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【エスパルス】2020シーズン レビュー

すっかりSTAY HOME生活に逆戻りしている、2021年1月の今日この頃。
せっかくの時間を有効に活用しなければ… ということで、2020シーズンがどんな1年間だったのか、自分なりに振り返っておこうと思います。

2020年のエスパルスは、社長もGMも監督も替わった上に、リブランディングによりエンブレムやフォントまでもアップデート。「RE-FRAME」を掲げ、ピッチ内外で1からのクラブ再形成を図りました。

ピッチ内に目を向けると、結果的にコロナ禍で特殊なレギュレーションとなったことは、新たな取組みを始めたチームには不運だったかもしれません。
ピーター・クラモフスキー監督とのチャレンジは道半ばで終了しましたが、それでも新生エスパルスにとっては示唆に富んだ1年間だったと思います。

また、個人的には、初めて年間を通じてレビューの執筆に挑戦。終盤はモチベーションが低下しましたし、内容にも大いに改善の余地がありますが、見えたこと・感じたことをアウトプットすることで、ほんの少しだけチームの狙いや試合の流れに対する理解が深まった気がします。
清水分析同好会を通じてレビュワーさんとの繋がりができたのも嬉しいことでした。

それでは、個人的に節目だと思った試合を取り上げながら、選手起用や戦い方などの定性面を中心に、時系列で2020シーズンの戦いを振り返ります。
(データなどの定量的な話は、気が向いたら書きます 笑)

1.開幕~第10節(5連敗→5戦負けなし)

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※オレンジは先発、薄い黄色は途中出場、薄い灰色はベンチ入り(不出場)
※左端の出場時間はリーグのみ(spulse39 独自集計)

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まずは、アイスタに昨季2位・FC東京を迎えた開幕戦(●1-3)。
スタメンは2019年の最終戦から金子以外の10人が入れ替わるなど、まさに「新生エスパルス」の船出となった1戦でした。

大方の予想に反して3列目で起用された中村慶太は、運ぶドリブルと意表を突く正確なロングボールでボランチの新境地を拓き、相方の西村も豊富な運動量とボールへの関与で攻守に奮闘。SBに入った石毛は、水を得た魚のようにハーフスペースで自由を謳歌しました。
また、奥井・後藤の献身的な動きや、ヴァウドの対人の強さ、ネトの低弾道キックやティーラシンの決定力など、新加入の選手たちもそれぞれの持ち味を見せました。

攻めては「自分たちのアクションで相手を動かし、スペースを作って使う」変幻自在な(に見える)動きで相手を攪乱し、ボールを失ってもすぐに切り替えて奪還するなど、負けはしたものの失点するまで堂々たる戦いを見せ、サポーターに新生エスパルスの大きな可能性と期待を抱かせた1戦でした。

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およそ4カ月の中断期間を経て迎えた第2節・名古屋戦(●1-2)。

この日、初お目見えとなった新戦力・カルリーニョスのWG起用、本職CBながらボランチで使われた岡崎慎、高卒新人・鈴木唯人と19歳のGK梅田の大抜擢など、クラモフスキー色が存分に出た一戦となりました。

この時期は、ビルドアップの際、基本的には両SBが中央に入ります(上図)。ただし、いわゆる「偽SB」と違うのは、彼らがビルドアップの出口を担うのではなく、中盤の高い位置でインサイドハーフのように振る舞い、相手SBの裏や相手CB-SB間の突破を狙うこと。
このため、ビルドアップは通常2CB+2CH(+GK)で行うこととなりますが、CHが最終ラインへ下りるなどして数的優位を形成しても前線(=ボールの受け手)との距離が遠く、優位性を活かせない不安定なボール運びが続きました。

また、ボールを失った直後に自陣サイド奥にできる大きなスペースのカバーが上手くできていたとは言い難く、攻→守の切り替えの遅さも目立つなど、実戦だからこそ顕在化する課題が噴出。
こうした課題の解決に向けたアプローチは、過密日程の影響もありますが、シーズンを通してうまく機能していなかったように思います。

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エウシーニョが怪我から復帰した第5節・神戸戦(●1-3)。

この頃は、アタッキングサードでは左サイドを中心に複数の選手が連動した崩しの形が見られはじめ、決定機の回数が増えてきたものの、得点を決め切れない、というジレンマに悩まされた時期でした。
また、中村の運ぶ(剥がす)ドリブルや、CHを最終ラインに下ろすビルドアップが対策され、ボール運びの不安定さは解消されないまま。
さらに、怪我人などの影響で最終ラインの人選が定まらず、複数失点が常態化していました。

こうした背景もあり、カルリーニョスが主戦場をサイド(WG)から中央(CF)に移すようになり、エウシーニョも他のSBほど中央には入らず、後方からボールの前進をサポートするようになります。

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アウェーで引き分けた第6節・鳥栖戦(△1-1)から、守備職人・ヘナトの復帰に加えて立田・ヴァウドがCBのレギュラーとして固定されたこと、また、セットプレー4発で快勝した第7節・大分戦(○4-2)からはファンソッコがSBに定着したことで幾分か守備の安定感が増し、チームは5戦負けなしと波に乗ります。
立田がCBとして急成長を遂げた(ように見えた)のも、この時期です。

ボール保持時は、サイドで幅を取る役割を両SBが担い、左サイドはWG(西澤)が相手を引き連れながらハーフスペースに下りてくる動きと組み合わせてファンソッコや後藤が相手SB裏を使う形を、右サイドはエウシーニョがカットインで相手を引きつけ、金子などが相手CB-SB間を攻略する形を多用。
とくに第8節・浦和戦(△1-1)の前半は、上記の形で何度も左サイドを蹂躙しました。

一方、ボール非保持時には、ハイプレスを志向するチームスタイルにもかからわず、夏場の体力的な問題か、DFとFWとの意思疎通を欠いていたのか、全体の陣形が間延びする傾向が一層顕著に。
これによる負の影響は、とくに攻→守の切り替え(ネガトラ)時に表面化していましたが、金子のハードワークや、ヘナトの広大な守備範囲とボール奪取能力の高さで、辛うじて帳尻を合わせていたように思います。

2.第11節~25節(7連敗→3バック採用)

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横浜F・マリノスをホームに迎え、ノーガードの打ち合いを挑んだ末に敗れた第11節(●3-4)、中2日にもかかわらず前節と同じメンバーで臨んだ第12節・横浜FC戦(●2-3)を経て、第13節・川崎戦ではGK(梅田→大久保)や前線をテコ入れしましたが、結果は0-5の大敗。

このあたりから、徐々にチームの歯車が噛み合わなくなってきます。

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続く第14節・柏戦(●1-2)では、西澤よりも突破力に特徴のあるドゥトラを左WGで起用したほか、中村慶太がトップ下に入るなど、前線は個の力を強調し、ボールを持ったときの閃きや意外性を重視するメンバー選考に。

この試合では、最前線からマンツーマン気味の守備を仕掛けてくる柏に対して、スペースを作る動きに乏しくビルドアップが停滞。ボール非保持時のプレスも噛み合わず、チグハグさが目立ったのが思い出されます。

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過密日程の影響を考慮してスタメンを入れ替えても、なかなかチームの調子が好転しない中、第24節のアウェー 横浜F・マリノス戦(●0-3)では、相手のシステムに噛み合わせる意図もあってか、突如3バックを導入。
最終ラインの選手に怪我が続出していたこともあり、ヘナトが3バックの左に入るスクランブル体制でした。

この試合は、オールコートマンツーマンのような積極的な戦いを挑むも、サイドでの1vs1の対応に弱さを見せて突破を許し、早々に失点すると、前半13分には背後を取られた立田が相手選手を倒して一発退場。
悪い流れは簡単に変わらないなぁ…と思い知らされました。

なお、この前の鹿島戦で、河井が念願のスタメン復帰を果たします

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前半戦の折り返しとなった第17節・湘南戦(○3-0)。

この試合は、勝てばJリーグ通算400勝、負ければクラブワースト記録の8連敗と、良い意味でも悪い意味でもクラブの歴史に刻まれる1戦でした。

この日も、出場停止の立田に代わって六平が3バックの中央に入る非常事態。ただし、同じ3バックの湘南とシステムが噛み合った分、前線の個の力で優位に立ったエスパルスは、湘南のハイプレスによってできる相手3バック脇のスペースを長短のパスを織り交ぜて上手く活用し、複数得点に結びつけます。

この時点では、3バックの採用は相手の戦術に合わせた柔軟な対応で、次節以降は自分たちが築き上げてきたやり方(4バック)に戻すと思っていたのですが…

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結果的には、アウェーで全くいいところがなかった第25節・鳥栖戦(△1-1)まで、6戦続けて3バックを継続。この間に5連敗を喫しました。

上図の第21節・広島戦のように、左CB(ヘナト)がサイドに開いてSBのように振る舞い、WB(西澤)を高い位置に押し上げる「擬似4バック」ともいえる工夫で相手を押し込んだり、西村・鈴木唯人などの若手が出場時間を伸ばすなどポジティブな点もありましたが、勝利にはなかなか結びつきません。

3バックでも「自分たちのやりたいサッカー」、言い換えれば「チームの原則」は変わらない、というクラモフスキー監督の主張は、理解できる部分もあります。
ただ、実際にピッチの中では、過度に重心が後方に偏った戦いぶりが続き、シーズン当初に見られた攻守のアグレッシブさは影を潜めるなど、彼の修正能力に対する懐疑論が出始めたのも、やむを得ないことでした。

3.第26節~34節(監督解任→そして平岡さんへ…)

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こうして選手ごとの出場時間の推移を追ってみると、シーズン終盤でようやくスタメンが固定できてきたことがわかると思います。

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結果的にクラモフスキー監督の最後の試合となった第25節・柏戦(△0-0)は、9試合ぶりに4バックを採用。

今思えば、この試合で取り入れた、ミドルゾーンにブロックを形成して相手SBに激しくプレッシャーをかける守備の方法は、平岡監督のやり方と非常に近いものを感じます。

また、この試合はスコアレスドローとなりましたが、25試合を消化しながら無失点で抑えたのはシーズン3試合目。こういうところにも、如何に失点が減らずに苦しんだ1年間だったかがよくわかります。

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平岡監督就任後の守備のやり方は第26節・神戸戦のレビューにまとめましたが、チームに最低限の決まりを落とし込みつつ、戦術を90分サボらず遂行する「闘う集団」を作り上げたモチベーターとしての彼の能力は、シーズン途中の監督交代だからこそ際だったのではないでしょうか。

上図は、中3日のアウェーゲームを考慮してスタメンを入れ替えた第29節・横浜FC戦ですが、出場機会を減らしていたドゥトラ・金子といった選手たちが得点するなど、本来の持ち味を引き出しています。

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そして、J1王者の川崎をホームに迎えた第31節(△2-2)、平岡エスパルスは、勝利に肉薄する勇敢な戦いを見せてくれました。試合前の「ガード・オブ・オナー」も、素晴らしい光景でしたね。

最終的に、平岡監督体制下では4勝2分3敗の勝ち越し。
サッカーの内容を振り返ると、「良い守備から良い攻撃へ」というコンセプトは明快で、試合中の柔軟な采配も奏功しました。

川崎戦のように自分たちの土俵で四つに組めれば、十二分に力を発揮できた一方で、ロングボール等で狙いとする守備を無効化されて「ボールを握らされる」展開では、どうしても弱みが顕在化した側面もあります。

とはいえ、彼方を立てれば、此方が立たず
外からあれこれ言うのは簡単ですが、コロナ禍の厳しい環境で奮闘し続け、サポーターを一喜一憂させてくれた(?)監督・選手たちに対し、最大限の賛辞と感謝の言葉を送りたいと思います。

1年間、エスパルスのある日常を提供していただき、ありがとうございました。

4.最後に

以上、つらつらと自分が1年間で感じたことを書いてみました。
皆さんにとって、2020シーズンはどんな1年間でしたか?

2人の監督のもとで戦った1年間を振り返ると、新たなチャレンジと勝ち点獲得との両立が、いかに難しいことか実感できます。
こうした経験と学びを活かして、2021シーズンに大型補強や経験豊富なロティーナ監督の招聘に踏み切ったのも、非常に納得できます。

2021年シーズンの観戦環境やサッカーの内容がどうなるかは予想もつきませんが、サポーターがスタジアムで喜び合い、ロティーナ監督のサッカーの奥深さについて大いに語れる1年間になればいいなと願っています

今季もできるだけレビューを書いていきたいなと思います。気が向いたらで結構ですので、ぜひご覧いただき、ご意見・ご感想を頂戴できるとありがたいです。
引き続き、よろしくお願いします。

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