見出し画像

「ポイントカードはお持ちですか?」という暴力

「ポイントカードはお持ちですか?」

このセリフがきらいだ。大きらいだ。この世から一秒でも早くなくなって欲しい。たまに行く靴屋や中古書店やレストランで、これを言われると苦痛で仕方ない。

「えっと、持ってたっけ?」

スムーズに支払いをして帰りたかった私の頭にはてなが浮かぶ。年に1度来るかどうかのその店で、ポイントカードを作ったかどうか咄嗟に思い出せない。

ここで私は二択を迫られる。財布の中を探してみるか、あるいは「いえ、いいです」と断って帰るかどうか、だ。

プランAを選び、財布の中を探すとしよう。保険証や免許証、映画館や美容院の会員証が詰め込まれたカード類の中をあさって、その店のポイントカードを探す。まず、ここがめんどくさい。

で、運よく発見できたとしよう。しかし、この時点で私は「レジでもたつく客」になってしまっているのだ。決して気分がよくはない。

もし見つからなかったら最悪である。

レジで突っ立ったままガサゴソ財布の中をかき回し、「あれ、これかな?」なんて他のカードと間違えつつ、数十秒、あるいは数分も探して結局見つからなかったら、悪いのは私だ。

そんな状況を引き起こしたのは、「ポイントカードはお持ちですか?」の一言なのである。

では、プランBだ。カードの確認はせず、ポイントを諦めてそのまま帰る。

もちろんこれはベターな行動ではあるのだが、私はもらえたかもしれないポイントを自ら放棄したことになる。と、多少とはいえ、私はその店で割高な買い物をしたことになってしまう。その「損した感」を引きずって買い物を終えることになってしまうのだ。

そう、どう転んでも、私はポイントカードのせいで不幸になっている!

「久しぶりにあの店に行こう」と思って足を運び、気持ちよく店を出て帰れるはずだったのに、「ポイントカードはお持ちですか?」という一言により、私は困惑させられ、逡巡させられ、気まずい思いをし、あるいはちょっと損した感覚を植え付けられて店を出なければならないのである。

なんという理不尽か!

そもそもこの令和の時代に、厚紙を折り曲げたポイントカードなるものをいちいち客に持たせるのがナンセンスなのである。いいや、アプリにしたって同じだ。あれだっていちいち何を入れたかなど覚えてはいない。その場で調べなくてはいけない。結局、もたつく気まずさか損した感覚の二択を迫られることになる。

本来、ポイントカードなんぞなくてもいいのだ。存在自体が不要なのである。サービスのつもりが、客に不快感と手間を押し付けるだけの呪いのアイテムと化している。

「ポイントカードはお持ちですか?」

もう、二度とこのセリフは聞きたくない。できるなら、日本中のポイントカードをすべて一箇所に集め、灯油を撒いて燃やし尽くしてやりたいほどである。

サポートをしていただくと、清水 Airがより活発に役立つこと、面白いことを発信できるようになります。ぜひ。