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今できることに固執すると成長は止まる


立場上、よく面談をするし若い子たちと将来やキャリアについて話すことがある。

建設的なキャリアの話もあれば、心の風邪を引いてしまった子に対して、前に進む打開策を探す手伝いをするような時もある。

その時に必ず3つのことを聞くようにしている。

なりたい姿
好きなこと
できること

この3つ。

このうち「なりたい姿」は、この手の相談の議論の中心にはなる。

10代まではきっと、この「なりたい姿」だけを見て将来を夢想していたはずだ。「お花屋さんになりたい」「プロサッカー選手になりたい」といった具体的なことから始まり、歳を取るにつれ「お金持ちになりたい」「社会をあっといわせる人になりたい」と抽象度が増してくる。

ただ、大人になると「なりたい姿」と現実のギャップをリアルに感じ始めて、あまり真剣に向き合わなくなる。「夢を諦めない」とは聞こえがいいが、将来たどり着くか分からない「なりたい姿」に向かうプロセスをもったいなく感じてしまう。ちょっと挑戦して、半年くらい頑張って、手応えがなければ違う道を考えるようになる。そりゃそうだ。不確かな未来の幸せと、目の前の現実をどう楽しむかは、トレードオフだ。

「好きなこと」は簡単そうで、改めて考えると難しい。

「映画が好きだ」「人と話すのが好きだ」くらいは思いつくのだが、「映画の何が好きなのか?(どうして映画が好きなのか?)」や「人と話すことの何が楽しいのか?(どうして人と話すのが好きなのか?)」を言語化するとなると、うまく説明できない。「だって、好きだから」以上でも以下でもないので仕方がないのだが。
ただ、なんとなく「好きなこと」を並べ立ても、それを現実社会、お金を稼いだり日常のメインの事柄にフィードバックできずに「ただの趣味だから」と落ち着けてしまう。

それに「好きなこと」ばかり考えていると、どうも放蕩というか牧歌的な生き方のようで気が引ける。「好きなこと」だけに邁進する人の姿を見て、半分憧れ、半分は「もっと世の中の役に立とうよ」とやっかんだりもする。

だから、好きなことはあまり真剣に向き合わない、というか好きなことと、現実社会は別、と考えるようになる。


この3つのうち「できること」はテーマにしやすい

社会人になると、組織に対してどう役に立つかを求められるし、志の高い人は社会や未来に対して何が出来るかを考える。
そのうち、自分の「できること」には限界があって、できないことの多さに絶望し、落胆し、自分を過小評価していく。
「私はなにもできない」「役に立たない」と後ろ向きになる。

前向きな人は、どんな小さな事でも自分のできることを見いだし、それをもって役に立っていることに達成感や幸せを感じることができたりもする。
でも、それも、今できることには限界があるから、現状できることでうまれる「小さな幸せ」に満足するようになる。満足しないとやっていけないとも言える。

それが普通。

「できること」だけだと、世界は小さくなる。「好きなこと」だけだと現実離れする。「なりたい姿」だけだと今を犠牲にする。

なので、3つをいっぺんに考えることをすすめるのである。


まず最初に、とにかく「今できること」を羅列してもらう。会社員だったら、何ができるか、役に立てているかを、どんな小さな事でも羅列する。

エクセルでデータ入力ができる
上司の指示は的確に理解している(と思う)
営業ができる
企画ができる
挨拶が出来る

などなど。

次に、そのなかで、「好きなこと」を選んでもらう。
つまり、苦もなく、ストレスなくできることはどれか?という問い。

営業成績は、いい方だけど、正直割り切ってやっている。
であったり、
ノルマに追われるのは嫌だけど初めての人と話すのは好き
といった、深掘りもしてみる。

見つからない人には、「楽しかった思い出」「達成感を感じたこと」を思い出してもらい、それを「好きなこと」に分解していく。

そんな感じで「できること」と「好きなこと」を行き来して、まずは自分の幸せに感じることを研ぎ澄ましていく。

そして、一呼吸おいて「なりたい姿」をこん詰めて考えてみる。

「ライター」という職業だったら「どんなライターになりたいか」まで詰める

「社会を驚かす人」だったら、どういうジャンルがいいかを詰めていく。


「エンタメ業界で活躍する編集者としてフリーで稼ぎたい」

くらいの情報まで詰めたら、先ほどの「できること」と「好きなこと」の思考実験と結びつけていく。

「なりたい姿」に対して「できること」のギャップはどれほどあるか?

そして、ギャップを埋めるために「できること」を拡張していくのだが、その最短距離は「好きなこと」を軸に伸ばしていくことだ。

だって「できること」は、どんどん努力で拡張できる。でも苦しい努力では効率が悪い。だから「好きなこと」で努力するのである。

そうしてこの3つをグルグルと回転させ、必要なものを研ぎ澄ましていくと、目指すべき未来がイメージ豊かになると同時に「やらなくていいこと」も見えてくる。

場合によっては「この会社にいてはダメだ」と思うようになることも。
実際、キャリアに悩んでいるスタッフと面談して、このサイクルの思考実験を繰り返した後にうちの会社を離れていった子もいた。

それは仕方がない。会社にとっても、スタッフの願望のすべてをかなえられるわけじゃないから、お互いにとってハッピーな選択だと思っている。

この3つのテーマをサイクルさせる思考実験は、夢見る20代に最適だが、むしろ成熟した30代、完成形に向かう40代にも有効なときがある。

できることだけを考えると世界が狭くなる

20代ではそうなのだが、30代ともなれば「できること」も増えて、世界はそれなりに広くなる。ただ、その「役に立つ感じ」に浸ることで、好きなことやなりたい姿を諦めがちになる。まだまだ可能性のある30代こそ、挑戦を忘れないためにもやっておきたい。

40代ともなれば「できること」の万能感もあり、それなりに食べていけるし、評価も受ける立場になっている。けれども「できること」だけやっていると、やはりいずれ「虚無感」を感じることになる。

40代であれば、自己を安定させるリスクマネジメント力もあるだろうから、現実社会のメインを「できること」でこなしつつ、もうひとつの世界、趣味とか副業とかの世界で「好きなこと」「なりたい姿」を実現するという道もある。そうなった方が、相当に幸せだ。


私自身も、この年の瀬、あらためて考えてみようと思う。
これからどんな自分になりたいのか?
そのために、今、何が出来るのか?
さらに成長するために、どの「出来ること」を拡張していくか
結局私は何が好きなのか



グルグルグルと。


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