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東京ではじめての一人暮らし。

自己紹介(6)
❇︎自己紹介はこちらにまとめてあります。

ジャパンアクションクラブを退部後、東京で暮らすことを決意。両親を説得し上京するにはなかなか苦戦した…と思う。
だってこないだまでスタントマンを目指していたというのに。今度はいきなり上京? 21、2の若い娘が東京などという暗黒の世界に一人向かうだと?わたしが親ならまず止めたかな。間違いない。
この辺の記憶がイマイチ曖昧だけど、両親は引越しを手伝ってくれたし、娘を一人置いて二人で玄関を出るとき、母は泣いた。気が強かった母の涙はわたしにはかなりこたえた。

埼玉県の所沢。駅から徒歩15分のワンルーム。家賃は45,500円。人生初めての一人暮らしが始まった。

009_上京

↑こんなソファなんて置けない部屋だったけど。

そして上京後初めて勤めた会社は、文字や紙などを扱うレタリングの会社。そもそも紙が大好きなのだ。
求人誌には「新聞や女性誌などの編集、制作をしていただくお仕事です。」と記載されていた。

ところが入社してみるとそこは、なんともアダルティな職場だった。社員はノーマルなんだけど扱うものがアブノーマル。女性誌といえば女性誌だけど、ちょっと意味が違う。
そこは見渡す限りエロ本だらけ。若かりし頃のわたしの目にはなんとも刺激的なものばかりが溢れていた。この暗黒の世界…とても両親には言えない場所である。

ナマ原稿(画像)を扱うため、手にするものはもちろん未修正のものばかり。最初は目のやり場に困ったり恥ずかしがっていたわたしもしばらくすると慣れたものでこの仕事にやりがいさえ感じていった。

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ただこの会社、求人誌には社内でほんの一部取り扱っている人気女性誌や情報誌のみをアピールしている。エロ本制作だって立派な仕事だ。需要がどれだけあると思っているんだ。仕事内容の詳細には自信を持ってこう記載するべきだ。

「主にエロ本を扱った制作会社。90パーセントはエロいよ。」

応募者が後を絶たないんじゃないかと思うんだけど。無理か。
このような素晴らしい仕事を約8年ほど続けていた時。ひょんなことから一枚のポストカードを受け取った。男女の背中越しに見える美しい海の写真。従兄弟からのハガキだった。カレはカメラマンになっていた。

ショックだった。この言葉がぴったりとくる。何故かすごくショックだった。カレは、自分の進むべき道をしっかりと見つけ、進んでいる。確実に前進しているカレの姿をカード越しに見ることとなり、ガツンと一発やられた気分となった。

素晴らしいことである。本当に嬉しいことなのだ。従兄弟の今に、頑張ったんだねとお祝いのエールを送りたい。
その反面、自分がどこか忘れようとしていたものを強烈に思い出すこととなって、すごく複雑な思いになった。衝撃であり愕然とした気持ち。そう本当に複雑な、ごちゃごちゃな気持ちとなった。

011_従兄弟


わたしはここで、何をしているんだっけ…。

自分の今のこの状況を、改めて見直すきっかけとなった。エロ本を作ることを否定しているわけではない。わたしは東京に住んでいる。やろうと思えばなんでもやれるであろうこの恵まれた環境で、わたしは一体何をしているんだっけ。

西暦2000年頃のこと。スマホやSNSどころかメールさえ今ほどは普及されていない、まだまだアナログの時代であった。東京という、日本の中心となるその場所は、まだまだ多くの若者の憧れとなる場所だったのだ。今では信じられない話だけれど。
衝撃を受けたこの日からわたしは約8年ぶりに、急激に動き出すことになる。

自己紹介(7)へつづく。

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