酒癖の悪い男にうんざりした夜
「さ、帰りましょう」
「え、なんで?早いですよ~」
引き止める言葉を無視して、一人でさっさと店を出た。
これ以上、一緒にいたらイライラが爆発していた。
すんでのところで、大喧嘩を回避することができた。
その日の朝のことだ。
仕事の関係で知り合った50代前半の男性から電話があった。
「今夜飲みに行きましょうよ」
職場の近くの行きつけの居酒屋に行った。
この男性とは何度か飲んだことがある。
けっこうな酒豪だ。人のことは言えないが‥。
男性2人での酒席ということもあり、その日の話題は女性に関するものが多かった。(どんな内容かは紙面の都合により割愛!ちなみに他にお客さんはいなかった。)
お互いが知っている女性Aさんの話になった。
「Aさん、どう?」
「どう?」と聞かれても困る。
「きれいですよね」
「付き合っちゃえば?」
短絡的。
まあまあ、聞き流しておきましょう。
「いえいえ、そんなつもりは」
「なんで?嫌なの?」
「嫌じゃないですけど」
「じゃあBさんと付き合う?」
「いやいや‥」
「じゃあAさん?」
このやり取りが5回は繰り返された。
堂々巡り。いや、堂々堂々堂々堂々堂々巡り。
しつこい。そしておもしろくない。
「俺に従え」的な上から目線の言いぐさ。
だんだんマグマが腹から頭へと上昇。
グラグラ煮えたぎり噴火寸前。
まずい、このままいたらキレてしまう。
「しつこいですねえ」
話題を変えることを期待し、一度はっきりと言った。
効果なし。
「帰りましょう」
たまりかねてカバンを手に取り立ち上がった。
「え~?だってまだ、アジの塩焼き食べてないんですよ」
知らねえよ!
2時間前にお互いに1尾ずつ出されて、今まで全然手をつけないっておかしいだろ!
焼きたてを出してくれているのに店に失礼だよ。
せっかくのうまい酒が台無しとなった夜だった。
ちなみにこの男性、その後ガールズバーに行ったらしい。
翌日、知り合いにこの出来事をLINEした。
「ほんと、むかついた!」
すると、「次回はおもしろいトンチで返そう」
いつもさりげなくアドバイスをくれる知り合いだ。
たしかに。
こういった場を乗り切る技術や、うまいかわし方は身につけておいたほうがいいかも。
知り合いのLINEで二日酔いならぬ二日怒りが静まった。
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