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DJ JIN interview vol.3

現在、渋谷The Roomでトップクラスの動員を誇る、新たなレアグルーヴを探求するパーティ「Soul Matters」。4月28日に行われるイベントに向けて、主宰の島がゲストのDJ JINさんにインタビューしました。JINさんとScoobie DoのMOBYさんが構想しラジオ番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』で放送された「ダチーチーチー特集」は、瞬く間に話題となり、その後、P-VINEからコンピレーションCDが発売されました。このブログで3回目となるJINさんへのインタビューでは、そのダチーチーチーを中心に、RHYMESTERの『ダンサブル』やMIXCD、そして7インチレコードについてお聞きしました。JINさんの感性や曲作りのルーツに迫る内容にもなっています。是非ご覧ください。

(以前行ったJINさんへのインタビューはこちらです)

取材・構成:島 晃一(Soul Matters / CHAMP)

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——JINさんをSoul Mattersにお招きするのは2年ぶりですかね。まさかThe Roomでご一緒できるとは思わなかったです。いやー、うれしいです!

DJ JIN(以下、J):いまもっとも精力的に動いている集団の1つですよ、ソウルマターズは。偉い!(笑)。

——恐縮です(笑)。前回インタビューしたのが2016年で、Cro-Magnon-Jinについてでした。今回はそれ以降のJINさんの活動をお聞きしたいのですが、なんと言ってもラジオで話題になった「ダチーチーチー」特集とコンピレーションCDですね。僕ももうクセになっちゃって。ドラムの「チー」っていうオープンハイハットの音に敏感になったし、ついダチーチーチーって口ずさんじゃいます(笑)。コンピのライナーに特集に至る経緯が書いてありましたが、まず、ドラムブレイクではなくドラムのフィルに着目したことに驚きました。

J:Scoobie Doと一緒になったライブの打ち上げで(Scoobie Doのボーカルの)コヤマシュウくんが「好きなブレイクビーツが入ってる曲を3つ教えてください」って聞いてきて。たとえば、Melvin Bliss「Synthetic Substitution」James Brown「Funky Drummer」Incredible Bongo Band「Apache」とか、代表的な曲を挙げるのは簡単なんですよ。でも「おれが注目してるのは、ドラムブレイクじゃなくてダチーチーチーっていうドラムフィルが入ってる曲すべてなんだよね」って言ったら盛り上がって。同じテーブルで聞いていた宇多丸も、これはラジオでいけるかもしれないと考えて、ダチーチーチーについてひたすら話す特集が実現しました(笑)。ニッチな企画だったけど大いに反響があり、晴れてダチーチーチーが日の目を見た。そしたら、第2回目の特集で、ダチーチーチーのオリジネーターであるBernard Purdieに突如取材することになった。いきなりラスボス登場みたいな、一気に終わってしまった(笑)。

——企画が立ち上がったと思ったら次に最終回が(笑)。しかも本人公認になったんですよね。ダチーチーチーっていう呼び方が。

J:そうそう。あの時はBernard Purdieに、自発的な形でダチーチーチーって言ってもらいたいっていう裏の目的があって(笑)。だから、質問するときにしつこく「あなたの考え出したダチーチーチーがですね」とか「ですから、あのダチーチーチーは」とかずっと言ってたら、Purdieも「チーチー」みたいなことを言い出した。で、最終的に「ダチーチーチー」という言葉が自発的に彼の口から。その瞬間、うちらもスタッフも全員目を見合わして、「聞いたか、ついにBernard Purdieがダチーチーチーって言ったぞ!」って(笑)。目的を達成しましたよ。

——展開が早すぎますね(笑)。

J:でもさ、Bernard Purdieで取り上げられるのってパーディ・シャッフルばっかりなんだよ。あらゆるドラマー、あらゆるジャンルに影響を与えたと言っていいダチーチーチーに、スポットが全然当たってなかった。だから、改めて触れておかないとまずいだろうと。


——実際にダチーチーチーを叩くとなると難しいですよね。タイミング合わなかったり。

J:MOBYも思いつきで叩くことはできないって言ってた。あそこでハメるぞっていう流れを作ってそこに向かっていかないと難しいみたい。

——下準備が必要なんですね。 匂わせておいて匂わせておいて、ダチーチーチーっていうのもありますよね。チーチーって焦らしておいて。

J:あとはもう「ハイここでどうぞ!」みたいなやつ。やっぱり華のドラムフィルだからね。あと、特集の影響かどうかは知りませんけど、新譜でもダチーチーチーの曲が増えてる。

——日本の曲ですか?

J:PUNPEEの新譜で「Lovely Man」にも入っていたり。知り合いがPUNPEEに聞いたら、それは海外のプロデューサーの曲で、たまたま入ってたらしいんだけど。Mitsu the Beatsも特集の噂を聞いて、ダチーチーチーを入れたビートを速攻で作ったという(笑)。

——おお、広がってますね。

J:あとはKREVAのドラマーで白根(佳尚)ちゃんっていう凄腕がいるんだけど、「ダチーチーチー意識しちゃってダメです」って言ってた(笑)。KREVAはそれまでダチーチーチーを封印してたって言ってたかな。でも、RHYMESTERのフェス「人間交差点」に出たときに解禁したのか、白根ちゃんに叩かせて。そしたらクレちゃんがステージ上で、「JINさん! 聞きましたか、今ダチーチーチー入りました!」って曲の最中に(笑)。白根ちゃんがダチーチーチー入れすぎないように途中でやめると、クレちゃんが「そこでやめんな」みたいな(笑)。嬉しいです。でも、音楽の新しい楽しみを提示したはいいけど、ダチーチーチーを知ってしまったら、もう知らずに楽しんでいた無邪気なあの頃に戻れないんだよ(笑)。

——パンドラの箱ですね(笑)

J:そこが恐ろしいところだよ(笑)。あけてしまったわけですよね。

——僕はフィルがあまり入ってなさそうな4つ打ちの曲にダチーチーチーがあると、それだけで買っちゃいますね。曲を買う基準がちょっとおかしくなるときがあります(笑)。

J:それは買うべきだよ(笑)。4つ打ちだと、意外なところで、ダンスクラシックClass Actionの「Weekend」とかも入ってる。あと、最近の曲でJose Jamesの「Live Your Fantasy」。あれは4つ打ち的な曲なのに加えて、打ち込みなのにダチーチーチーが入ってる。これは珍しい。

——JINさん自身に聴き方の変化はありましたか? Joseみたいな新しい曲でダチーチーチーが入ってるとやっぱり反応しちゃいますか?

J:もちろんですよ。新譜も旧譜もそうです。それまで無意識的に感じていたんだけど、意識した瞬間にもう戻れなくなってるし、SpotifyとかEvernoteのタグで「ダチーチーチー」ってつけてメモしてます(笑)。周りの音楽好きも「JINさん、これ知ってます?」みたいな感じで、みんながダチーチーチー調査員となってくれて、情報を教えてくれる。それでダチーチーチーをさらに好きになってしまう(笑)。これ知ってた? Sandi & Matues「The World」に入ってるんだよ。ヤバくない?! なんでそんな究極のレコードにダチーチーチーが入ってるのか。 Freedom Express「Get Down」にも入ってます。コンピに収録したAlice Clark 「Never Did I Stop Loving You」とかもそうだけどさ。究極の曲に入ってるんですよ。

——「The World」に入ってるのは驚きました。もう一生手に入らないかもしれない、まさに究極のレコードですよね。

J:あと、The "Great" Deltas「Tra La La」もダチーチーチーチューン。これも究極。

——ちなみに、JINさんのフェイバリットダチーチーチーを挙げるとしたらなんですか?

J:自分の調査の範囲内だと、ダチーチーチーが入っている最多の曲っていうのがTabby Thomas「Luck's Bound To Change」って詳細不明の7インチがあって、それは20回ダチーチーチーが入ってる。それに次ぐのがBill Withers「Use Me」の19回…と思っていたんですが、ダチーチーチー調査員、DJ Afro-Teeくんのタレコミがきました。Johnny Hammondの『Gears』に入ってる「Tell Me What To Do」っていう曲が、ダチーチーチー27回、チーチーチー8回、ダドンドンドン1回っていう、最多のダチーチーチー記録。Johnny Hammondの『Gears』って言ったらアルバム作品として、捨て曲なしのレアグルーヴクラシック。究極。そこに現状のダチーチーチー最多記録が収録されている。ぜひ聞いてほしいですね。

——こういう形でまた『Gears』が見直されるとは。

J:びっくりしましたよ。最近で最もインパクトのあった、どこにも公開していないダチーチーチー情報ですね。ダチーチーチー最多盤、Johnny Hammond『Gears』。

——ダチーチーチーってDJ的な聴き方の一つの極点という気がしますね。ドラムブレイクのさらに短い所にこだわる、超フェティッシュな聴き方。

J:パーツにこだわりすぎて(笑)。

——もう2拍なんだっていう。どうやって気付くんですか? 例えば、Johnny Hammondみたいなケースだと、ふと聞き直してみたら入ってた感じですかね?

J:Johnny HammondはAfro-Teeくんに気付かせてもらったけど。そうだね、例えば「この曲はやっぱり何度聴いてもいい曲だよな」って思ってると、「おいおい入ってんじゃん」と。そういえば、おれが長年に渡りかけ続けているDamn Sam The Miracle Man And The Soul Congregationの「Smash」も入ってますね。あれはダチーチーチーじゃなくて、ダチーチーチーチーチーなんだよ。キメのところで合わせて入ってる。

——「Smash」の元ネタ的なTower Of Power「What Is Hip」ってファンクの名曲ありますよね。MOBYさんが編集した『ダチーチーチー補習編』っていうSpotifyプレイリストにも入ってました。

J:それね、「What Is Hip」について言うと、実はDamn Samの「Smash」の方が先なんだよ。だから、Tower Of Powerがマイナーなところからパクってる可能性がある(笑)。それもダチーチーチーを意識したあとで気づいた。そういえばあの曲の発表年はと思って調べてみたら、Tower Of Powerが後だった。まあ、もう何十年も昔の音源だけど。

——それにしても、ダチーチーチーのコンピ収録曲を眺めてみると、レアグルーヴ名曲には軒並み入ってるように錯覚してしまいます。

J:P-VINE音源だけでもこうだからね。Kashmere Stage Band「Kashmere」とかさ、おお、これはみたいな。それとLemuria「Hunk Of Heaven」ブリカン(The Brief Encounter)の「The Breif Encounter (Introduction)」Harris and Orr「Spread Love」。やっぱりいい曲には入っちゃってるんだよ。

——逆に、今までそこまで好きではなかったけど、ダチーチーチーが入ってたことによって好きになった盤とかありますか?

J:ないと思うな。ダチーチーチーは永遠の輝きだから。自分の場合はちょっとおかしくなっちゃってますから、ダチーチーチー入ってて、この曲ダメだなって曲は1曲もないね(笑)。すべてが素晴らしいし、素晴らしく聞こえてしまう。こんなこと言ってるといつか怒られる(笑)。ダチーチーチーのくだりは基本的にご笑納くださいって伝えておかないと……。

——やっぱり、いいと思ってた曲がもっと光り輝くという。

J:そうね。若い頃Guns N' Rosesも好きだったんだけど、『Appetite for Destruction』という大ヒットのロックの名盤を聴き直したら、やっぱダチーチーチーが入ってたとか、むしろ前向きな発見しかない。名盤名曲には付きものっていうね。Kamasi Washingtonの『Epic』も「Cherokee」に入ってて。あれはダチーチーチーじゃなくて、ダチーチーチーチーチーチーか。2倍、2倍で入ってますよ(笑)。他にもLeroy Hutson「Lucky Fellow」とか。

——ああ、そうか!

J:もうさ、うわぁってなる曲ばっかじゃん! あとLed Zeppelinにもありましたね。「Royal Orleans」って曲。正確にはダが入ってるか微妙で、チーチーチーじゃないかって言ったら、MOBYが「John Bonhamですから、これは認定で!」って(笑)。でも実際、John BonhamはPurdieから影響受けてるからね。

——すごく意外だったのがコンピに入ってたOmar「Simplify」ですね。

J:そうそう、新譜のソウルで。いまだに生き続けるダチーチーチーね。70年代前半のオールドスクールなドラムフィルって印象があるから、モダンなやつで入ってると嬉しいよね。さっき言ったKamasi WashingtonとかJose Jamesとかもそうだけど。ただ、(The Rootsのドラマー)Questloveは意識して入れてないと思うんだよね。Questloveのドラムでダチーチーチーって聞いたことない。

——生でヒップホップのビートを叩くときに、70年代のソウルファンクとは違くしたいって感じですかね。

J:そうなんだよ。打ち込み的な、マンマシーンならぬマンMPC的なのがQuestloveのドラミングのポイントだから、それからするとやっぱりダチーチーチーみたいな、いかにも生ドラムっぽいフィルは入れたくなかったんじゃないか。だからむしろ教えて欲しい。みなさん、これをきっかけにQuestloveのダチーチーチーを探してみましょう。よろしくお願いします(笑)。

——だから、Jose Jamesで入ってるのも新鮮ですよね。打ち込みなのにダチーチーチー入ってるだけで生っぽく聞こえますよね。

J:そうそう。で、あとは日本のヒップホップだけど、JJJっていうさ、彼の去年出したソロアルバムで「PLACE TO GO」って曲に打ち込みパターンのダチーチーチーが入ってました。「ニュージェネレーションにも来た!」っていう(笑)。おっさんは、非常に嬉しがっております。きっと、おれのツボをグッとつくような好きな曲作りのパターンがあるんだろうね。半音展開するパートがあったりとか。ダチーチーチーもそのパターンの1つなんだよ。まぁフェティッシュな聴き方、もしかしたらDJ的な聴き方なのかもしれないけど。要素を抽出して聴くという。

——今回ダチーチーチー特集を聴いてみて、RHYMESTERのアルバムの聴き方も変わった気がします。最新作『ダンサブル』のJINさんプロデュース曲は、特集を始めるきっかけにもなったモカキリ(Mountain Mocha Kilimanjaro)のTigerさんが叩いてますね。「Don't Worry Be Happy」はファンクの後、スウィングジャズが入ってくる面白さがあって。その間の架け橋になるのがTigerさんの「チー」っていうオープンハイハット。

J:Tigerくん、ダチーチーチーの理解度もすごいし、ドラマーとしてももちろん最高です。巨匠エンジニアの奥田くんが「彼は素晴らしいですね。スネアとハットが張り付いている」って独特の表現で形容してたね。「Don’t Worry Be Happy」は、ラジオの「ダチーチーチー特集」の前に作った曲で、完全にダチーチーチーではないけど、ダチーチータタンっていう似たフレーズが奇しくも入ってしまってる。ダチーチーチーが思いっきり入ってるのはRHYMESTERの「REDZONE」という2005年の曲。あれはブレイクビーツのサンプリングで作ったんだけど、もう連発みたいな。ラジオの第1回の特集が終わったあとに、MOBYに言われて気づいた(笑)。13年も前の曲に連発で入ってるくらいだから、根っからのダチーチーチー好きなんだよね。

——JINさんの体に染み付いてるというか。オープンハイハットの音ってかなり耳に残りますよね。

J:MOBYもそれ言ってたんだよ。マイクの立て方もあるけど、すごく前に出てくるからアクセントになるキメなんだよね。一見、聞き流してしまいそうなのに、存在感がすごい。メンバーに言われるんだよ。「JINの曲はキメが多いからなー。逆にやりづらいよ」って。「すごい主張してくるんだよキメが。これに合わせざるを得ないじゃん」って(笑)。

——JINさんプロデュースだと「爆発的」はダチーチーチー使ってないですよね。Big Daddy Kaneみたいなファストラップ。

J:アルバム制作の最初の打ち合わせの時に、スピットするようなファストラップを久しぶりにやりたいって話が出て。最近のヒップホップはちょっとダルい感じのラップスタイルが流行りだから、長いキャリアの我々が真逆をやるのは面白いんじゃないかと。で、おれはファストラップ大好物だからアイデア出して、モカキリにまた手伝ってもらったのが「爆発的」です。

——あそこまで詰まってるドラムって、最近ではあまり聞けないですよね。客演のHUNGERさんのラップを聞いて、GAGLEの「黒フェッショナルMC」も思い出しました。

J:あれもナイスファストラップ。日本のヒップホップのかなりいい曲ですよね。Mitsu The Beatsさすがだな、おれを狙って刺してきたなって勘違いしちゃうくらい(笑)。素晴らしかった。

——速くて詰まってる曲は僕も好きですね。あとは速いファンクとか。でも、最近は速いファンクってかけにくくなってるような気がして。DJがそれを言ってしまってはダメかもしれないですが……。

J:わかる! 先日DJでBPM120くらいのファンクかけてたら、ちょっと若い子から「JINさん攻めてますね~」って言われて。「120台で攻めてる? これくらいのスピードでビビんないでくれよ」みたいなさ(笑)。おれはむしろBPM130オーバーとかのファンクも大好き。だから今度のSoul Mattersは130台以上行きますよ、もうピューっと。スピード違反。みなさん、準備しといてくださいね(笑)。

——僕も速いファンクかけたいですね。RHYMESTERが「爆発的」出すのもすごい意味があるなぁと。にしてもJINさんも感じてるんですね、速い曲のかけづらさ。130以上のディスコも少し厳しくなってきたような。

J:それもすごいわかるな。最近、テンポが速すぎると4つ打ちのディスコは少し厳しく感じる時がある。せめて120前半くらいで落ち着かせておきたい、そういう感じもある。やっぱりブギーがBPM115前後じゃん。だからそのくらいの感じが今の時代なのかな。でも、BPM130以上のファンクはかけたい。島もSoul Mattersで速いファンクかけなかったらダメだよ。一緒にかけていこうよ。

——じゃあ今回は速いファンクでJINさんにバトンを渡したいですね。

J:速いファンクのバトンタッチ、楽しみだな。なんだろう、今足りないのは速いファンクだな。でもそういう時代の流れだからこそ、ないものを提示することも大事だと思うよ。

——ちなみにJINさんが速いファンクを好きなのって、ファストラップの影響でしょうか? 

J:ファストラップはヒップホップ聞き始めたころから好きだから、もうデフォルトで入っちゃってるね。ダチーチーチーと同じで、抽出された好きな要素にBPMが速い曲がある。でも、不思議なもんで、それ以上速くなって、半分でもカウントとれる曲ってそこまで好きな曲は多くないんだよ。ファストラップとかファストファンクほどではないみたいな。BPM130から140いったあたりからどうテンポをとっていくか、そこに自分の感性のミソがあるのかもしれない。

——今日はダチーチーチーを中心に話を聞いてきたんですが、MIXCD『Music Journey #01 』、続編の『Music Journey #02 』の話もお聞きしたいです。

J:『#01』にあるDayton「The Sound Of Music」から Frank Ocean「Sweet Life」の流れは、前に島のインタビューで語ったBPMを落としてジャンルも変化させる流れ。Frank Oceanくらいのタマだったら落としてもグルーヴの熱量はキープできるみたいな、そういう理論ですよね。

——ダチーチーチー話になっちゃうんですけど、MIXCDの最後の曲、Sly, Slick & Wicked「Surely, Is You Is Or Is You Ain’t My Baby」にも入ってる。これで終わるの好きですし、JINさんのかけ姿も浮かぶ。

J:そうなんです! MIXCD出し終わった後に気づいた。「おれが長年かけ続けてきたこの曲に、やっぱり入ってる。どこまでもおれってやつは」っていう(笑)。

——『#02』は意外と入ってないですね。『#01』と『#02』で違いを意識しましたか?

J:最初に出した方は、普段「Breakthrough」のパーティでやってるような、クロスオーバーしてて、どこを切ってもいい曲みたいな選曲を。それでいて、BPMの上げ下げの遊びもあったり。あとは家とかお店のBGMでかけられる心地よさは意識したかな。『#02』の方はRHYMESTERのアルバム『ダンサブル』を出したこともあって、ダンサブルです(笑)。お、『#02』は速いファンクが入ってるねぇ! Hugh Masekela「Son Of Ice Bag」、Spencer Davis Group「I'm a Man」とかね。いろんなファンクの名曲で「I'm A Man」パターンのグルーヴの作り方もあるよね。D.LことコンちゃんがDJでかけてたのも思い出します。『#02』は「In Business」のパーティとかに近い感じかもしれない。インビジの方がもっと突っ込んだ曲多いけどね。

——この2つのMIXCDから7インチを出しましたよね。それは最初から考えていましたか?

J:そう、当初から。ここのミックスに収録した曲で、7インチカットしたいやつがあるから、やってみましょうって。そのなかでOKとれたのがThe Jackson 5「It’s Great To Be Here」、Johnny Pate「Shaft In Africa」、Archie Shepp「Blues For Brother George Jackson」、あとはHearts Of Stone「What Does It Take (To Win Your Love)」になった。

——初の7inch化となった3曲についてお聞きしたいです。まずはフリーソウルクラシックでもあるHearts Of Stone「What Does It Take (To Win Your Love)」、本当にいい曲ですよね。

J:最後もかき回しのカットアウトで終わるから、DJ的にもつなぎやすい。

——ジャズファンク名曲、Archie Shepp「Blues For Brother George Jackson」も初7インチ化ですよね。これはびっくりしました。

J:ありがとうございます。ちなみに、Archie Sheppのこの曲をアルバムで聴くと、次の曲のインタールード的なポエトリーと混ざって、最後かき回しのカットアウトで終わるのね。でも、アメリカから送ってもらった単曲のマスター音源だとその手前でフェードアウトしちゃってて。で、ユニバーサルのスタッフさんから「JINさん、これですか?」って確認がきて。「いえいえ 最後のかき回しまで入れないとDJ的には意味ないんです」って。そしたらスタッフさんが意図を汲んでくださって「わかりました。じゃあ日本のマスターを使いましょう」と、LPのマスターを調達してくれました。それでかき回しのカットアウトまで入れられることになった。

——いい話ですね。

J:Spotifyとかで聞いてても、曲単体で「Blues~」を取り出すとフェードアウトしちゃうの。フェードアウトされたらつなげられる曲が限られちゃうから、完全にフルで入れたっていうのは大きいと思います。

——そして最後、Jackson 5も初の7インチなんですね。意外でした。

J:そう、ブートではあったけどオフィシャルは初めて。不思議だよね。Kenny Dopeがリミックスしたりしてるから、誰かが7インチ再発しててもよさそうになのに。実際、モータウンのオフィシャルのラベルで、7インチの「It's Great To Be Here」がバンって出てきたときは「おお、これこれ!」って感動したよ。

——クラシック中のクラシックですもんね。レアな7インチが再発されてDJでかけれるようになるのも嬉しいですけど、LPしかない曲を7インチにっていうのも重要ですよね。

J:やっぱり、シングルの方が音圧とか使い勝手の良さがあるから。あとさ、Hearts Of Stoneもそうだけど、LPの1番内側に収録されてる曲が7インチになると余計に嬉しいよね。レコードの特性で、33回転は内側にいくほどどうしても音が薄くなるというか、情報が減っちゃうから。DJする時も溝の位置的に使いにくいしさ。最近そういう形で7インチ化されたのだと、James Masonの『Rhythm Of Life』のA面、1番最後の曲「Funny Girl」とか、おお嬉しいって思ったもんね。Mighty Ryeders「Help Us Spread The Message」もだね。あと、おれはLPでかけてるけどMessengers Incorporated「Twenty Four Hours A Day」の7インチ化もいいよね。Lyman Woodard Organization「Creative Musicans」って7インチになってるのかな。なってなかったら7インチにしてほしい。LPの1番内側の名曲を7インチにしていく企画。それお願いします。

——今挙げた曲は所謂レアグルーヴ名曲ばかりですね。そういえば既に名前が出てるAlice Clark「Never Did I Stop Loving You」もそうですね。LP内側の曲が7インチ化。Alice ClarkのLPは異様に音圧ありますけどね。

J:でも、45回転の方がハウリングはしにくいとは思うんだよね。33の方がハウリングする。それにしてもAlice Clarkは本当色褪せないよね。

——戻っちゃいますけど、RHYMESTERのファンの方で、ダチーチーチーのコンピ聴きましたって声かけられることありますか?

J:もちろん。DJしてても、ダチーチーチーのあの曲だって気づいてくれたり。特集があることで、聴いたことない人が聴いてくれるわけじゃん。それが嬉しいよね。DJとしていい曲は1人でも多くの人に届けたいから、名曲に触れてもらうきっかけになってよかった。極端な言い方ですが、Alice Clarkを通らないよりはAlice Clarkを通った人生の方がいいと思うんですよ(笑)。人生の情感が豊かになると言いますかね。ところで、ダチーチーチーをこれだけ前振りしてる以上、Soul MattersのDJの時は意識していかなきゃいけないということですね。

——はい、僕も他のメンバーに「皆さんは4つ打ちが多いのできついとは思いますが、フィルを意識してください」とは言いました(笑)。

J:あ、そうなんだ。島もダチーチーチーを? じゃあ、今回のパーティのキーワードはダチーチーチーと速いファンクだね。楽しみですよ(笑)

【リリース情報】
RHYMESTER『ダンサブル』
http://www.rhymester.jp/disco/danceable/

V.A. 『ダチーチーチー』
http://p-vine.jp/music/pcd-18828

V.A. 『Music Journey #01 -Classics Crossover- mixed by DJ JIN』
https://store.universal-music.co.jp/product/uicz1636/

V.A. 『Music Journey #02 -Floor Filler- mixed by DJ JIN』
https://store.universal-music.co.jp/product/uicz1657/

【DJ JIN (RHYMESTER/breakthrough)】
http://www.rhymester.jp/bio-dj-jin/
Twitter:https://twitter.com/_dj_jin_

【島 晃一(Soul Matters / CHAMP)】
Twitter:https://twitter.com/shimasoulmatter

島 晃一の執筆仕事一覧はこちらです。
https://note.com/shimasoulmatter/n/nc247a04d89ed

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