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真夏日、それは遠赤外線で焼かれる肉の気分になれる日

 暑い。滝のように流れる汗はさながらしたたる肉汁か(肉の調理法としては、肉汁は閉じ込めた方がいい)。茹だるような暑さ、というと炒めるよりはヘルシーな響きだが、人間の体が茹だるというと一大事である。

    人間の体を構成する細胞は主にタンパク質で出来ている。つまり、人体はタンパク質の塊といえる。タンパク質の特性の1つとして、熱によって不可逆的な変性が起こる、というものがある。どういう意味かというと、卵(egg)を思い浮かべてみてほしい。卵も優秀なタンパク源として万年ダイエッターや筋トレの民に愛されているタンパク質の塊代表である。生卵の、特に白身は美しい透明色だが、それに火を通すと不透明な白色に変化する(美しくない、という訳ではない、念のため)。これが熱による変性(性質が変わること)である。透き通ってドロドロとした白身が熱変性により凝固して、見事に真っ白な白身(※重複表現)になったのだ。

    しかし、茹で卵や目玉焼きはどうやったら生卵に戻るのか?氷が溶けた水は再び凍らせれば氷に戻るが、卵は?実は、茹で卵を生卵に戻す方法は今のところ無い。見つけた人はノーベル賞よりすごいと言われていると聞いたことがあった気がするがどうだったかな。いや、とにかくこの「もう元に戻らない」変性、というのが「不可逆的な」変性という意味である。

    そして近年、「熱中症」を予防しろと皆が言っている。タンパク質の塊である人体が極度の熱で体調がおかしくなる病気である。お分かりだろうか?人の体も、高温の熱を加え続けると変性する可能性があることを。さながら生卵が茹で卵になるように。そして茹で卵はもう決して普通のなめらかな生卵に戻れないように。勿論、人間は生き物だから、少しの熱い拷問(?)には耐えられるが、それが長い時間続いたり、極度の高温にさらされると、最悪死ぬ。生き延びたとしても後遺症が残る。脳も筋肉も、内臓もタンパク質。タンパク質が戻らないから体は異常なままである。だから熱中症は怖い。熱中症になるな、と、お医者様や有識者が口を揃えて言うのはこれを少しでも防ぐためである。

   外に出て、じっくりローストされる肉の気分を味わっている場合ではない。本当に茹で肉になってしまう。だから直射日光を避け、水分と、できれば電解質(細胞の水分調節などに必要)を摂取し、熱中症にならないように、我々も気をつけようじゃないか。今年は特に医療現場の負担を少しでも減らせるなら減らした方が良いだろう、と、クーラーの効いた部屋で僕はこっそりドヤ顔をしている。皆も一緒にしようぞ。

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