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世界一の文明国「台湾」~コロナ対策に学ぶ~


 現在世界中で猛威を振るっている中国肺炎。わが国でも感染者は2178人※1(4月1日正午現在)を数え、死亡者は57人を数える。中国は兎も角、感染の拡大を楽観視していた欧米では、指数関数的に感染者・死亡者が増加しており、何か国では医療崩壊間近の様相を呈している。世界各国を見渡す中でも、わが国は感染拡大の封じ込めには比較的成功していると言えるだろう。だが、わが国以上に「適切」かつ「迅速」に本事態への対処をしている国家がある。中華民国(以下、台湾と表記)である。

 本稿では、『正論5月号』掲載、王明理氏執筆の《コロナから台湾守る「台湾人の誇り」》などを参考に、台湾の中国肺炎対策について纏めていこうと思う。またタイトルを「世界一の文明国台湾」とした理由も、本稿を最後までお読みいただけたら理解出来るであろう。

 また本稿では、先に挙げた論文を多数引用している。『正論5月号』は、大変有益な論稿が多い。是非とも書店にて購入して頂きたく思う。

 なお、3月31日現在、台湾の感染者は306人、死亡者5人だという。

一、迅速な初期対応と優秀な指導者

 昨年12月、中国湖北省武漢市に於いて、新型ウイルスの発生が確認された。当時の台湾は翌1月の総統選挙と立法委員選挙を控え、選挙戦真っ只中であった。しかし蔡英文総統は、中国肺炎の感染拡大に関する動向を逐次モニターするように厳命したという。その甲斐も有って、総統選後は「対策本部」を速やかに設置し、指揮命令を行なうことが出来たそうだ。

 また、この対策本部のメンバーが非常に優秀だったことは、わが国でも既に知られているだろう。王氏は次のように纏める。

総統 蔡英文 SARS当時、大陸委員会主任委員。感染症に関し中国と直接対峙し、中国共産党の人命軽視の情報隠蔽体質を実感。
副総統 陳建仁 公衆衛生学の権威。SARS当時、衛星福利部部長(日本で言厚労大臣に当たる)。中国からの情報が皆無の状況下、封じ込めに成功した立役者。蔡総統からの信頼も篤い。
行政院長(首相)蘇貞昌 SARS当時、台北県長としてリーダーシップを発揮。僅か10日で普通の病院を感染症対策病院へ転換させた実績を持つ。
行政院副院長 陳其邁 SARS当時、立法委員として王の下で活躍。

 また、5月から副総統に就任する予定の頼清徳氏は、ハーバード大学で学んだ医師だという。そして、台湾政府の優秀な指導者の中でもとりわけ際立つのがIT担当大臣の唐鳳氏だ。

IT担当大臣 唐鳳 38歳の政務委員。若くして米国にて成功し、35歳という若さで無任所大臣に抜擢された。マスク配給アプリシステムを構築。

唐鳳氏に関しては、以下の記事に詳しい。

 以上のように台湾政府の指導者の陣容を見ていると、なんだかアニメか漫画の世界というか、ここまで都合良く「適材適所」人事が為されているのか、と驚かせられるものだ。

 そもそも台湾で人々が医学を修めるようになったのは、日本統治時代からだと言う。王氏はこれに続き、優秀な台湾人は政治に左右されない地位ある仕事として、医学の道に進む者が多いと言う。他にも弁護士が医師同様、内地人と差別なく出世できる職種だったそうだ。小林よしのり氏の著作でもしばしば触れられている点だが、戦前に於いて内地人(日本人)と朝鮮人の地位は同格であり、台湾人だけが差別されていた。実例の最たる例が、帝国陸海軍の上級学校への進学・任官差別であろう。なお此の差別的風潮は、1944年の長谷川台湾総督の「やめろ」の号令一下、是正された。また、常に中共の政治的・軍事的な圧迫を受けている台湾だからこそ、人命に関わる医学の道へ進む者が多いのかとも思う。やはり、有事に対する危機意識がわが国とは比べ物にならない程異なるのだ。


二、徹底した情報公開とマスク供給の安定化

 また台湾政府は、中国肺炎に関する「情報公開」を徹底している。人心の乱れは、正確な情報が無いことが所以であるという基本を意識し、政府の「TCDC(台湾疾病対策センター)」が正確な情報を国民に周知しているという。TCDCの「中央流行疫情指揮中心」が毎日必ず1回、公開記者会見を行なうという。情報公開という考えが毛頭ない中国共産党政府は論外として、「厚労省の感染者情報が見づらい」との指摘を受けるわが国から見ても、大変羨ましく丁寧な対応ではないか。

 そして先述した「マスク配給システム」も大変優れたものだ。台湾は、中国肺炎の流行以前は我が国と同じく、マスクを中国からの輸入に頼っていたという。だが、優秀な指導者の号令一下、その体制は大きく変貌した。こちらも王氏の纏めを引用する。

1月24日 医療用のマスクの輸出を禁止 市民がマスク購入に走るも、旧正月が重なり、マスクが店頭から消える。1人1回3枚までの購入制限。
1月31日 国内マスク生産品のすべてを政府が買い上げることを決定。  約7億円を投入し、新たに60台のマスク生産機械を製造。数社の機械製作会社が連携し、軍も人員を派遣。

 これらの措置によって台湾では、マスクの生産数が3月中には1日1300万枚(1500万枚とも)を突破する見込みだそうだ。正確な生産数の最新情報は上がっていないが、効率的かつ大量のマスクが生産されていることは間違いないだろう。

 そして、生産されたマスクは「健康保険カード」の提示で3月20日現在、大人は週に3枚、子供は週に5枚の購入が可能である。また、医療機関・教育機関・公共施設には政府から適宜マスクが配給されるそうだ。

 またそれに加え、唐鳳氏自ら「どこの店にマスクが何枚あるか」が一目で分かるアプリを開発し、国民の混乱を防いでいる。

 感染者・感染の疑いがある者に対する措置にも余念がない。簡潔に述べると、医療崩壊を起こさないための自己隔離策である。詳細は『正論』を読んでいただきたいので、割愛する。


三、ジュネーブの屈辱から17年

 さて、本稿では台湾の中国肺炎への対処について纏めた。台湾政府の緊急措置は、ほぼ満点と言っても過言ではないだろう。だが今回このような対処が出来たのも、過去の苦い経験の反省が生かされていたからだという事実をどれだけの日本人が理解しているだろうか。

 2003年、中国発のSARSが台湾にも上陸した。台湾は当時も今もWHOに加盟していない。正確には「中華人民共和国政府の妨害によって、加盟できない」状態である。そして当時、台湾にはSARSの正確な情報が全く入ってこなかったという。これに関しては、以下の記事に詳しい。

 日米が情報を密かに台湾に教えていたそうだが、当然ワンクッション置かれる訳なので、対応は後手後手になる。そして、中共は正確な情報公開をしない。日米両国や欧州諸国が台湾のWHO加盟を呼びかけても、中共政府が強く反対し、お流れに

 更にジュネーブで開催されたWHO総会で、中国の外交官である沙祖康が トンデモない一言を発した。

台湾マスコミ 「台湾人民2300万人の命はどうなる?」
沙祖康「誰理你們!」
=お前らの命なんぞ、知ったこっちゃない!

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この発言は、台湾の人々の記憶に強く刻まれた。

SARSにより、台湾では674人の患者と84人の死者を出し収束した。因みに、台湾は世界で一番「SARS終息宣言」が遅かった国である。

また、既に多くの人々が理解しうる事であるが、感染症などの対策に於いて

中華人民共和国は情報公開をせず、人を殺す国

という事実を再確認した出来事でもあった。現に、今の中国肺炎でも中共はウソに塗れた発表を繰り返し、結果的に世界中にウイルスをばら撒いた。


四、文明国たる所以を台湾に見る

 本稿のタイトル「世界一の文明国台湾」の意味をお分かり頂けただろうか。そもそも「文明国」とは何であろうか。先進国、列強…似たような言葉は多々あるが、私は「国民の質」と「適切な情報の公開」にあると思う。

 国民の質は、言うまでもなく台湾国民の弛まぬ努力である。台湾の為になる政策を実行する政治家を選択し、若者も2014年の「ひまわり運動」、本年の総統選挙に強い関心を示し、行動に移した。「自由」と「人権」を守ろうという気概が大変感じられ、政府や大陸・社会主義への隷属を拒否する意思を明確に示す。まさに文明人である。また、自主隔離や自粛に協力する姿勢も大変立派である。

 適切な情報の公開という面では、先にも触れた通り、中国肺炎に関する政府の施策や緊急情報を適宜公表し、国民の不安を払しょくした。また、「電球」との綽名を持つ、蘇貞昌行政院長がTwitterにて

「有政府、請安心」(我々(政府)がいる、安心して欲しい)

と呼びかけ、言葉だけでなく実行(数々の施策)が伴っている為、国民は安心し、率先して政府に協力した。大陸では考えられない出来事であろう。

 その他にも、頼りにならない大陸の情報や、WHOの情報を当てにすることもなく、台湾は独自で情報収集しているという。他国に頼らず、情報を獲得することが出来る、これも文明国として必要な要素である。

 医療体制についても触れよう。米国をはじめとして、イタリア、スペインなど、先進国・列強と言われた国々が次々と医療崩壊を起こし、大規模なパニック状態に陥っている。(若しくは医療崩壊間近)。だが、台湾はどうであろうか。本稿でいくつも実例を挙げた通り、台湾は中国肺炎の封じ込めに成功している。

 それは「独立自存」の気概から来ているのかもしれない。17年前の屈辱を忘れず、医療体制を整え、中国依存をやめ、情報の獲得に力を注いだ。国民の質も高く、かといって行政への「隷属への道」は選択しない。

要は、賢い国民が文明国を創るのだ。

 以上のことから、台湾は「世界一の文明国」の称号に相応しい国であることは間違いないと考える。では、わが国は?


最後に、2点主張したい。

中国は文明国では無い!! 中国共産党は人類史の汚点だ!

 わが国も「対外情報機関」の創設を!!


日本弥栄。中国肺炎の早期終息を願って。

令和2年4月3日


~本稿に用いた論文、サイトなど~

産業経済新聞社『正論5月号』王明理《コロナから台湾守る「台湾人の誇り」》

※1 新型コロナウイルス感染症について - 厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

※2「武漢肺炎」と台湾人の反応 
http://taiwanhistoryjp.com/wuhan_pneumonia-taiwan/

何故台湾は新型肺炎の抑え込みに成功したのか-Twitterから見る台湾人の矜持 
http://taiwanhistoryjp.com/wuhan_coronavirus_taiwan/


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