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何度も浮上しては消え、を繰り返してきた9月入学の動き。
今回は、新型コロナという見えざる敵と闘う中、急浮上しました。
9月入学の動きがみられてから見送りという結果に落ちつくまでを時系列でみていきたいと思います。

これまでのおもな動き

2/27 ・安倍首相が3/2以降の小中学校の春休みまでの臨時休校を要請
4/1  ・都立日比谷高生徒がSNSを投稿
    (「学校のはじまりを9月にしてぼくたちの学校生活を守る話」)
    ・大阪の高校生が署名活動開始
4/7  ・緊急事態宣言発令により春休み後の長期休校決定
4/27  ・国民民主党9月入学移行について議論開始、ワーキングチーム結成
    ・日本維新の会、9月入学への切り替えを安倍首相に提出
    ・萩生田文科省が記者会見で「一つの選択肢」との見方を示す
4/28   ・宮城知事がウェブ会議で9月入学・始業提案
4/29   ・全国知事会で東京都知事が学校の9月入学に賛成
     大阪府知事神奈川県知事もそれに追随
     ・安倍首相、9月入学・進学を検討する姿勢を示す
5/1   ・文科省が9月入学をめぐり論点を提示
5/8   ・政府は9月入学について本格的に検討を開始
5/11    ・日本教育学会は性急な9月入学以降論への問題点を表明
5/12    ・自民党が「秋季入学制度検討ワーキングチーム」の初会合を開催
5/19    ・文科省は9月入学を開始した場合の2つの事例を提示
5/24    ・文科相、3つめの事例として「0(ゼロ)年生」案を提示
5/25    ・調査の結果市区長の8割が9月入学に慎重か反対であることが判明
5/27    ・来年の9月入学案見送りで検討
6/1   ・安倍首相、9月入学を正式に断念
6/4   ・全国知事会、「高校教育のありかた研究会」設置

きっかけは男子高校生のSNS・署名活動から

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4月1日、現役の男子高校生がSNSにある投稿をしました。

僕の個人的な考えですがゴールデンウィークにコロナウィルスがおさまっているとは思いません。実際SARSの時は終息まで半年ほどかかっています。
これから先学校は一ヶ月ごとにずるずると休校期間を延長、延長と繰り返していくと想像します。

わたしたちの授業や他愛もない学校生活はその延長のたびに減っていき来年の三月には終わりがきます。始まりはどんどん遅くなるのに、終点は変わってくれません。

ここは、新学期の開始を9月1日に置き学期の周期を半年ずらすことが最善であると考えています。

入学や卒業、入学者選抜すべてを半年ずらすのです。
日本独自の学期制を廃止し、アメリカなどの諸外国でメジャーな9月から始まる学期制にこの機会に変えてみると言う話です。

(コロナが9月までには終息していると言う前提ですが)すでに失われた学校生活。失われるであろう今年度入学式等のイベント。それすべてに実行の可能性を与えてくれます。(また、それだけでなく、受験シーズンを雪やインフルエンザの流行る時期から離すことができたりもします。)(海外と時期が合うことで今まで以上に活発な海外の学校への進学留学や交流も見込めるかもしれません)

ある意味で学期の始まりをずらすチャンスは今しかありません。千載一遇のチャンスであると捉えることもできます。

それに伴う経済的なロスや大人たちの大変さはもちろんあると思います。有識者から見れば素人の妄言なのかもしれません。

でも、僕は渦中の学生の一人として家で黙って終息を待つだけではいられません。どうしても一度可能か、そしてそれが実行に値する価値があるかを皆さんに、国に考えてもらいです。
(原文ママ)

この高校生の投稿が大きな反響を呼び、大阪では署名活動が始まり、SNSでも賛否両論、意見が飛び交いました。

4月1日というタイミングは新学期のはじまりと重なります。
このころあたりから「もしかしたら春休みが終わっても学校に行けないかもしれない」という声がわが家の子どもたちからも出ていました。

特に、我が家では二人とも受験を控えており、例年では早いところでは3月末あたりからオープンキャンパスが始まるのですが、今年度は6月になった今になりようやく動きを見せ始めている、といったところです(オンラインに切り替えている学校が増えており、オフラインの場合は様子を見ながら7月もしくは8月から学校訪問が可能になるというアナウンスをしている学校が多いようです)。

また、進級の子どもたちはともかく、新たな学び舎に進む子どもや保護者たちは情報が錯綜していて大変だったことと思います。
実際、娘が通っている私立女子校では、最終的には始業式が6月2日、入学式は8月31日となりました(式は8月ですが、既に6月から他の学年同様段階的に通学を開始しています)。

いままでに経験したことのない休校措置の実施で学校も子どもたちも疲弊・混乱していたのではないのでしょうか。

その中でのSNS投稿は、一人の現場の声として吸い上げられ、ほどなくして知事や首相までもが前向きな発言をすることとなりました。

政治家たちがワーキンググループを結成、検討開始

生徒の声、首長たちの声を呼応するかのように、国民民主党、日本維新の会がいち早く反応しました。
政府もそれに追随し、萩生田文科相を中心に動き始めました。
文科相が論点整理をし、正式に検討会を開始しました。

文科省が9月入学を開始した場合の2つの事例を提示

文科相が9月入学を開始した場合の2つの事例を5/19に提示しました。

①2014.4.2~2015.9.1を新小学1年生とする。
②2014.4.2~2015.5.1を新小学1年生とし、1ヶ月ごとに緩やかに移行し、学年ごとの偏りや教員不足を最小限にする。

NHKの記事に図解入りでわかりやすく説明しています。

その後、三例目として5/24に「0年生」構想を提示しました。
③2014.4.2~2015.4.1+2015.4.2~6.1生まれが一学年となる。2021年に幼稚園・保育園を卒業したあと、0年生として4月~8月までを過ごし、9月からの1年を1年生として過ごす。

こちらの図解をみるとわかりやすいと思います。

また文科省は、学校の入学時期をずらして9月入学にした場合、小学生~高校生のいる家庭が追加で負担する費用の総額は2兆5000億に上るとの試算を明らかにしています。


9月入学に対する国民の反応

多くのメディアを通して、9月入学についての世論調査が行われました。

日本経済新聞の世論調査
全体で、9月入学に賛成56%、反対32%。

(地域別)
・特定警戒都道府県では、9月入学に賛成59%、反対30%
・特定警戒都道府県以外では、9月入学に賛成52%、反対36%
(世代別)
・18~39歳 66%が賛成、28%が反対
・40~59歳 59%が賛成、32%が反対
・60歳以上 50%が賛成、35%が反対
読売新聞の世論調査
全体で9月入学に賛成54%、反対34%。
(地域別)
・特定警戒都道府県では、9月入学に賛成59%、反対32%
・特定警戒都道府県以外では、9月入学に賛成47%、反対37%

日経、読売ともに似たような数値となりました。
地域別という観点からみると、特定警戒都道府県のほうがより9月入学に対する関心の高さがうかがえます。
また、各年代別にみると全ての世代において半数以上が賛成と回答しています。
元データが消えてしまったためこちらには載せておりませんが、FNNとサンケイの合同世論調査によると、男性は30代の82.0%、50代の53.9%、40代の53.1%が賛成、女性は10~20代の63.5%、50代の59.4%、30代の58.1%、60代の39.1%が賛成と回答しています。

9月入学に移行した場合のメリット、デメリット

世論調査とともに、9月入学に移行した際のメリット、デメリットについても多くの意見が寄せられていたので紹介します。

メリット
・感染リスクの懸念のある状態で、学校の再会を急ぐ必要がなくなる。
・失われた学習機会を9月開始にすることで取り戻すことができる。
・世界基準にあわせるため、留学がしやすくなる。
・入試時期がずれるので、インフルエンザの流行、雪の時期を避けることができる。
・学校行事の実施が可能になる。
・夏休みの確保
デメリット
・待機児童の増加や、教員数、教室数の不足が懸念される。
・台風の時期と受験が重なる。
・カリキュラムの未整備により学びの機会が奪われる。
・年子の家庭では、将来的に学費面の負担がかかる。
・進学・就職に不利になってしまうのではないかと懸念される。
・幼稚園や企業との接続の問題。
・入試などの大幅な学校スケジュールの変更をしなければならない。
・新型コロナが終息するかがわからない。

なお、待機児童の数、不足している教員の数については、苅谷剛彦・英オックスフォード大教授の研究チームが影響を試算したものを参考までに載せておきます。

結局今回は見送り

結局、今回も9月入学は見送りとなりました。
私個人としては9月入学に基本的には賛成の立場をとっています。
理由としてはこれからグローバル社会に立ち向かう世代には、日本のみならず海外にも目をむけて欲しい、海外留学という選択肢もある、という意味においてスケジュール的にも世界水準に合わせるほうがいいのではないかと感じているからです。
ただし、今回に関しては反対としました。
理由としては、準備期間があまりにも短すぎたことと、新型コロナによる学習の遅れを取り戻すための9月入学、という点からでした。
新型コロナについてはこのあと第二派、第三派がくるおそれが十分あります。
今朝のニュースで、アメリカ・ニューヨークでは一日当たりの新規感染者数が4万人を突破したという心配なニュースも飛び込んできています。
日本も必ずしも例外ではないと思います。
9月入学に急いで移行したあと、第二派がきてしまったとき「だから、やらないほうがいいって言ったでしょ」という人が一定数でてくると予想しています。
今までの社会システムとの兼ね合いもあるので、時間をかけてゆっくりと着実に進めていく方がいいのではないかと思います。



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