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シェムリアップの床屋で耳掃除。ついでにキュウリミイラになる

カンボジアのシェムリアップ。背後からバシャバシャと水をかけられる水行(前号)が終わった。願いを唱える余裕もなかったが、なんだかすっきりした。これが水行効果? ついで⋯⋯というわけでもないが、耳垢をとってもらおうと思った。以前、シェムリアップの床屋で、耳掃除をしているところを見た。60歳代になり、気になっていることがあった。耳の毛である。ときおり、電車のなかなどで、耳の入口の毛がのびている老人を見る。自分はどうなっている? 鏡で見てもよくわからない。シェムリアップ在住の今永健太さんに相談すると、「やってくれるんじゃないですか。僕のいきつけの床屋に行ってみましょうか」。かくして、床屋の椅子に座ることになったのだが⋯⋯。

旅の期間:2月28日~3月1日

※価格等はすべて取材時のものです。

シェムリアップの大規模ホテルが岐路に立たされている

(旅のデータ)

シェムリアップのホテルは構造変化の予感。主に中国からの団体客を受け入れる大型ホテルが軒並み休業に追い込まれた。海外からの観光客がやってこれないのだから仕方のない。中規模のホテルや小さなホテルは、カンボジア人受け入れでなんとか生きのびている。カンボジア政府が入国制限を緩和し、さてという段階だが、大規模ホテルの雲行きが怪しい。再開しようとしても、水まわりや電気系統など、かなりの修理が必要らしい。2年間近く、まったく使っていなかったところも多い。その費用が捻出できないという。「中国とのビジネスはシビアー。収益も少なかった。これからは個人客や家族連れにシフトしていきたい」というホテルも多いとか。中規模以下のホテルの多くは営業している。観光再開へキャンペーンで格安料金を打ち出しているところもある。

カンボジアでは男もキュウリパック?

(sight 1)

耳の毛処理してもらえる? 案内されたのは、シェムリアップ市内のなにげない床屋。店内はほのかに冷房が効いている。先客の中年男性がひとり。おじさんに髪を切ってもらっていた。耳掃除は女性が担当するという。しかしいま昼食タイムで不在。待つことに。こういうタイプの床屋、日本では減少傾向。なんだか懐かしい。

(sight 2)

床屋の椅子に座って30分ぐらいまっただろうか。女性がふたり戻ってきた。耳掃除のほかにすすめられたのがキュウリパック。67歳の男がするか? すると、「シェムリアップでは男性もよくやりますよ。肌がつるつるになります。僕もやったこと、あります」と今永さん。カンボジアでは男もキュウリパックなのか⋯⋯。いま、思案中です。ここからsight5までは今永さんに撮影してもらいました。

キュウリミイラのようだった

(sight 3)

日本に帰ったら笑い者にされそうな気がしたが、キュウリパック、やってみることにした。僕は視界を遮られ、横になっているだけなので、いったいどういうことがおきているのか正確にはわからない。何回も顔を濡れティッシュのようなもので顔を拭かれ、クリームを塗り⋯⋯。なにしろはじめての体験なので、横になったまま緊張していた。この様子は、4月16日公開のYouTube「下川裕治のアジアチャンネル」で。(https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg)

(sight 4)

この写真を見せられたときは、一瞬、言葉が出なかった。耳許でキュウリをスライスする音、そしてにおいが流れてきたが、顔はこうなっていたとは⋯⋯。日本の家で、娘が顔にパックをしているところは何回も見たが、それよりずっと気もちが悪い。カンボジアのキュウリは日本のそれより大きいから? キュウリミイラのようだった。 

肌はたしかにつるつる。すっきり気分の13ドル

(sight 5)

キュウリを顔に載せたまま、耳掃除に移る。今永さんによると、担当の女性が代わったようだった。耳掃除はそれなりの熟練技なのか。こんなに多くの綿棒や金属製の道具を使っているとは想像できなかった。ときおり温められた金属棒の感覚もあった。耳垢がごそごそとよられていく感覚⋯⋯いいものです。これからシェムリアップにきたら、まずこれかな⋯⋯と考えていた。

(sight 6)

終わった。「水行」に次いで、再びすっきり気分。肌はたしかにつるつる。これから会う人は、きっと誰ひとり、「キュウリパックの後ですね」などといってくれないと思うが。かかった時間は1時間半ほど。料金は耳掃除とパックで13ドル。通常の床屋として髪を切り、洗髪。さらに爪も整えてもらうのがフルコース。20ドルってところか。シェムリアップの小金持ちのリラックスタイム? 街で会う男たちの肌は特別にきれいだとは思わないが。 

まだアンコールワットを見ていない

(sight 7)

街なかの食堂でカンボジア料理。鶏肉のショウガ炒め、やや苦めの葉のスープ⋯⋯。タイ料理に比べると、カンボジアのそれはおとなしい。ふたりで食べて4万リエル、約1200円。シェムリアップは外国人観光客が多いから、メニューも英語併記が多い。店員もそこそこ英語を操る。ストレスが少ない街だ。

(sight 8)

水行、そしてキュウリパックに耳掃除⋯⋯。それは2年ぶりのシェムリアップでの通過儀礼? いや、まだアンコールワットを見ていない。昔から世界遺産の遺跡より、シェムリアップの街のほうに惹かれるタイプの旅行者だった。しかしやはり⋯⋯。日が傾いてきた。時計を見ると午後4時すぎ。アンコールワットは午後5時をすぎると、なかには入れないが、外観を眺めることができる。再開発が終わり、道や歩道が整備されたシェムリアップの街を出発。

北九州からやってきた観覧車。昔、この下のフェミレスで待ちつづけていた

(sight 9)

国道6号線をまず、空港方面に向かう。コロナ禍前は、タイから陸路でシェムリアップに入ることが多かった。国境からのバスや相乗りタクシーはこの道を進んだ。センター部分は舗装されていたが、路肩はむき出しのラテライト。雨が降るとぬかるんだ。その路肩も歩道に変身中。シェムリアップの再開発はまだつづく。

(sight 10)

進んでいくと大観覧車「アンコール・アイ」が見えた。いちばん高いところからはアンコールワットもよく見えるとか。料金は12ドルとやや高だが。オープンは21年3月と新型コロナウイルス感染拡大と同時期という不運な星を背負った観覧車だが、なんとかコロナ禍を生きのびた。これは元、北九州のスペースワールドでまわっていたもの。2004年、イラクで殺害された香田証生さんの取材を進めていた。彼の同級生とスペースワールドに近いファミレスで会うことになっていた。しかしその同級生はついに現れなかった。「どうして皆、会ってくれない?」。この観覧車を眺めながら呟いていたことを思い出した。

たそがれどきサイクリング。無料でアンコールワットの外観だけ

(sight 11)

今永さんが運転するバイクの後部座席に乗っていた。「ここから見るアンコールワットが好きなんですよ」と今永さん。同感だった。入場券売り場のほうからアンコールワットに近づくと、水をたたえた堀越しにアンコールワットが現れる。その風景は日本の寺に似ている。しかしこの道から眺めるアンコールワットは、カンボジア平原に忽然と生まれた文明⋯⋯そんなイメージなのだ。えッ、見えない? 写真中央です。ポツンとあるでしょ?

(sight 12)

以前はなかったショッピングモールができあがっていた。アンコールワット正面に向かって右手。以前はなにがあったのだろう。まったく思い出せない。店の7割は開いていた。これまではカンボジア人観光客でしのいできたが、さて、これから観光は本格化。土産屋おじさんの目がそう語っていました。

(sight 13)

夕暮れどき⋯⋯5時すぎなら、このショッピングモールのカフェまでなら無料。夕陽に染まるアンコールワットが店内から見える、見えない? アンコールワット周辺は自転車道が整備された。シェムリアップでのレンタル料は1日5ドル。たそがれどきサイクリング。新しいアンコールワットのまわり方かも。
(sight 14)

やっぱりこれをみないとね。アンコールワットです。入場料は37ドル。今年の終わりまで、1日券で2日間の観光が可能なキャンペーン⋯⋯でも、高い。僕もそう思う。だからというわけではないが、そう思ってしまう人は午後5時以降に。「なかには入れないが、夕暮れアンコールワットの外観が最高!」と自分を慰めましょう。その眺めは動画でも。4月20日公開のユーチューブ「アジアチャンネルで」で。(https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg)

(sight 15)

 夕陽はいまひとつだったアンコールワット。ふっと振り返ると熱気球。これも営業していました。それをぼんやり眺め、入場券売り場の方向へ。その道にそってナイトマーケットが。衣類や小物にはじまり、その先には焼き鳥屋台。冷たいビールが待っていました。その様子は次回に。

【次号予告】次回はシェムリアップのナイトマーケットやパブストリート。そしてプノンペンへ。(4月22日公開予定)

 

 

 

 

 

新しい構造をめざしています。