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意味もなく小屋をブッ建てた話

突然だが特に利用目的がない小屋を家の横にぶっ建てた。

タイに移住して半年が過ぎた。
今年10月から日本で仕事があるので残りの半年はタイの家を拠点に色んな国を旅する予定を立てていたが、まさかの世界的コロナ危機のおかげでその計画は頓挫しそうだ。ずっと家にいる。暇すぎて気づけばニンジャ・タートルズの絵をいっぱい描いていた。

嫌なタートルズ01b


先日39歳になった僕は今、タイの山奥で毎日亀の絵を描いて過ごしている。調子のいいときは一日10亀くらい描いているので気が狂い始めているのかもしれない。恐るべし亀ウィルス。

現在、コロナの影響で日本と同じくタイも非常事態宣言が出されており、国境の閉鎖や食料品・医薬品を取り扱う店以外の商業施設の閉鎖、夜間の外出禁止に加えて酒まで販売が禁止されている。そして僕の誕生日という最悪のタイミングに酒の販売が禁止になった。その日は水をたくさん飲んだ。

そんな状況下なもんだから、当然ひとびとの生活や収入にも大きな変化が出始めている。僕が住む村はタイのチェンマイという古都から車で1時間半ほど走った山の中にあり、普段は静かな村で村民は畑仕事などをして過ごすことが多い。しかし3月〜5月にかけては、国内外あわせて多くの人が豊かな自然を求めて村へ観光に訪れ、キャンプをしたり、象に乗ったり、川でイカダ下り興じたりして賑わうような場所になる。

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普段なら村はこんな感じになるらしい。
イカダの数が多すぎて渋滞をおこし、ただ竹の上に乗っている人を大量に生み出す今の時期は本来なら村人達の年収の6割ほどを稼ぐ大切な時期だそうだ。だが、まさかのコロナによる非常事態宣言のせいで観光客が激減し、予定していた売上が吹っ飛び、閑古鳥が鳴く状態になってしまっている。これがコロナでなく亀ウィルスだったらどんなに良かったことか。いや、あれはあれで精神的にくるものがある。

小屋づくりダイジェスト

前置きが長くなってしまった。話を小屋造りに戻したいと思う。

こんな状況下なので、微力ながら何か僕にも力になれることはないかと思い、普段世話になっている村の友人たちに仕事を振らせてもらうことにした。それが小屋づくりだ。

幸い僕は移住する前からリモートでいくつか仕事をしていることもあり、あまりコロナの影響は受けていない上、日本に比べ物価の安いタイに住んでいるため生活コストはそんなに負担になっていない。なのでその浮いた分をくだらないことに使えればなと常々考えていた。

元々は、友人の畑へと続く道にかかっている吊り橋の真横にまったく同じ橋をかけるという意味のないことを計画していたのだが、案の定「意味がわからない」と一蹴されたので、自宅の横に特に利用目的もない小屋をぶっ建てることにした。こっちもそこそこ意味がわからないと思うのだが、これに関しては仕事を請け負うタイの友達も同意してくれた。判定基準むずくない?

ここからは「意味もなく小屋を建てるプロジェクト」を写真と共にダイジェストで紹介していければと思う。

小屋01-2

(1)
材料となる木や竹、屋根の素材などを買ってきて家の裏に設置。
物価が日本よりも安いので小屋の材料費はトータルで3万4000円くらい。


小屋02-2

(2)
「4mで良くない?」という僕に「柱となる木は6mは必要だよ」と言うタイの友人。これは結局6mを購入したが実際は長すぎて4mで十分だったときの写真だ。このあと2m切ってた。


小屋03

(3)
現場に集まってくる村の還暦レジェンドたち。
「ここはこうしたほうがいい」と若者に指示を出し帰っていった。
ありがとう、タイのキンキキッズ。


小屋04-2

(4)
穴を掘ってそこに元6mの木をぶっ刺していく男たち。
4mで良かったのに6mの木を買ってから2m切った男たち。
6mの木を6本買ったので「2m ✕ 6本」で合計12mを無駄にした男たちの勇姿がこれだ。別に根に持ってるわけではない。


小屋05

(5)
「屋根の位置はこれで良い?」とこちらがイメージしやすいように竹を使って説明してくれる親切な人達。


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(6)
それを見ながらモロコシを喰う現場監督。


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(7)
支柱を立てたあとは、あっという間に足場を組んで小屋の骨組みが出来上がっていく。


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二日目には屋根の骨組みも終わり、すごいスピードで小屋になっていく様を見ているのは本当に楽しかった。クリエイティブだ。


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(9)
それを見ながらモロコシを喰う現場監督。何個食うの。


小屋06

(10)
屋根はプラスチックパネルや木、葉っぱなどいくつかの中から選べたが、干し草にした。屋根の素材は日本円で約1万円ほど。


小屋07

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そして完成。入り口へと続く道は竹で編んだスロープに。トータルの制作期間は5日間だった。早い。

毎日作業後にみんなと飲んでたのだが、そのときに「入り口をなくすのがクールじゃないか。よじ登ろう。」という話が出たが実現しなくてよかった。それは不便であってクールではない。

作ってみた感想

日本と違う文化に触れて面白いなと思ったのが予算の部分。
タイではこういった職人仕事を頼んだ場合、人件費とは別に関わってくれた人たちの食事代や作業後のお酒代などを雇用側が払うというのが慣例のようだ。

毎日作業後は打ち上げみたいに一緒にご飯を食べ、お酒を飲み、誰かがギターを持ってきて歌い出すという経験は新鮮だった。そのとき歌ってくれた「出家したお坊さんが出家中に彼女を弟に寝取られる」という謎ソングも心に響いた。

逆に設計図なんてものはなく感覚で木材を組んで完成させていくため、設計に対してかかってくる費用というのはなかった。作業途中にアドリブでベンチやテーブルを作ってくれる対応をしてくれるので、なんでも決め事だらけからスタートする日本の仕事に比べてフットワークが非常に軽いなと思った。

このツイートは完成したときに僕が投稿した動画だ。
小屋の中がどんな感じになってるのかレビューしようと思い撮影したのだが、気づけば覇気のない声でセーラームーンの「ムーンライト伝説」を歌ってるだけの動画になっていた。リツイートでは「サイコパス」というありがたいお言葉も頂いた。ごめんね、素直じゃなくて。

ちなみに完成した翌日には、入り口に野良犬が糞をしていた。

最後に

小屋08

「意味もなく小屋を建てたい」という気持ちと「コロナの中、少しでも収入のサポートができれば」という気持ちから動き出したプロジェクトだったが、終わってみると日本ではなかなかできない体験が得れたなと思う。

何より嬉しかったのが、子供が4人いる若い子が「2、3ヶ月仕事がなかったのですごく助かりました」と言ってくれたことだった。

僕はただ出来上がっていくところを眺めていただけだが、遊びながらこうやって何かを作り、そして誰かが喜んでくれるという体験は久しぶりだったので僕自身にとって大きな刺激になった。次もまた意味もなく墓を建てたりしたいと思う。

余談だが、友人のヨッピーという男にこの村で墓を建ててみないかと提案したが「まだ死んでない」という理由で断られた。引き続き諦めずに古墳型も提案していきたいと思う。

最後の最後に

もし、この記事をサポートしてくださった場合、そのお金は今回の小屋作りに関わってくれたタイの友人達に追加ボーナスとしてすべて配ろうと思っています。皆べらぼうに喜ぶと思うので良ければご協力いただけると幸いです。

おおきにです。