呼吸不全とは?

【呼吸不全の定義】
1.室内空気吸入時の動脈血O2分圧が60Torr以下となる呼吸器系の機能障害またはそれに相当する異常状態を呼吸不全と診断する.
2.呼吸不全の型を2型に分け,動脈血CO2分圧が45Torrを超えて異常な高値を呈するものとしからざるものとに分類する.
3.慢性呼吸不全とは呼吸不全の状態が少なくとも1ヶ月以上持続するものをいう.
(厚生省呼吸不全調査研究班)

呼吸不全の定義

PaO2:動脈血酸素分圧 PaCO2:動脈血二酸化炭素分圧

ざっくりいうとこんな感じです.低酸素血症に加え,高炭酸ガス血症も合併しているとⅡ型呼吸不全となります.
これを更に細分化するとこうなります.

呼吸不全の分類

A-aDO2とは,[肺胞気-動脈血酸素分圧較差]のことを言います.これは計算によって算出するものであり,計算式は以下になります.

A-aDO2=PAO2-PaO2

PAO2:肺胞気酸素分圧,PaO2:動脈血酸素分圧

PaO2は血液ガス分析の結果を見ればわかりますが,PAO2は更に計算が必要です.ここでは大気圧 (760Torr) ,水蒸気圧 (47Torr) にします.

PAO2=FiO2×(大気圧-水蒸気圧)-PaCo2/8
   =FiO2×713-PaCO2/8となります.室内気の場合,FiO2が0.21なので
   =0.21×713-PaCO2/8
   =150-PaCO2/8となり,これをA-aDO2の式に当てはめると,
A-aDO2=PAO2-PaO2
     =150-PaCO2/8-PaO2 と簡略化することができます.
これであれば動脈血ガス分析の結果から算出できますね.吸入気酸素濃度が変化した場合は数値を変えて計算してみて下さい.
A-aDO2の正常値は10Torr未満,もしくは (年齢×吸入気酸素濃度+2.5) で求められるので,これ以上であればA-aDO2が開大していると言います.
A-aDO2によって病態は分かれますが,呼吸不全の原因は以下の4つのうちどれか (もしくは複合的) に当てはまります.

1.肺胞低換気
 肺胞換気量=[1回換気量-死腔量]×呼吸数 であり,呼吸中枢の障害や神経筋疾患,胸郭の変形では1回換気量の低下,COPDでは死腔が増加するため肺胞換気量が低下します.

肺胞低換気

2.換気血流比不均等
 換気と血流がマッチしていないため,ガス交換が上手くできません.気道内に痰が詰まっていたりすると肺胞内へのO2流入が減少するため,換気と血流にアンバランスが生じます.

換気血流不均等

3.シャント
 シャントというのは「短絡」という意味です.基本的には血流が0になってしまった状態を言いますが,換気が0でもシャントという場合があります.この場合O2を投与しても肺胞内に届かないので,静脈血は酸素化されずそのまま心臓に送られていきます.O2投与によって改善しないのがシャントの特徴です.

シャント

4.拡散障害
 拡散とは,濃度が高いところから低いところへと移動する現象です.水の中にインクを垂らしたときにゆっくり広がっていきますよね?ああいったイメージでいいと思います.
 通常,肺胞には酸素が多く,その周りの血液には静脈血が流れてくるのでCO2が多くなっています.この濃度差によって,肺胞内のO2は血液中に,血液中のCO2は肺胞内に移動し,静脈血は動脈血となって心臓に戻っていきます.拡散障害は,この移動が上手くいかないことであり,間質性肺炎や肺水腫で生じます.

拡散障害

原因によって対処の方法が違うので,呼吸不全が上記のどれによって引き起こされているかを考える必要があります.

呼吸不全についてはこんなところです.概要は理解できたしょうか?

【まとめ】
・呼吸不全とは,PaO2が60Torr以下であり,PaCO2が45以上か45未満かでⅠ型とⅡ型に分かれる.
・ガス交換障害と換気障害があり,それぞれの病態を考慮する必要がある.

以上です.ありがとうございました.


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