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狂気じみた研究不正,起こさないために

名古屋大学での研究不正に関する記事を読んだ.

リンクに貼られている内容や調査報告をよんで,最初に感じたのは,「もはや狂気」である.

私自身,日々実験をする中で,思ったように実験が進めなかったり,次に参加する学会や発表する論文のために急いで「良い」実験結果が欲しい,と思うこともある.
日々実験・研究に携わっている人たちなら,同じように思っていることであろう.

しかしながら,出てくるデータを逐一改竄しようとは思わないし,それを所属団体の誰一人として望んでいないことは考えなくても分かる.

ということは.
今回の事例は,少なからず,この大学院生の置かれていた状況や環境が当事者の彼(女)にそうさせてしまった側面はあるのではないかと推測される.

もちろん,狂気じみた不正につぐ不正の量からして,当人が重大な問題であると言うまではないが,
たとえば,卒業までに論文をまとめるために良い結果を出すように言われていたのかもしれないし,就職のためにインパクトのある著名な論文や学会に参加する必要があったのかもしれない.
日々の指導教員からの重圧があったのかもしれないし,奨学金や外部資金の獲得などのために手を染めてしまったのかもしれない.

正直言って,就職にしろ卒業までの論文化にしろ,当人にはコントロールの効かない部分があるのは否めない(再三だが彼(女)の行動を肯定する気は全くない).
だから,何かのきっかけに不正に手を染める(染めざるを得ない?)状況に堕ちたのかもしれない.

せっかくの機会だから,今回のような事例が少なくとも私の所属する研究室で起こらないためには,どんな対策ができるのだろうか,と考えてみる.

不正するやつはいくら周りがケアしたところで,する可能性は高いけど,少なくとも,現状でそのようなことをする心理状況ではないラボメンバーがそちら側に堕ちないようにするためにできることはないだろうか.

たとえば,私が普段お世話になっている助教は,どんなにおかしな実験結果だったとしても,一緒に原因を考えてくださっている.
そのおかしなデータが私の手技的な側面によることもあるが,手技的な面以外の面白い現象によるものではないか,そして,それを検証するために次回どんな実験をしたら良いかを一緒に考えてくださっている.

結構これは重要なんじゃないかと思っていて,つまり,ただただ細かく実験の進捗を確認するだけではなく,仮におかしなデータが出ても頭ごなしに「お前のやり方・考え方が悪い」とするのではなく,サイエンスに興味を持って楽しもうとする姿勢を見せ続けることが実際に手を動かしている研究生のメンタルも守っているのではないか,と言うことである.

非常に単純な方法というか,助教が意図してそのようにやっているとは思えないけれど,結果的に私自身は救われているのが事実である.感謝.

それを踏まえて,最近研究室に配属されてきた後輩にも同じように接するようにしている.
それが功を奏しているのか知らないが,最近は私以上に実験を進めて,結果に対しても色々考えて話してくれる.

私としても非常に嬉しいし,負けていられないな,と奮起させられる.
これだけ生データを見ながら考えて,ファクトチェックする中で大胆な実験結果の改竄は,まず起こらない.

少し脱線したが,大学院生なんだから,研究不正がどれくらいまずいことか,どれだけ周りに迷惑をかけるか,誰にもメリットがないことくらい考えられそうなものである.

今後研究室で過ごしていくにあたって,そういう心理に変化してしまうような研究生を生まない環境を作らないようにしていこう,と思えた一件であった.


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