【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】20
いよいよ管を抜く
身体には3本の管が刺さっている
右胸部側面に1本
右腹部側面に1本
左胸部側面に1本
『今回は右腹部側面の管以外の2本を抜きます』
と、医師に伝えられすぐ準備が始める
ベットの回りが慌ただしくなる…
僕はただ待つだけの不思議な光景が広がっている…
ベット周辺の準備が完了し
医師がハサミを手に僕に歩み寄る
「何するんだろう?」
と、思った矢先に医師が
『これから管と腹部をつないでる糸を切ります。その後管を抜いてから、抜いた箇所を縫合します。』
唖然とする僕を尻目に
管と腹部をつないでる糸を切り始める
「痛いっ! 気持ち悪いっ!」
今まで味わったことのない感覚に戸惑いを隠せないでいたが、全ての糸を切り終わると医師は看護師に
『一気に行くからな』
『ためらうなぁ、ためらうな〜、ためらうなー…』
そう言いながら段々と語気を強め
『いくぞ!せーの…』
ズルズルズルズル …
何とも言えない感触が身体の中を走る
医師は抜いた管を僕に見せないように
すぐ隠そうとした
つい目で追ってしまった僕は
「こんなモノが身体の中に入っていたのか…」
その管の長さを見て呆気にとられていると医師から
『さぁ、もう一本いきますね』
・・・その日の夜・・・
「このまま僕はどうなってしまうんだろう…」
自分の身体に入ってた管を思い返し
幾度となく襲ってくる不安と絶望に
この日は希望がかき消されて
身体の不自由さがなくなってきた喜びも
不安と絶望と共に
暗闇に吸い込まれていく…
つづく
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