#3 本当にあったサウナの怖い話(後編)
〜前回までのあらすじ〜
夏のとある日に妻と訪れた某サウナ。
リニューアル後の綺麗なサウナを満喫しつつ。
テレビから流れる甲子園球児の達の熱気とそれを見守るおじいちゃん達の熱意が醸し出す風景に心を奪われたのも束の間。
とある謎の男の登場によってサウナ室に不穏な空気が流れるのであった。
それでは後編へどうぞ。
謎の男登場…そして。
掛け水用の手桶を持つ謎の男。
それを心配そうに見つめるおじいちゃん達。
画面に映し出される白熱の夏の甲子園。
「嘘だろ…そんなわけないよな…」
最悪の事態考えながら男の動きをじっっっと見つめていたその時。
事件は起きた。
男は手桶の水を全て。。。
サウナストーブにぶち撒けたのである。
ジュワー!!!
もの凄い勢いで立ち込める水蒸気。
少し時間差を置いてにサウナ室中に届く熱。
「こいつマジでやりやがった!!!」
最悪の事態が起こった事に驚きながらも気道を守るために急いでタオルで口を覆い熱に対して万全の状態をとる。
逃げるおじいちゃん達と謎の男
そうしていたら左右から。
「あっちー!熱い!熱い!」
さっきまでテレビ中継に夢中だったおじいちゃん数人が大声を出してそのままサウナ室を飛び出て行った。
多分ロウリュの経験がなかったか、耐性が無かったのかもしれない。
下段にいたおじいちゃん達も急な温度変化に驚いている様子。
セルフロウリュウ禁止のサウナでそれを破り、サウナ室をざわつかせた張本人はどんなツラしてんのかと思いその男を睨んだら…なんと満面の笑み。
そしてこう言った。
「これがロウリュっていうんです!暑くて気持ちいでしょ!この施設では本当はやっちゃいけないんだけどロウリュの魅力を皆さんに知って欲しいから今やってみました!でもこれ知られちゃうとまずいので内緒でお願いしますね。」
正直耳を疑った。。。
ロウリュ禁止の施設だと知っているのにも関わらず。
自身のエゴの為に勝手に周りを巻き込み。
サウナを楽しんでいた数人を退室させた。
そして全く反省してない。
人並み以上に色んなサウナ巡ってきたし。
サウナ業界の人とも交流させて頂き、そういった関係の仕事もしてきたんですが。
流石にこんな事をする人は初めて出会った。
というか出会いたくなかった。。
呆れて何も言えず茫然としていたらその男が僕の左隣にいた男性の近くに座り、続けてこう言ったのである。
「リニューアルして良いサウナストーブ入れたのにロウリュやらないなんて勿体無いと思いません?ここの代表はサウナの事わかってないですし生かせてないんですよ。」
まさかの施設への陰口だった。
『もう無理だ…』
流石に我慢の限界が来たので急ぎ足でサウナ室から出て水風呂に入った。
普段ならご褒美の水風呂なのに何も感じない。
いやむしろ逆の感情がずっと腹の中で蠢いてる。
『なんでサウナに来てまでこんな不快な体験をしないといけないんだろうね…』
外気浴中もそんなことばかり考えていました。
モヤモヤとイライラが心の中で蠢きながら『次こそ心を穏やかにしてサウナを味わおう』
そう自分に言い聞かせました。
歴史は繰り返す。
2セット目。
あの男がいない事を確認し先程と同じ場所で静かに甲子園を観る。
気づけば試合も7回の裏でだいぶ点差もついていた。
さっきの事件のせいで試合のおいしいところを見逃してしまい残念に思いつつも画面を見る。
7分くらい経っただろうか。
全身から汗も程よく出て脈拍も上がり。
『あと1〜2分で出ようかな』と思ったその刹那。
あいつがまた来た…
またしても手には水が並々入った手桶。
そして聞き覚えのある口ぶりで「ロウリュしますね。これ絶対施設の人には内緒にして下さいね。」
前回と同じの内容だった。
『もうやめてくれ…』
そう心から祈ったがまた悲劇は起こった。
サウナストーブにかかる大量の水。
立ち上る水蒸気と熱気。
あちらこちらから聞こえる悲鳴。
退出するおじいちゃん達。
そして満面の笑みの謎の男。
そう、歴史は繰り返されたのだ。
『もうダメだ…』
僕は直ぐに水風呂に入り、外気浴を済ませると脱衣所へ向かった。
正直もっとサウナを楽しみたかったし、最後まで甲子園の試合も見たかった。
けれどそのモチベーションもう僕には残ってなかった…
サウナに通ってだいぶ経ちますけど1番辛かったですし。
人の狂気は本当に怖いんだと思い知らされました。
あの夏の日は一生忘れないと思いました。
後日。
サウナにすごく詳しい人にその日の体験を伝えると。
謎の男は色んなサウナに通っては問題を起こす事で有名な人なんだとか。
もう2度とあの男に出会わない事を切に祈ります。
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