたい。
ちなみにストップモーションの大変さを知りたければ、下の制作過程の映像を観る事をお薦めしたい。そして、これを見たら『KUBO』を観たくなること必至!
『犬ヶ島』
『ライフ・アクアティック』(2005年)、『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014年)などで知られるウェス・アンダーソン監督による近未来の日本を舞台にした作品。
市長の陰謀によって離島に隔離された犬達と、愛犬を探す少年と犬達の友情と冒険を描いた作品だ。ビジュアルに定評のあるウェス・アンダーソン作品だけあって本作も映像や構図が最高。
少年と犬達のどこかシュールでほのぼのとしたやり取りも微笑ましく、小津安二郎監督や黒澤明監督作品などからもインスピレーションを受けた日本描写も素晴らしい。ビル・マーレイやエドワート・ノートンなどのハリウッド俳優だけでなく「RADWIMPS」の野田洋次郎や村上虹郎などの日本の声優陣も参加している。
【胸を打つ!感涙必至の作品】
ここでは、見終わった後に思わず目頭が熱くなるであろう作品を3本紹介したい。これらの作品に共通するのは、人の手触りや温かみを感じられるストップモーションという技法が作品のテーマとマッチしているということ。ストップモーションだからこその味わいを楽しんで欲しい。
『ぼくの名前はズッキーニ』
不慮の事故で母を亡くした少年ズッキーニは孤児院に入ることになる。そこには何かしらの理由で親と離れ離れになってしまった同じ境遇の子供たちがいた。この設定からして切ないけど、彼等の切なくも心温まる交流は涙無くして観る事はできない。
本作を観終わるころには、彼等全員のことが愛おしくなっていることだろう。そして、クレイ人形を用いたストップモーション技法が見事にマッチしていることにも注目したい。クレイ人形ならでは暖かみのある表現が本作の雰囲気をより優しいものにしている。
『メアリー&マックス』
ニューヨークで暮らすアスペルガー症候群の中年男性マックスと、メルボルンで暮らす少女メアリー、ひょんな事から文通で繋がった2人の20年に渡る人生が描かれる
本作はビジュアルこそ明るめだが、内容はかなりシニカル。こちらの作品もストップモーションという技法が柔らかい印象を与えている。孤独な2人が巡る人生は諸行無常感すら漂うのだが、そのラストに胸を打たれることだろう。マックスの声を今は無きフィリップ・シーモア・ホフマンがつとめてる点にも注目。
『劇場版ごん GON, THE LITTLE FOX』
誰もが一度は聞いたことあるであろう新見南吉の「ごんぎつね」。名作童話を人形アニメーション作家の八代健志が新解釈を加えストップモーションアニメ化した作品の劇場版。
新たな解釈を加えた物語は、ごんと兵十の関係が際立っており、もはや別の物語のよう。クレイではなく木彫りで彫られた人形とセットの調和っぷりも絶妙。
海外の映画祭でノミネートされるなど、世界的にも高く評価されている本作。現時点ではソフト化などの予定は出てないため、情報が分かり次第、追記していきたいと思う。
【人間顔負け、動物達の大活躍を描いた作品】
ストップモーションアニメは、動物を主人公に描かれる作品が多いが、ここでは、もはや人間顔負けに動物が活躍するストップモーション作品を紹介したい。人間相手に全面戦争する作品や、人間社会を暴走する作品などバラエティに富んだ2本をどうぞ。
『ファンタスティック Mr. Fox』
『チャーリーとチョコレート工場』(2005年)、『魔女がいっぱい』(2020年)などの原作で知られるロアルド・ダールの「すばらしき父さん狐」をウェス・アンダーソン監督が映画化した作品。
頭が良いキツネと狡猾な農場主達との仁義なき戦いを描いた本作は、ウェス・アンダーソン監督のビジュアルセンスが炸裂。パペットによるコミカルなストップモーションと、ウェス・アンダーソン監督のミニチュア的世界観も見事にマッチしている。日本を舞台にした『犬ヶ島』と、イギリスを舞台にした本作とで見比べてみても違いが分かって面白いかも。
『映画 ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』
日本でも有名な『ウォレスとグルミット』からのスピンオフキャラクター、『ひつじのショーン』の初の長編劇場版。手掛けたのは、イギリスの老舗アニメーション制作会社「アードマン・アニメーションズ」。普段はイギリスの片田舎で過ごすショーン達がひょんなことから大都会に繰り出すという物語だ。
クレイで作られたキャラクター達たがらこそのコミカルさ&愛くるしさ!小さなお子さんでも楽しめる本作は、家族と一緒に観たい作品としてお薦めしたい。
【少し不気味?ホラーチックな世界観を描いた作品】
ストップモーション×ホラーと聞くと意外に思うかもしれないが、ホラーの演出でストップモーションを使用している作品はある。
実写だとエグく感じる表現もストップモーションを通じてだと、可愛らしさすら感じたりするから不思議だ。ここでは少しホラーチックで不気味に感じる作品を2本紹介したい。
『コララインとボタンの魔女』
『KUBO クボ 二本の弦の秘密』のスタジオライカの初長編作品。
ニール・ゲイマンによるファンタジー小説を『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993年)のヘンリー・セリック監督がストップモーションアニメで映画化した本作は、ストップモーションアニメ初の3D映画として作られ、3Dプリンタで作ったさまざまな表情の顔面パーツを入れ替える「リプレイスメントシステム」という革新的なアイデアが導入されている。
この目がボタンというビジュアル、実写だとエグくなりそうなところだが、ストップモーションによって子供でも観れるような柔らかい表現になっている。個人的にはジブリ作品が好きな人に特にお薦めしたい!
『マイリトルゴート / My Little Goat』
あの『PUI PUI モルカー』の見里朝希監督の東京藝術大学大学院の修了制作作品。詳しい内容と感想については下記の記事にまとめたが、童話『狼と七匹の子山羊』から着想を得た本作は、可愛さとグロが共存した傑作!最新作の『Candy Caries』を観ても思うが、里美監督の懐の広さが今後が楽しみになってしまう作品だ。
『ティム・バートンのコープスブライド』
結婚を間近に控えた青年ビクターは、ふとした間違いからコープスブライド(死体の花嫁)の指に結婚指輪をはめてしまったことにより、死者の世界に連れ去られてしまう…というあらすじ。
まるで冥婚を連想させるような内容だが、(ちなみに本作の元ネタはロシア民話とのこと)作品自体はティム・バートンらしいダーク・ファンタジーとして楽しむことができる。
映像があまりに美麗なのでCGアニメと思われるかもしれないが、これはデジタル・スチールカメラで撮ってデジタル処理を施しているから。不気味だけどどこか可愛らしい恋の行方を是非見届けて欲しい。
【意外?シュール、大人向けの作品】
「ストップモーションアニメ」というと、年齢問わず楽しめる作品が多い。だからといって、ストップモーション=子供向けと思うのは大間違い。ここではストップモーションを用いた難解・シュールな作品を2本挙げておきたい。
『アノマリサ』
仕事にも環境にも恵まれているが、周囲の人間の声が全て同じに聞こえたしまう男の孤独と苦悩を描いた物語。この作品、ストップモーションでありながら、R15指定となっている。(残虐描写がある訳ではなく、性的な場面が描かれているから)
かなり異色な内容で始めて観た時は、驚いたが、監督が『マルコヴィッチの穴』や『エターナル・サンシャイン』などの鬼才チャーリー・カウフマンと知ればそれも納得。すっきりというよりはどこか煙に巻かれるような物語はまさしくといったところ。そのクオリティは高く、アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされている本作。一筋縄じゃいかない奇妙な作品を観たい人にお薦め。
『ファウスト』
悪魔と契約してしまった男の運命を描いた本作。今回、紹介する作品の中で最も異色と呼べるのが本作。というのも、本作は他の作品と違い実写にストップモーションの技法を取り入れた作品となっているからだ。
強烈な作風ゆえに世界中に熱烈なファンをもつヤン・シュヴァンクマイエルが手掛けた本作は、ストップモーション技法だけでなく、人形劇などの演出も取り入れており、その世界観は唯一無二。観る人を選ぶことは間違いないが、その分、一度ハマったら、その世界から抜け出せなくなること必至だろう。
【これぞストップモーションの醍醐味!可愛さに溢れた作品】
ストップモーションの一番の醍醐味といったら、やはりキャラクターの可愛さを最大限に引き出すことだろう。手描きのアニメーションやCGでは描けないコミカルな動きが、観る者の心をどこかほっこりさせる。ここでは、そんなストップモーションでの可愛さが炸裂したキャラクターが登場する作品を2本紹介したい。ただでさえ、可愛いのにストップモーションによって、その魅力が倍増しているぞ。
『チェブラーシカ』
雑貨屋にいけば、必ずといっていいほど目にするチェブラーシカ。日本でもシリーズが作られるくらいの人気作品だが、元々はロシアのアニメーションということは知っているだろうか。本作はチェブラーシカの記念すべき1作目。遠い南の国からやってきたチェブラーシカの心温まる物語は、観てるだけでほっこりする。可愛さだけでなく、心身ともに疲れた時なんかに見ると、その世界観に癒されること間違いなし。
『こま撮りえいが こまねこ』
NHKの人気キャラクター“どーもくん”の作者として知られる作家・合田経郎によるストップモーション作品は、ものづくりが大好きなネコの女の子“こまちゃん”の日常を描いた心温まる物語だ。ストップモーションというだけでなく、どことなくチープな雰囲気にほっこりしてしまうことだろう。主人公のこまねこだけでなく『いぬ子』や、『ゆきおとこ』など可愛らしいキャラクター達にも注目だ。
【まとめ】
いかがだっただろうか、気になるストップモーション作品はあっただろうか。今回挙げた作品はほんの1例。それこそストップモーションは、長編だけでなく短編で面白い作品もネット上に沢山あるので(いずれまとめたいと思っているが)興味を持った人は探ってみるのもお薦めだ。