見出し画像

なんの話なハナシ

前回書いた偶然の重なりの経験で、過去にあった奇妙な体験を思い出した。初めに言っておくと、心霊現象とかの類ではないです。

前回書いた偶然が重なった話

今の夫とはまだ恋人の関係だった時。夫とは地元が近かったが、その頃彼は東京に住んでいて、特に何も考えず過ごしていた私は彼を追いかけるように大都会トーキョーで一緒に暮らすことにした。

東京の中では下町と呼ばれる場所に住んでいたが、最寄駅から自宅までの道中に24時間空いているスーパーがあった。

私は飲食店でバイト店長のようなものをやっていたので、ラストまでいる事も多く帰りが遅くなることもしばしば。

帰り道に寄るスーパーの煌々とした青白い灯りと眠そうな店員の態度は疲れた体を余計に重くさせるが、コンビニよりも安価で食品を手に入れられるのはありがたかったので文句は言えない。



当時私はヘッドフォン(イヤフォンではなく耳を覆うタイプのもの🎧)をつけて音楽をガンガンに鳴らして外部の音をシャットアウトしていた。

遅すぎる夜ご飯にカップ麺を選んでいた時、斜め後ろから何やら気配を感じた。

振り向くと、見知らぬ外国人が何か話しかけてきていた。
私はヘッドフォンの片方をズラして、なんですか?と眉をしかめた。

見下ろすように、綺麗なブルーの瞳をコチラに真っ直ぐに向けてこう言った。

「それが晩御飯かい?」

私は英語が話せるわけではないし、なんなら苦手な科目だったがなんとなくなら聞き取れる。

いや、聞き取れたはいいがヘッドフォンを外させてまでそれを問う意味が分からない。なんなんだよ。

そうだよ。とだけ答えてまたヘッドフォンを戻してカップ麺をカゴに入れ、次は朝ごはんの菓子パンを選んでいた。

するとまた気配を感じる。またブルーアイのアイツだわ。今度はヘッドフォンを外さずに気配のする方に顔を向けると、また何か話しかけている。

仕方なく私は音楽を止めヘッドフォンを首に下ろして、なに?と聞くと

「君はまさか朝ごはんをその中から選ぶつもりかい?」

まじで大きなお世話すぎる。
私はこれが食べたいねん!さっきからなんでそんなに聞いてくんの?!
とバリバリの関西弁で返してやった。言葉は伝わらなくとも気持ちは伝わったはずだ。

「君の健康が心配だよ。ほら、ぼくは朝ごはんにフルーツを食べるよ。ミルクもこれがいいんだ。」

ほほぅ。それで?

「ぼくが君の朝ごはんを選んであげるよ。このシリアルなんかはどうだい?体に良さそうだ。」

一体私は誰に何のアドバイスを受けているのだろうか。ワケも分からないし、彼のおすすめしてくるものはどれも予算オーバーだ。
どれも高いからいらない。ノーマニー!
と言い放った。

肩をすくめるブルーアイは、ようやく声をかける相手を間違えたことに気づいた様子。

再びヘッドフォンを装着し、Ipodの再生ボタンを押そうと思ったら

「ところで何の音楽を聴いてるんだ?」

性懲りも無く話しかけてきたので
daft punkだよ。
そっけなく返すとブルーアイはさっきよりぐんっと距離を詰めてきて

「本当に?!ぼく、東京公演へ行ったよ!君も行ったのかい?!」

いや、まさに今聴いてるの、その東京公演のライブ音源なんだけど。

わぁお!と握手を交わし一緒にレジに並んだ。彼のお会計は確か1892円だかなんかで、千円札と小銭を890円まで出したのに2円がなく、千円札をもう一枚出そうとしてたので、トレーに2円をほいっと置いてあげた。

「オゥ!センキュー!」

ええよええよ。と言い、軽い挨拶をしてそれぞれ帰途につく。

それから約1ヶ月後、そのブルーアイの外国人を最寄駅で見かけた。
とても美人なモデルみたいな日本人女性と腕を組んで歩いていたところだった。

やっほー!覚えてる?
と声をかけると、横にいた美人モデルはこちらを下から上にかけて目線を動かせた。

「やぁ...!ごめん、またね!」

とブルーアイは何度も振り返る美人モデルを連れて足早に去っていった。

頼んでもいないのに健康を心配され、邪険に扱ったにも関わらず音楽で少し距離が縮まったあの夜は何だったのだろうか。

健康的な体でないと、こんな扱いを受けてしまうんだよという壮大なメッセージだったんだろうか。

いや、なんなんだったんだよ全く。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?