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ラオスに似合わない巨大駅舎。どこまでも中国式だった

バンコクからラオスのヴィエンチャンに向かった。正確にいうとラオス中国鉄道のヴィエンチャン駅である。2021年12月、ラオス中国鉄道が開通した。その列車に乗るためだった。開通から半年、ラオスへの入国制限がほぼ解除されてから1ヵ月である。駅までの交通機関など、まだ整っていないことも多かった。加えて列車の切符の買い方がはっきりしない。ネットで事前に切符を買うか、予約ぐらいはとっておきたかったのだが、それもうまくいかない。「これはもう、駅に行くしかない」。ヴィエンチャン駅に向かったのはそのためだった。そこでわかった切符の買い方などを含め、ヴィエンチャン駅出発までを伝える。


旅の期間:6月7日
※価格等はすべて取材時のものです。

 友好橋から直接、ヴィエンチャン駅に向かう


(旅のデータ)
コロナ禍前、ウドンターニーの空港からヴィエンチャンまではいくつかの方法があった。便数は多くなかったが、空港とヴィエンチャンのタラートサオ・バスターミナルを結ぶ国際バスを利用する人も多かった。しかし入国規制が緩和されてから日が浅く、僕が訪ねたとき、国際バス運行が再開されていなかった。しかし今回はラオス中国鉄道に乗ることが目的。しかし列車が出るヴィエンチャン駅は市内から14キロも離れていた。ウドンターニーからのラオス入国は友好橋。そこからビエンチャン市内へは20キロほど、さらに14キロ⋯⋯市内には入らず、直接、ヴィエンチャン駅に向かったほうが早い。僕もそのルートを選んだ。それぞれの運賃は各sightで紹介する。

タイ・ベトジェットエアの元気がいい


(sight1)

ドンムアン空港。セキュリティチェックを通過し、国内線の搭乗フロアーへ。飛行機の密度は戻っていないが、フロアーを歩く人の数や表情はコロナ禍前に戻った感がある。違いは⋯⋯マスクだけ? 減便や燃油代の高騰という悪条件が重なっているが、それほど運賃があがっていないことが助かる。
 
(sight2)

航空会社にとっては厳しい時期がつづいた。タイではタイ国際航空の倒産もあった。LCCでは長距離LCCのタイ・エアアジアXが経営破綻に見舞われた。さて、これから⋯⋯という時期だが、タイのLCC世界では、タイ・ベトジェットエアの元気がいい。ノックエア、タイ・エアアジア、タイ・ライオン・エアなどは横並びといった感じ。

ウドンターニー空港から国境までは200バーツ


(sight3)

ウドンターニー空港に着いた。このルートで何回かビエンチャンを往復している。ターミナルを出たところに乗り合いバン、ロットトゥーが待機していた記憶があるのだが⋯⋯。それらしき車は1台も停まっていない。コロナ禍の間に変わってしまったのだろうか。このリムジンサービスで訊いてみた。国境の橋まで200バーツ、約750円。こんなもんだったろうか。
 
(sight4)

出発は10分後。スタッフの案内で、ターミナル前の駐車場に行くと、乗り合いバンが待っていた。乗り込んだのは皆、タイ人。カウンターの前の椅子に座っていた人たちだった。ノンカーイの街まで行くという。運転手はかなりの老人。乗り合いバンの運転手にも高齢化の波が打ち寄せている?

(sight5)

国境はメコン川にかかる友好橋。ノンカーイの街から車で5分ほど。乗り合いバンは先に友好橋に寄ってくれた。しかしここで降りたのは僕だけ。以前はほとんどの乗客がラオスに戻るラオス人だった記憶がある。ぞろぞろとタイ出国のイミグレーションに向かったものだったが⋯⋯。本格的な往来まではもう少し時間がかかりそう。

友好橋はよく考えると複雑な橋?


(sight6)

友好橋のたもとにあるタイ側のイミグレーションで出国スタンプを捺してもらい、先に進んでいくと、待合スペースに。国境とは思えない開放感。やはりアジアの国境はいいなぁ、とぼんやりしてしまう。ここに橋を渡るバスがくるという。バスを待っているのはほとんどラオス人でした。
 
(sight7)

しばらく待つと現れたのがメコン川に架かる友好橋を渡るだけのバス。30バーツ、約111円。タイは日本と同じ左側通行。しかしラオスは右側通行。で、橋の上はどちら? タイとラオスの国境でもあるメコン川にはいくつもの橋が架かっている。右側、左側は橋によって違う。この友好橋は左側通行。橋の中央には線路が敷かれ、列車は通るときは通行止めになる。よく考えると、複雑な橋?

 
ラオスのイミグレーション、「ゆる~~~ッ」です


(sight8)

橋を渡り切るとラオスのイミグレーション。いつものように入国カードを書いてパスポートと一緒に渡した。女性の係官はパソコンでチェックして、パスポートに入国スタンプを捺そうかとしたとき、「あッ、忘れてた」といった表情で、「ワクチン接種証明を」といった。僕もすっかり忘れていて、鞄からとり出す。係官はそれを一瞥しただけで「OK」。「ゆる~~~ッ」。互いに笑顔を交わしてしまった。
 
(sight9)

ラオス中国鉄道の発車時刻も正確にはわからなかった。「ひょっとした乗れるかも」という思いもあり、直接、タクシーでヴィエンチャン駅に向かうことにした。距離は約25キロ。運賃は一律30万キップ、約2700円。高いがほかに手段はないと思っていた。後日、タラートサオのバスターミナルで調べると、1日1便、友好橋からヴィエンチャン駅に向かうバスがあった。運賃はたぶん100円台。出発は午後2時。このバスの時刻に合わせてバンコクを発つのが賢い旅行者なんだろうなぁ。しかしなぜ、駅をこんな遠くにつくったのだろう。市内ならなんの問題もないのに⋯⋯。その理由は次の写真でわかる?


どこまでいっても中国だった


(sight10)

「でかッ」。写真の人の姿と比べてほしい。ヴィエンチャン駅で、「まるで中国の駅みたい」と呆然。駅名もラオス語と中国語のみ。中国の駅は国の権威を全面に出す巨大さだが、それはラオスという小国には似合わない。ここまで中国なのか⋯⋯。鼻白む思いで、巨大駅舎を再び見あげる。 

(sight11)

切符売り場も中国式だった。中国の駅は日本と違い、改札口とは別の場所に切符売り場をつくる。ヴィエンチャン駅もまったく同じだった。そこには長い列。コロナ対策で切符売り場に入る人数を制限しているようだ。そこで考える。「中国なら、早くしろ、30分も待ってるんだ、という激しい声が響くだろうが、ここはラオス。静かに待つ民族」。1時間以上待っただろうか。すると後ろにいたラオス人が声をかけてくれた。「ひょっとして今日の切符を買うの? だったら職員にいいなさい。私たちは明日以降の切符だから並んでるの」。「そ、そうなんですか」。前にいた職員にいうと、「早く窓口へ行きなさい」。ラオス式と中国式が切符売り場で交錯する。
 
(sight12)

切符売り場に入ると時刻表が。ヴィエンチャン駅を出発する列車は、7時50分、9時、16時5分の3本。間に合わなかった。翌日の9時の切符を買った。運賃は17万2000キップ、約1548円。後でわかったが、ヴィエンチャン市内にチケットセンターがあった。しかしそこでの支払いはONE PAYのみ。ONE PAYは中国を中心にした決済システム。僕は利用していない。どこまで行っても中国だった。駅の窓口ではONE PAYも使えるのかもしれないが、現金も受けとってくれた。最初に市内へ行っても支払いができずに、結局、この駅にくるしかなかったことを知る。

激しいスコールが旅をラオスにしてくれた


(sight13)

さて、今晩はどうしよう。市内までは14キロ。きっと駅舎の場所も中国の指導があったのに違いない⋯⋯と文句をいいたくなる。トゥクトゥクの運転手に愚痴をこぼすと、「近くにゲストハウスができたよ」。そこがここ。1泊14万5000キップ、約1305円。これで明日の朝が少し楽になる。
 
(sight14)

部屋に入ると、外から激しいスコールの音。部屋の前でぼんやり眺めてしまった。雨季のラオス。その雨脚を眺めながら、「やっとラオスらしい旅になった」とひとりごちる。バンコクを発って、LCC、乗り合いバン、バス、タクシー。そしてヴィエンチャン駅で出合ってしまった中国。雨がラオスに戻してくれた。その雨の様子は7月20日アップのYouTubeで。
 
(sight15)

泊ったゲストハウスは食事なし。近くで探すと、1軒の雑貨屋。事情を話すと、「ママーぐらいしかないけど」と店のおじさん。ママーというのはタイ製のカップ麺だ。店の脇にテーブルと椅子を出してくれた。そこでビアラオとポテトチップ、そしてカップ麺。ラオスの静かな夜が周囲に広がっていた。
 
【次号予告】次回は7月22日。「コロナ禍のラオス旅 ラオス中国鉄道に乗りに行く」の3回目。ヴィエンチャンからルアンパバーンへの列車旅です。
 
 















新しい構造をめざしています。