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【エスパルス】2020年J1第5・6節 vs神戸・鳥栖(A)【Review?】

エスパルスがなかなか結果が出ずに苦しむ中、私自身も過密日程でレビューを書く時間も気力もなかったわけですが、今回は直近2試合の中で見えた良い形に触れつつ、対戦相手の対策も簡単に振り返ります。

2020年8月号のエスパルスニュースで竹内キャプテンが触れていたように、エスパルスのサッカーは変化の途上にあります。そのキーワードは「プレーの連続性(継続)」であり、言い換えれば「スペースを ”作って、使う” を、全選手が連動してやり続けること」です。
竹内・奥井・後藤といった出場時間の長いメンバーを見ていると、パスを出した後のこまめな動き直しや、相手を引きつけるフリーラン、前線のスペースや相手の背後への果敢な飛び出しが、1試合の中で何度も見られます。エスパルスから見て左サイドのボール保持が淀みないのも、こうした選手たちの献身と捉えることができますし、クラモフスキー監督がスペースを創出し活用できる戦術理解度の高い選手を好み、チーム全体のダイナミズムを生み出そうとしているのがわかります。
また、上述の動きは試合を追うごとに各選手に浸透し、連動した動きによるビルドアップや崩しの形が顕在化するなど、チームの成長の一端を見ることができます。チームは確実に前に進んでいる、それを本稿から感じていただければ幸いです。

1.対戦相手のエスパルス対策

(1)神戸

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神戸は、ボール非保持時4-1-4-1の形を作り、ファーストディフェンダーとなるドウグラスがサイドを限定しつつ、SHの立ち位置とプレッシングでボールを外へと誘導します。また、中盤の数的同数を維持して中央へのボールの侵入を許さず、エスパルスが苦し紛れにWGへ配球すれば、相手SBが厳しく寄せてWGに前を向かせません。
レビュワーのhirotaさんが、神戸の守備のやり方を「防衛線(赤い点線の部分)」を表現していましたが、まさに言い得て妙だと思います。

(hirotaさんのレビューはこちら↓)

それでもエスパルスは、中盤3枚とSBの連携やセカンドボールの回収により、相手SHの裏(アンカー脇)のスペースを使って前進を図ります。

(2)鳥栖

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鳥栖は、ボール非保持時4-4-2の形。前線の2枚と中盤の4枚でエスパルスのCH包囲網を作って中央を経由したビルドアップ(上図①~③)を阻害し、神戸と同じくボールを外へと誘導します。また、鳥栖の守備は人を捕まえる意識が強く、自分の守備エリアに入ってきた相手にはマンツーマン気味についていく特徴があります。
鳥栖がボール保持時にSBを浮かせるようなポジショニングを取ってきたことに手を焼き、ボールを握られる時間が多い展開となりますが、鳥栖の守備の特徴を逆手に取ったチャンスの形もいくつか見られました(後述)。

2.神戸戦で見えた良いポイント

(1)前半42分のシーン

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上図は、ディフェンスラインに下りた竹内からのビルドアップ。相手SHが中を締めているため、外に開いた奥井を使った外→外の経路でボールを運びます。
ここで良かったのは、中村慶太が見せたスプリント。相手の中盤のラインを越える飛び出しで、ハーフスペースでカルリーニョスからダイレクトの落としを受けます。そのままドリブルで持ち運んでサイドを抉り、GK-CB間へのクロスに結びつけます。この低く早いクロスも、チームの狙い筋です。
残念ながら、クロスはやや精度を欠きクリアされてしまいましたが、ティーラシンと金子がゴール前にしっかり詰めていたことで、相手のディフェンスラインを押し下げ、バイタルエリア(後藤の周囲)には広大なスペースができていました。マイナスが見えていれば、1点モノのシーンだったかもしれません。
前半終了間際のつらい時間帯でしたが、中村慶太の相手のスペースを見つける目とリスクを負ったスプリント、そしてカルリーニョスとの意図の一致が生んだ良い場面だったと思います。

(2)後半33分のシーン

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上図は、左サイドでの攻撃がうまくいかず、ヴァウドからやり直した場面。ボールを受けた岡崎は、シンプルにサイド際に張る鈴木唯人に預け、追い越す動きを見せます。このとき、鈴木は後ろ向きでボールを受けますが、ドリブルしながら巧みに力強く前を向き、中間ポジションに入ってきたヘナトに楔を入れ、自身は相手CB-SB間を目がけてランニングします。
ヘナトを経由して、ボールは再びサイドに残っていた岡崎へ。パスを出したヘナトは、相手SB裏に抜ける動きをします。鈴木・ヘナトの「足を止めない動き」により、相手の選手がディフェンスラインに吸収されます。
ここで、実に良いタイミングで顔を出すのが後藤の真骨頂。後藤はバイタルエリアの危険な位置で岡崎からのパスを受け、カルリーニョスへラストパスを送ります。
カルリーニョスのシュートは枠外となりますが、複数の選手が連動してバイタルエリアにスペースを生み出した事例です。

3.鳥栖戦で見えた良いポイント

(1)前半17分のシーン

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上図は、自陣の低い位置でボールを受けたエウシーニョから始まった攻撃。エウシーニョには相手SHがプレッシャーをかけますが、ボールは中央のヘナトを経由してサイドに張るカルリーニョスへ。このときヘナトは、足を止めずにサイド奥のスペースに流れます。
鳥栖の守備は、前述の通り人についてくる意識が強いため、ヘナトの動きにより相手CHが釣り出され、中央に空間ができました。
ボールはカルリーニョスから再びエウシーニョに戻りますが、中央にまたもタイミング良く顔を出した後藤とのワンツーを使って、エウシーニョが中央に切り込みます。これでエウシーニョは、完全にフリーな状態に。
最終的に、ボールはバイタルエリアに入ってきた奥井を経由して西澤に渡り、西澤がカットインからシュート!これは惜しくも防がれますが、この流れで得たCKからエスパルスは先制に成功します。相手の守備の特徴を利用したスペースを作る動きが、大きなチャンスとなったシーンでした。

(2)後半2分のシーン

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上図も、ヘナトのスペースへのフリーランと、後藤・カルリーニョスの相手を引きつける動きがチャンスになった事例ですが、ここではティーラシンと西澤の位置にも注目してほしいと思います。
相手のCB-SB間に広大なスペースができているのは、彼らが適切なポジションを取って、相手をピン止めしているからです。近くに寄ってボールを受けにくればいいというわけではないことも、よくわかります。

4.今後に向けて

神戸戦・鳥栖戦から2つずつ良いシーンをピックアップしてみました。意図的に右サイドの事例を挙げたのは、左サイドほどのクオリティと頻度ではないにせよ、戦術的な意図を踏まえた選手の動きがフィールドの各所で見えるようになってきたことを示すためです。
また、たまたまヘナトが多く登場しますが、彼は前述のように前を向いたプレーにおいては非常にアグレッシブな姿を見せる一方で、ボランチとして最終ラインからボールを引き出す動きやパスのアングル作りなど、ビルドアップへの関与は限定的です。
さらに言えば、カルリーニョスの爆発的なパワーをチームとして得点を取るために最大限活用するには、どのポジションに配置するのがベストなのか。個の力で状況を打開できるエウシーニョと同じサイドでの起用は、チームのことを考えると適切なのか。このあたり、助っ人をどうチームに組み込むかも含め、まだまだクラモフスキー監督の模索は続きます。

負けても良い試合など1つもありませんが、とにかく今はいろいろなことを試しながら成長している最中。ぜひサポーターみんなで、今できていることやできるようになったことなどポジティブな点に目を向けて、良いプレーにはスタジアムで大きな拍手を送りましょう。次の大分戦、どんな試合を見せてくれるか、本当に楽しみです。

(そして、そろそろ河井さんの復帰もあると思います…!)

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