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M10モノクローム 白黒写真に、白と黒は無し

初めてのライカは、2021年に買ったM10モノクロームです。カラー写真を撮ることができず、モノクロ専用の超マニアックなカメラです。
2024年現在では、モノクロ専用カメラとしてライカM11モノクローム、PENTAX K-3 Mark III Monochromeも加わり、モノクロ写真の人気が高まっています。

今回はM10モノクロームの購入に至るまでの経緯や作例、モノクロ専用カメラについての感想をご紹介します。

それまでカメラといえば、オートフォーカス命、最新デジタルカメラを使っていました。年々画質は向上し、オートフォーカスの性能も上がり、狙った瞬間をほとんど逃すことなく、確実に撮れることに快感を覚えていました。

でも「これって誰でも撮れるのではないか、カメラがいいだけではないのか」そんなことが頭をよぎりました。高性能な車に乗って、アクセルを踏むとすごいスピードが出るのと同じです。そんな時、知り合いが「α9を買ったけど、今までよりさらに凄くなったよ」と教えてくれました。そこで自分の中では、「もうそういうのはいいかな」と思い始めました。

どんなゲームでも、初めは簡単に敵を倒せますが、どんどん敵が強くなり、倒すのが難しくなります。それを試行錯誤しながら攻略していくところがゲームの面白さです。写真の内容の良い悪いは別として、カメラ性能の向上によって、どんどん撮影が簡単になっていくのです。私の中ではゲームの一面をずっとやっているようで、さらにどんどん強力な武器を身につけている感覚でした。

そこで頭を切り替え、撮るのが難しそうなカメラを探していたところ、ライカM10モノクロームに興味をもちました。モノクロしか撮れないというだけで、誤魔化しが効きそうにありません。さらに今まで一番頼りにしていたオートフォーカスもありません。レンジファインダーというそうで、何やらファインダーの中が二重になっていて、それを合わせるとピントが合うようです。そう言われても想像すらできません。周りにライカのことについて知っている人もいません。それにライカはカメラマニアが持つものというイメージがありました。私はカメラ自体にはほとんど興味がありませんでした。

それでも同じことをグルグル考えても何も進まないので、新しい世界に飛び込んでみようと決断しました。今まで持っていたほとんどの機材を下取りに出し、思い切ってライカM10モノクロームを迎い入れました。

使われなくなった灯台が、ひっそりと草木に覆われている
影の中に、猫の眼が光を放つ


まず、持った瞬間、今までのカメラと違いました。全体の質感というか、確かに高級感が段違いでした。「なるほど〜これがライカか〜」という感じです。

ファインダーを覗くと、やっと二重像の意味がわかりました。

いつもの散歩で通る鎮守の森
夕日に照らされた老木によって
異世界に迷い込んだような雰囲気を感じる


目が細かく、歩くと足が埋まるほどふかふかな砂浜
そんな感触が伝わってくる


同じ影でも全ての場所で濃淡が違う
「白黒写真に白と黒は無し」と感じる


第一印象は、よく写るカメラだと思いました。

モノクロ専用カメラということで、光と影を意識して撮影してみました。

しかしながら、RAWで連写するとすぐに止まります。スポーツ撮影にはちょっと難しいです。今までと意識を変える必要があります。


数回持ち出すと、レンジファインダーにも慣れてきました。というよりピント合わせが新鮮で楽しいです。

こういう精細な陰影は得意とするところ


夜の撮影も面白そうなので、雨の日に持ち出してみました。

雨に濡れた路地の質感によって
今までここを通った人の歴史を感じる


暗い場所でも、感度のことを気にすることなく撮影できるのは心強い


夜の撮影が楽しいです。夜専用カメラにして、作品としてまとめるのも面白そうです。そんな先のことまで想像させてくれます。


ただ欠点もあります。
これは私の個体だけかもしれませんが、たまにフリーズします。背面の液晶画面を見て撮影しているときに起こりがちです。シャッターボタンもメニューボタンも効かなくなり、背面の画面だけはずっと映像が映し出されている状態です。電源スイッチを切っても電源が切れません。そんな時はバッテリーを抜いて入れ直すと元通りになります。

1000枚撮影してもフリーズしない時もありますし、300枚の撮影で起こることもあります。正直、日本製のカメラでは考えられません。そして修理に出しても、その場でフリーズの現象が起こらなければ異常なしで戻ってきます。それを使えないカメラと考えるか、別に問題ないと考えるかはその人次第です。


まとめると、M10モノクロームは、良くも悪くも飛び抜けています。その名の通りモノクロ一択という潔さと、迷いがないことによって撮影者の意思、そして覚悟が試されるカメラでもあります。

「M10で撮影して、カラーをモノクロ変換しても同じでは?」という考えもあるでしょう。私も購入する前はそうでした。でも使ってみて気づいたことですが、そこを比べることはナンセンスなことのように感じています。なぜなら、あとからどうにでもなるという視点と、モノクロしか撮れない視点では、被写体へのアプローチから大きく変わってくるからです。鮮やかな絵の具ではなく、墨の濃淡で絵を描くことを決めたのと同じです。そうなると描こうとする絵が変わって当然です。

例えて言うなら、カラーで描いた絵をモノクロ変換して、水墨画とどちらがいいか議論するようなもので、あまり意味がないような気がします。

モノクロ専用のカメラを使うことによって、今まで気づいていなかった陰影に対して敏感になります。「白黒写真に白と黒は無し。あるのは濃淡(グラデーション)だけ。」ということを教えられました。

モノクロ専用カメラを使うと、はじめは色鮮やかな色彩が目に飛び込んできます。見てはいけないものが次々見えてしまうような感じです。実はそこが一番の肝になるところで、モノクロ専用カメラを持つ意味です。そんな時のためにカラーで撮れるカメラを鞄に忍ばせておくのではなく、モノクロで撮るしかないと覚悟を決めたときに、今までと視点が変わり、モノクロでしか撮れないオリジナルの写真が生まれます。新たな発見を促し、撮影者自身を成長させてくれるカメラでもあります。

モノクロ専用のカメラを使って、水墨画を描くと考えてもいいでしょう。
作品作りの相棒として、力強い味方になってくれるはずです。

勝手な感想を書きましたが、写真は自由です。自分が好きなカメラを選んで、使って、撮影するのが一番です。

カラーにするかモノクロにするか、後から考えたい人はカラーで撮れるカメラを選びましょう。

ご参考になれば幸いです。





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