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2月2日09:30頃/立ち会い検分


「自宅が火事になりまして」マガジンより

ちょっと早めに到着した。階中に漂う臭いに燃えたんだという事実を突き付けられる。
部屋の前には、お巡りさんが立っていた。昨晩玄関ドアを切り取り、消火活動をしてくれたため、部屋に鍵がかけられない状況だった。そこで、一晩中お巡りさんが、現場を見守ってくれていたのだ。検分前に火事泥棒と現場を荒らされないようにということだ。お巡りさんの仕事は、こんなことにも及ぶのかと頭が下がる思いだ。

さて、少し待つと、消防隊員と警察がそろった。立ち会い検分は、この両者によって行われる。警察は、放火などの事件性を調べるために。消防は、原因を究明するために。部屋に入るのか思ったが、まずは玄関前で聴取が行われた。昨晩聞かれたことに加えてより詳しく聞かれた。タバコの吸い場所や銘柄まで詳細に。事前に疑っているわけではないので、気分を害さないでくださいと説明をしてくれるのだが、そこまで聞かれるともしかしたら自分が原因なのかもしれないと、恐怖に襲われる。その後の警察からの聴取は早めに終わった。事件性は、あまり考えられないということだろう。
そして、ついに部屋に入る。

あれっ、ヤバい。めちゃくちゃ燃えている。

昨日は、暗くて見えなかっただけなのだ、すべてが真黒だ。玄関のお気に入りのスニーカーたちは煤や熱で変色し、エアコンや照明器具は溶け落ち、ハンガーにかかったままの服たちは、焦げていた。昨晩、火元は奥の部屋であろうことは伝えられていたが、玄関や手前の部屋までこんなに焦げているとは思っていなかった。昨晩抱いた淡い期待は完全に消え去った。絶望的だ。

僕ら夫婦は、モノが多い。まず、二人とも服が好きだ。クローゼットには、それぞれの服が溢れんばかりに詰め込まれているし、玄関には、大量の靴、その他収納にもバッグや小物が押し込まれている。そんな好きな服を中心としたあらゆるモノの安否を確認したいのだが、とりあえずの現状確認だけすると、これから詳しく原因を消防が調査するのに数時間がかかるから、居てもらう必要はない。とのこと。とはいえ、寒い冬に不安だけを抱えた僕らに居場所はない。邪魔になっても仕方ないので、一旦部屋から出て様子を見守っていた。

そうしていると、そこへママとパパ(義母と義父をそう呼んでいる)が現れた。日頃から色々と心配をして、面倒を見てくれるパパとママは、状況の報告を待っていられず、心配で千葉から来てしまったのだ。いや、駆けつけてくれたのだ、ありがたい。ありがたいはずなのに、僕はこういう状況が整理されていない中、関係者が増えることは、あまり素直に喜べないタイプだ。でも、妻に少しホッとした様子が見られたので、改めてありがたいと感じた。駆けつけただけでなく、とりあえずの着替えやタオルなど必要だろうと思われるものあれこれを持って来てくれていた。
まだ、見聞が終わらないので、マンション1階にあるスーパーで、おにぎりとカップの味噌汁を買い、駆けつけてくれたワゴン車の中で、お昼を食べながら、見聞結果を待った。車の中でおにぎりを食べていると、より家を失ったと実感させられた。

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